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2010年3月5日(金)第4,292回 例会

勝つために

魔  裟  斗 

元K-1世界チャンピオン 魔  裟  斗 

1979年生まれの元キックボクサー。本名は小林雅人。千葉県柏市出身。日本人初のK-1 WORLD MAX世界王者。数々の試合で勝利を収め,’08年2度目のK-1 WORLD MAX世界王者となる。’09年12月31日を以て現役引退。


インタビュアー:
衣斐茂樹会員夫人・タレント西田ひかる氏
衣 斐  光 

73~’85年,ロサンゼルスで暮らす。’88年「フィフティーン」でレコードデビュー。持ち前の健康的な明るさと,何事にも前向きに努力する姿勢が評価され,歌手活動と併せて,多くのテレビドラマ・ミュージカル・舞台などに出演し,その演技力は活動分野の広さと共に高い評価を得ている。’02年 に結婚,2児の母。

衣斐氏;引退されてからまだ2カ月ちょっとですけれども,この間どのように過ごされましたか。 魔裟斗氏;15歳から格闘技の世界に入ってずっとこれ一本でやってきたので,やっとホッとして,好きなことをやりながらゆっくり過ごしてきました。 衣斐氏;好きなことというと,具体的にどんなことですか。
魔裟斗氏;僕はタバコが大好きで,引退したことによって好きなだけ吸えるようになったのが非常にうれしいですね。

格闘技しかなかった

衣斐氏;格闘技は精神面でもきつい,体力的にも大変なスポーツだと思います。格闘家になろうと思ったのはいつごろで,何がきっかけでしたか。
魔裟斗氏;小さいころからテレビの「タイガーマスク」だとか,格闘技の漫画が大好きでしたが,中学を卒業してボクシングを始めました。そのとき15歳,男は強くあるべきだとか,強い男がもてるんだとか思っていたんですよ。そういう不純な動機でした。
衣斐氏;痛いし,減量も大変だし―という辛さはいかがでしたか。
魔裟斗氏;最初は殴られることなど全く考えていなかったし,減量が苦しいということも知らないで,ただ,興味本位で始めました。やってみると,殴られるとすごく痛いし,減量もものすごく苦しい。デビュー2試合目ぐらいのとき減量がすごく辛くて,3戦目を迎える前には,もうこの試合を最後に引退しようと思いました。そのころはうまい減量のしかたを知らなかったから,1週間で8~9キロ落としていた。きつかったですね。
衣斐氏;やめなかったのはなぜですか。
魔裟斗氏;中学を卒業してすぐ格闘技の世界に入ったので,これで成功しなければ僕はもう終わってしまう。人生崖っぷちだったんです。大学を出て,すごく頭がよくてやることがいろいろあったら,多分やめていましたね。20歳ぐらいのとき絶対これで飯を食っていこうと決めたんで,逃げ道がなかった。だから頑張れたんだと思います。

一歩前に出て勝負

衣斐氏;個人的に減量のことを聞きたいんですが,一番のアドバイスは。
魔裟斗氏;やっぱり規則正しく,朝・昼・晩ちゃんと食事をとることです。夜ごはんは8時以降食べちゃ絶対ダメ。僕は今でも,何もなければ6時半に食事をするようにしています。体重の5%以上減量すると運動能力が低下してしまいますが,僕の場合は70キロ級なので,5%というと3.5キロです。トレーナーには,73.5キロ以上に増やすなと言われていました。2週間ぐらいかけて70キロまで落とします。計量は試合前日。1日で3キロぐらい戻るので,当日は大体73キロ。そういう感じで試合をしていました。
衣斐氏;闘っているときはどういうことが頭の中をめぐっているんですか。
魔裟斗氏;試合中は恐いとか逃げ出したいとか思いませんが,試合の日までは,今日は練習したくないな,逃げたいな,試合やめちゃったら楽だろうな―と考えながら走っているときがありました。そのとき,ここでロードワークをやめて,試合もやめて逃げちゃったら多分一瞬だけは楽だけど,この先長い人生苦労すると思ったんです。逃げたいなと思ったところで,もう一歩前に出て勝負しないとダメなんだと。試合でやられそうになったときは,自分の持っている力の倍以上の力でやり返さないと倒されてしまう。それは60戦以上の格闘技の経験で分かっている。格闘技以外の人生でも,きっとそうなのだろうと思います。
衣斐氏;なぜこのタイミングで引退したのかというのが,ファンとしては気になるところですけれども…。
魔裟斗氏;引退には人それぞれの美学があると思います。チャンピオンから落ちてもそのスポーツが好きで,ずっとやり続ける選手もいるわけです。僕は一番強い時期に,もったいないと言われながらやめたかった。

やり残しはない

衣斐氏;もう1回頑張ってみたいという気持ちはないんですか。
魔裟斗氏;全くありません。格闘技に関してはもうやり残しがないので,自分の中ではすごく昔のことのように感じています。これからまだ人生50年は残っているので,いろいろやっていかなくてはと思っています。
衣斐氏;今後はどのような活動をお考えですか。
魔裟斗氏;格闘技一本で来たので,何をしたいかと聞かれても分からないんですが,今,いいお話がいくつかあるので,そういうチャンスを一個一個つかんでいくことを考えているところです。
衣斐氏;芸能界での活動は。
魔裟斗氏;チャンスがあれば,しがみついてでもと思います。
衣斐氏;しばらくいろんなことを経験されたあと,またスポーツに,特に子どものスポーツにかかわっていただければうれしいと思うのですけれども。
魔裟斗氏;もうちょっと時間がたってそういう気分になったら,やっていきたいなとは思っています。