大阪ロータリークラブ

MENU

会員専用ページ

卓 話Speech

  1. Top
  2. 卓話

卓話一覧

2010年1月22日(金)第4,287回 例会

関西国際空港の現況と課題

福 島  伸 一  氏

関西国際空港株式会社
代表取締役 社長
福 島  伸 一  

1948年11月長崎県生まれ。’71年京都大学法学部卒業。同年松下電器産業(現パナソニック)(株)入社。’03年取締役。女性かがやき本部長,多様性推進本部長などを歴任。
’08年副社長・関西代表。
’09年関西国際空港(株)社長。

 昨年6月に,パナソニックから関空の社長に就任しました。関空はほとんど騒音のない非常に環境に卓越した空港として,1994年9月,泉州沖5㎞の海上に滑走路1本で開港,07年8月に第2滑走路をオープンしました。4,000m級の複数の滑走路を持ち,完全に24時間オペレーションができます。これらは世界の国際空港のスペックで,日本で世界標準にかなっているのは関西空港1つです。

危機的な競争力

 旅客では日本の海外渡航者の5人に1人は関空から飛び立っていただいています。輸出の航空貨物では約4分の1を担っています。

 世界同時不況はなかなか本格回復に至らず,昨年春先のインフルエンザ,日本の航空会社さんの経営問題による運休・減便等々で,09年度は6年ぶりの経常赤字になる見通しです。

 関空の国際線就航状況は,週724.5便飛んでいます。全体の約4分の3をアジアが占めています。中でも,経済成長が著しい中国へ全体の約4割の週270便で1日約40便,20の都市に飛んでいます。成田を上回り,日本で一番大きいネットワークを張っています。韓国にも週約140便,1日約20便飛んでいます。半面,欧米線はほとんどありません。特に北米東部は便数がゼロで,大きな課題の1つと考えています。  東アジアの国際ハブ空港を見ると,関空,韓国仁川空港,上海浦東空港の3空港は,90年代後半から2000年代前半まで,滑走路をどれだけつくるか,ハードの競争でした。しかし,2000年代後半はコストとネットワークといったソフト面での競争に変わっています。

 コストではボーイング777の着陸料は関空58万円,仁川と浦東はほぼその3分の1です。

 ネットワークは,01年のころは関空から日本国内の24都市に500便以上の飛行機が飛んでいましたが現在は7都市で,8年間で便数も半分です。仁川空港は21都市の約250便でしたが,日本の27都市に飛行機を飛ばして本当に残念で悔しい話です。

外国客を誘致

 収益拡大に向けた営業活動の強化の一環として,昨年秋から「戦略的な料金施策」を打ち出しました。関空に新規路線を開設していただいたとか週4便を7便にしていただくところには着陸料の割引率を80%へ拡大,新規路線開設の場合は,関西国際空港促進協議会にもご支援いただき,着陸料が無料になることで誘致活動を進めています。

 その結果,国際線の便数は,北米線が復活したデルタ航空のシアトル線,観光地のニーズが非常に高いオーストラリアのケアンズに新規就航をしていただくようになりまして,週約80の新規就航増便が予定されています。

 日本人のお客様は,人口は減っていますし,特に若年層を中心とした「海外旅行離れ」もあります。これからはいかに外国のお客様を日本に呼び込むかが非常に大切になります。

 国際貨物便も,関空を物流の拠点としていただける事業主さんに対して一定期間,大幅な割引を実施しています。

 大阪湾のベイエリア周辺にはパネル,バッテリーの大規模生産拠点の建設が進み,昨年秋からこの春にかけて本格的に稼動するということで,生産拠点への輸出入は大きく伸びると予想されています。こうした需要を的確に吸収したいと思っています。

3つの課題

 需要を確実に私たちのものにするためには,課題をいかにきっちりと解消していくかが大きな問題で,3つの課題を報告します。

 1つ目は,財務構造の抜本的な改善です。関空は中曽根民活の第1号として,関空会社が自ら建設,1,000haの土地を持っている地主です。ある意味では「負の遺産」で,ここの有利子負債が現在でも約1兆500億円あります。年間の金利が約200億円を超え,経営を非常に圧迫して,国際競争力の大きなハンディになっています。

 昨年は,非常に残念でしたが要求額の5割にも満たない補給金になり,前年よりも10億円減りました。幸いにも前原大臣が国土交通省の成長戦略会議で,6月までに抜本解決をされるということで,内容に期待しています。

 日本という国で考えますと,日本の国力とか経済規模,大規模災害などの危機管理を考えた時には,日本に複数の国際拠点空港が必要です。1つは首都圏で,次はやはりこの関西,西日本に必要ではないかと思います。そうしますと,日本で唯一の世界標準で,国際空港の関空がまさにその資質を有しています。

 課題の2つ目は関西3空港問題です。昨年12月に関西3空港の一元管理を目指す方向でゴングが鳴らされました。この年度内,3月末までに結論が出されることになっています。

 各空港の運用の最適化によって関西全体の航空需要を拡大していくことが最も重要だと思っています。関空が持っている空港としての能力,強み,重要性を尊重いただいて結論が出ることを期待しています。

 3つ目は,アクセスの改善です。関西では関空といいますと高くて遠い,これが世間相場になっています。関空も便利だなと言っていただけるような,伊丹空港との乗り継ぎ,リムジンバス,鉄道,高速道路,こうした交通アクセスの改善にも取り組んでいきたいと考えています。

 私は関空の目指すべき姿は,「アジアのゲートウェイ」と「完全24時間国際貨物ハブ空港」の実現だと考えています。

 その実現のためには,関西という地域が保有する「関西力」と,関西国際空港の保有する空港としてのポテンシャルをかけ合わせて,地元の自治体・経済界の皆さんの力強いご支援もいただきながら,相乗効果を出していくことが非常に大切だと思っています。