大阪ロータリークラブ

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2010年3月12日(金)第4,293回 例会

共に生きる社会
―スペシャルオリンピックスがもたらすもの―

中 野  裕 弓  氏

スペシャルオリンピックス日本専務理事 中 野  裕 弓 

横浜生まれ。9年間の英国生活を経て東京の外資系銀行に勤務し,世界銀行本部からヘッドハントされて日本人初の人事マネージャー,カウンセラーを務める。1998年に帰国後独立し,人事コンサルティング,執筆,講演活動,企業研修など幅広く活躍中。「世界がもし100人の村だったら」の原文を日本へ初めて紹介した人としても知られている。「お金持ちマインドの育て方」「気がきく女(ひと)は幸運をつかむ!」など著書多数。

 先日,友達から電話をもらいました。「そろそろ始まるね,バンクーバーで」。それはパラリンピック(身体障がい者が対象)です。パラリンピックとスペシャルオリンピックス(知的障がい者が対象)の違いを知らない方がほとんどです。

大阪で全国大会

 アメリカではスペシャルオリンピックスのことを皆が知っています。ユニス・ケネディ・シュライバーさんという,故ケネディ大統領の妹さんが始めたからです。1962年にご自分の広いお庭を開放し,知的発達障がいを持っている人たちをお誘いしてスポーツを楽しまれました。きっとそのときはルールのはっきりしたスポーツではなくて,体を動かして一日楽しむデイキャンプだったと思います。

 なぜ,ユニス・シュライバーさんが始められたかといいますと,ケネディ大統領の姉妹の方に発達障がいを持った方がいて,その方がなかなか社会に出る機会がない。それだったらということで,そういう境遇の人たちをお迎えして,その人たちが主役の一日をつくりましょうと,その思いでつくられたのがスペシャルオリンピックスです。

 11月5,6,7日に大阪で全国大会が開かれます。アスリートは1,050名ほど集まってきます。大阪城ホールでオープンし,たくさんの会場に分かれて競技をいたします。

 日本全国から1万5,000人の関係者が集まってきます。その大きなお祭りを,ぜひ大阪の方々にも支援していただきたいと思っております。

 有森裕子理事長がこのお話を府知事さんや市長さんに持っていったとき,大阪を元気にしましょう,活気づけましょうということで大変気持ちよく支援していただきました。安藤忠雄さんが組織委員長。副組織委員長には桂三枝さんになっていただいています。

個人のメリット

 ですが,ただただお願いするのではなく―実は私はアメリカの経験が長いこともあって,ちょっとこんなふうにも考えてしまいます―。「いいことだからしましょう」というのでは説得力が弱い。いや,日本は大丈夫ですよ。「これはいいことですから,皆さん,よろしく」と言ったら。

 でも,合理的な人たちはこう言いました。「ものごとをお願いするときには,その人たち個人々々にどういうメリットがあるのか―そこまで落とし込まないと,人は気持ちよく動かない」  これは,私が会社の社員研修を企画するときに,経営者の方と常にお話しするポイントでもあります。個人のメリットが何であるかわかったら,研修がすごく生きてきます。だけど会社が言ったから,CSR(企業の社会的責任)が脚光を浴びているから,これが常識だから―では3日ぐらいしか持たない。

 そこで,大阪の,そして,皆さんお一人お一人の,スペシャルオリンピックスをここで催すことのメリットとは何なのかと考えてみました。

 私たちはボランティアを募集しています。このボランティアも,ボランティア精神というよりは,お祭りを楽しもうという精神で来ていただきたいと思います。

 アスリートたちは,動くスピードも,理解のスピードも違います,ゆっくりしています。そして,ときにはちょっと,大きな声が出ちゃったということもあります。でも,彼らはやはり自分の記録を更新しよう,あるいはスポーツを楽しもうという,すごく高い思いで来ています。その人たちとかかわると優しくなります。思いやりと優しさというのは脳の後ろのほうにある機能らしいのですが,どうもここにスイッチが入るらしく,優しくなるんです。だからにこっと笑ってしまうという,そういうことがあります。

地域活性化

 それから,私個人でいえばイメージ力がすごくわきました。普通だったらこう行くところを,行けないとしたらどうしよう。もしこれが難しかったらどうやってやろう,どうしようというふうに,常にイメージがわいてきます。

 アイデアの回路がピーとつながると,本業で使えるんです。本業をやっていてイメージがわいてくるというのは,とても大きな効果でした。

 それから,ものごとが大きく考えられるようになりました。アスリートたちが少しでも生活しやすく,私たちと一緒に人生を楽しむチャンスを持てるようにと常に考えていると,いつの間にか視野が広くなります。「シンク・ビッグ」とよく言います。ものごとを大きく考えると目の前のことは乗り切れる。確かにそうだなと思います。

 全体としては,地域が活性化してきます。思いやりと優しさという能力はなぜか活性化するエネルギーなんです。最近私は,ツキを呼ぶとか,運を引き寄せるとか,そういうことを書いたり講演したりしていますが,そこにも直結しています。

 優しさとか思いやりというのはエネルギーを呼び,そのエネルギーがその人の周りにあふれてくるので,結果として家庭や地域が生き生きしてくるんです。

 私たちは資金集めも一生懸命やっております。気持ちもありますけども,お金もということです。お志も喜んでお受けしたいと思いますので,ぜひよろしくお願いしたいと思います。