大阪ロータリークラブ

MENU

会員専用ページ

卓 話Speech

  1. Top
  2. 卓話

卓話一覧

2012年10月5日(金)第4,412回 例会

Vocational Service=職業奉仕について考える

辰  野   勇 君

職業奉仕委員会
委員長
辰  野   勇 

1947年生まれ。大阪府立和泉高等学校卒業。(株)モンベル代表取締役会長兼CEO。アイガー北壁日本人第二登,マッターホルン北壁,コロラド川カヤックにて日本人初下降など。当クラブ入会2005年9月30日。

 私は2005年に入会させていただきました。一番よかったことは,松澤先生とお会いしたことです。実は2年前に大腸がんをやりまして,一度覚悟しました。アイガー北壁を登ったとか,命がけで山登りはやってきましたが,いざ病気になって男というのは弱いなと実感しました。一生懸命自分の中であきらめをつけようと考えましたが,住友病院で無事患部を取り除いていただき,これで死ぬことはないよとおっしゃっていただきました。何よりロータリークラブに入れていただいたお陰で,こんな医療も受けることができたんだなというのが正直な気持ちです。

 その住友病院院長の松澤先生が今年の会長になられたということで,お電話をいただきまして,「職業奉仕委員長になれ」と言われました。これはもういやだと言えませんので,「はい,かしこまりました」とお受けいたしました。

日常の仕事こそが「奉仕」

 ところが,その職業奉仕という言葉がどうも理解できてなかったわけでございます。今回事務局から本を何冊もいただいて勉強させていただく機会がありました。それで,僭越でございますが自分なりに考える職業奉仕とはどういうことか申し上げたいと思います。

 まず,奉仕という言葉ですが,己を無にして奉仕するという無償の行為というか,きわめて美しい行為であって,それに裏心があってはいかんのだ,もうけてはいかん,あくまでも無償の行為でなければならないという思いがどうしてもイメージの中にあったわけで,それが,ロータリークラブに入るときの足踏みになりました。

 書物をひも解いて読ませていただいた結果,自分なりに理解したことは,実はそんなたいそうなことじゃないんだ,ごくごく日常の仕事を遂行すること,それそのものが奉仕なんだということでホッとしたわけです。これをロータリーでは「Vocational service」という言葉で表現しております。

会社は30年で1サイクル

 私の拙い会社経営の中で,自分が今日までどういうことをやってきたかということをご披露申し上げたいと思います。

 私,山好きで,本当に山ばっかり登っていました。いずれ仕事に就くなら山に関連したビジネスをやりたいということを,高校1年生,16歳のときに志を立てました。28歳の誕生日と同時に,たった一人で今のモンベルという会社を立ち上げました。大阪市西区,今の本社のすぐ近くですが,ちょうど37年前の話です。

 この段階で考えたことはただ一点,会社はつぶせん,絶対つぶさないということで頑張ってきたわけです。当然社会貢献や社会奉仕の理念なんて,みじんもなかったわけです。ただただ,自分の会社をつぶさないでおくためにはどうしたらいいかということを考えてきたわけです。

 山が好きで始めて,その後仲間が何人か入ってきます。山の仲間と一緒にやっていく会社,一生一緒に仕事をしていくためには,毎年若い人を入れていかんといかんな。平均年齢がどんどん上がってきますから,これを下げるためには毎年若い人を受け入れていくということが必要だなということを考えました。

 毎年若い人を入れていくということは,会社の規模を大きくしていかんとしょうがないなということが見えてきたわけです。つぶさないためには会社を成長させなければならない。じゃ,いつまで成長させるんやろう。

 思いついたのは,一応30年たてば一つのサイクルが始まります。会社に入った連中がやめていきますから。ですから,30年間は大きくなっていかなければならない。当時登山市場全体の総売上が約500億円と言われました。厚かましいことに,たった一人で始めて売上ゼロのときに,30年後,その20%,100億ぐらいは可能性があるなというふうに踏みました。

結果として,社会に貢献

 今から7年前にちょうど30年が経過したわけです。会社をつくったときに,こんな会社にしよう,と思ったような会社になったと自負しています。売上は思ったより多くなりました。当初考えたマーケット全体ぐらいの売上になってしまいました。従業員も1,200人という人数を超え,大きな規模になりました。

 30周年のときに,社員を前に,「これから30年後はどうなるか考えてみよう」と言いました。「僕はいない。もちろん現役ではないし,生きているかどうかもわからん。しかし,30年後うちの会社があるとしたら,どんな会社になっているか想像できる」と言ったんです。

 それはたった2つの要素で,1つ目は,30年後もマーケットのお客様が必要とするものをつくり続けているかどうかです。それと同時に,「やっぱりこの会社が社会にあったほうがいいよな。つぶれたら困るよな」と思ってもらえるような存在です。それは今で言うCSRであったり,社会貢献という言葉に置き換えてもいいのかもわかりません。

 こういうような会社でありながら,なおかつ事業採算がとれていること。幾らいいことをしても,採算がとれなかったらつぶれますし,幾らもうかっても社会に必要のないことをやっていたんじゃ破綻します。自分たちが日々やっている仕事の中で,結果として世の中の役に立てばいいということです。

 ここでちょっと,自社製品の説明をさせていただきます。これは「浮くっしょん」という名前で,クッションとライフジャケットを兼ねた製品です。津波が来たら,身につけて逃げるんです。宣伝して申しわけありませんが,これは社会貢献として見ていただければ幸いでございます。

 本日はありがとうございました。