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2011年3月25日(金)第4,342回 例会

世界経済危機の本当の理由
‐お金をつくる人,お金をとる人‐

Valentine Morozoff 氏

会 員 Valentine Morozoff 

1946年神戸生まれ。(祖父,祖母,父,母は大正時代にロシア革命後来日)。’63年須磨のマリスト学園を卒業(外国人学校,英語教育),’67年米カリフォルニア大学バークレイ校卒業(電気工学),’70年同大学大学院でMBAコース卒業。’72年,両親が経営する神戸のコスモポリタン製菓入社,’99年同社代表取締役,’08年コスモポリタンを閉店。以後,食料品事業経営や,コラムニストなど。当クラブ入会’88年9月。

 世界の文明歴は6000年ぐらいあるかと思いますが,その中で古代エジプトから現代の日本まで,世の中にはお金をつくる人たちと,お金をとる人たちがいました。そして,どの文明の中でも,このとる人たちの力が,つくっている人たちの力を超すと,大体その文明が滅びたんです。それが今日の話の本筋です。

 まず,紀元前3000年から2000年ごろの古代エジプトにさかのぼります。

 ピラミッドは旧王朝でつくられましたが,ルクソールの神殿とか宮殿とかいうのはほとんど新王朝のときで,大きな石造をつくったのもラムセス2世の新王朝の時代でした。

 やがて,紀元前1100年ごろでしょうか,ラムセス3世がファラオをやっていましたが,だんだんと行き詰まってきました。

 なぜかと言いますと,最初は石とか土とかのタイルみたいなものに書いたり,読み書きできる人も非常に少なかったのですが,紙もできてきて,ラムセス2世,3世になってくると読み書きできる,中国で言えば文人です,文人層ができてきたのです。ラムセス3世になってくると,王室と平民の間に5層もできて,だんだん言葉も複雑になってきました。

 一般公務員の人たちがいて給料をもらっていたわけなんです。その公務員の数がどんどん増えていきました。

 やがて,ラムセス3世は,パンク寸前になり,そういう人たちの給料も払えないし,農民も非常に貧しくなっていったんです。

宋王朝,官僚増え過ぎ

 中世の中国も見てみましょう。

 中国の長い歴史の中には,文人と呼ばれる社会層が存在していました。字句を勉強したり,絵を描いたり,きれいな書を書いたり。もともと彼らの社会的役割は,読み書きのできない一般の人たちのために手紙を書いたり,商取引の書類をつくったり,陳情書をつくったりするのが仕事で,非常に優れた少数エリート層だったわけです。

 中国文化の一番光ったときは,宋朝と思います。西暦1100年から1200年ごろの中国の王朝で,そのときになってくると,文人の数が多くなりました。官僚と言ってもいいんでしょう。

 彼らの使う言葉がだんだん複雑化していって,漢字も増え,書類や申請書に時間がかかるようになって,ちょっとしたニュアンスの違いで書類が返ってきたり,エスカレートしていったわけです。税金や手数料で食べていたわけですが,官僚の数が増え過ぎてだめになってしまいました。

英首相の倍

 今度は,現代のEUの話をいたします。

 最初,EUの夢は,1つのEUという中央があって,それから地方自治体があるという絵だったわけです。

 そして,EUの本部がどうなっているかと考えますと,とっているばかり,食っているばかりじゃないかという印象を受けます。

 私,一昨年,南フランスに行きましたが,友達が,いいビラを借りているから泊まりに来ないかと言ってくれて,行きました。

 この家のオーナーはどなたかと聞きましたら,EUの事務次官の下のレベルの人でした。

 それから,1~2週間後偶然に英国の新聞を読みました。そこに,EUの公務員の給料が出ていました。このビラのオーナーは,何と英国の首相の倍の給料をもらっていたんです。

 そして,悲しいかな,シビリアンコントロールがないのです。シビリアンコントロールと言えば軍部を抑えるためにと思いますが,違うんです。EUにはシビリアンコントロールが全然ないんです。自分たちが自分たちの給与を決めるということで,ものすごいんです。

政府の役割,審判

 次は金融界のお話をしたいと思います。

 『ウオールストリートジャーナル』とか『バロンズ』というニューヨークの雑誌がありますが,それを見ますと,ウオール街の取引所の1千社以上の会社が載っています。商品市場を見ると,銅とか砂糖とかココア豆とかチョロチョロとしかないのですが,ファンドがその3倍あるんです。実際にお金をつくっているものの3倍の組織が,3分の1のものを売買したりして手数料をとっています。リーマンショックの反省もなく今もやっており,巨大なボーナスを社員に払っている。これが問題なんです。

 アメリカでは訴訟が増える一方です。弁護士たちもどんどん増えていきますし,増える手数料は弁護士たちの書類づくりにいくわけです。そんな状態ですので,非常にコストがかかっているわけです。

 日本に詳しい人との話で,「日本もこの20年あかんねん」という話をしますと,「何も難しいことはない。東京が大きくなるほど日本が不況になっていった」と言うんです。「エッ」と言うと「東京は,大半は税金と全国の企業の一般関係を食べて大きくなっている。大半がそれらの税金等で生活している」というふうに言いました。私はビックリしましたが,シンプルです。いろいろと官僚が言いますが,確かに集中は問題ではないかと思います。

 私の理想の構図は,スポーツに例えますが,審判,グラウンドのメンテナンス,救急箱の整備,変な人が来ないようにガードマンを置く,これが本来の政府や自治体の役割かと思います。しかし,今や,コーチも監督もキャプテンも,時にはオーナーもやっているというのが日本の現状ではないかと思います。