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2009年12月18日(金)第4,284回 例会

店頭から見た本年の消費動向

山 本  良 一  君(百貨店)

会 員 山 本  良 一  (百貨店)

1973年明治大学商学部卒業後,(株)大丸入社。’93年同社大阪・梅田店営業企画部長,’97年同店婦人雑貨子供服部長,’98年同社本社百貨店業務本部営業改革推進室部長などを経て,’01年理事・企画室長。’03年5月同社代表取締役社長兼本社百貨店事業本部長事務管掌(現任)。’07年9月J. フロント リテイリング株式会社取締役(現任)。 ’03年当クラブ入会。’05年度雑誌委員長。

 昨秋のリーマンショック以来,急激に消費が低迷,回復する気配が見えません。お客様の要望と我々の品ぞろえ,販売サービスがミスマッチを起こしています。消費行動は激しく変化しています。「カジュアル化とバリュー消費」「癒し・潤い・健康志向」「異業種・異業態とのコラボレーション」の3つのキーワードで,店頭から見た消費トレンドを商品の提示とともにご紹介したいと思います。

バリュー消費

 まず「カジュアル化とバリュー消費」ですが,日常生活でフォーマルの場が年々減少し,圧倒的にライフスタイルがカジュアル化の方向に進んでいます。日常の購買行動は,以前は「安ければ品質とか味にはさほどこだわらない」ということがありましたが,昨今は「低価格品でも,品質や味がしっかりしてないものは買わない」というように,非常に変化してきています。これが「バリュー消費」ということだと思います。百貨店の婦人服にも,この傾向は色濃く出てきています。

  私どもの社員による素人モデルで大変恐縮ですが,ヤングのレディス・ファッションからお目にかけたいと思います。

  こちらは心斎橋店北館で今人気のブランドで,20代から30代前後の女性のための「スナイデル」です。レザージャケットは,今年のヒット商品の1つです。ピンクと黒のチェック柄のワンピースは,裾を重ねているレイヤードスタイル,重ね着ファッションです。

  ワンピースの下には,これも今年大ヒットの「ニー ハイ ブーツ」という膝までの超ロングブーツです。レザージャケットが3万1,500円,通例ですと,このあたりは私が通常ご紹介する時は10万円とか,20万円という価格が出てきますが,ワンピースは1万4,910円です。

  そして,「カジュアル化やバリュー消費」の傾向がもっと進みますと「イエナカ消費」「巣ごもり消費」という現象につながっていきます。その一例として紹介をしたいと思います。究極の「イエナカ・ファッション」です。心斎橋店北館のヤングフロアの大人気商品「ジェラートピケ」というブランドで,今話題の「モコモコ系」と呼ばれる女性の部屋着です。仕事が終わって家でくつろぐ時に着る服は,じんわりと甘くて幸せな気分に浸れる食後のアイスクリーム,ジェラートのようなものだというコンセプトです。

癒し・潤い・健康志向

 2つ目のキーワード,「癒し・潤い・健康志向」です。今年,東京国立博物館で開かれた「国宝阿修羅展」では,中高年の歴史・美術ファンだけでなく20代・30代の若者が多く詰めかけました。大丸梅田店と松坂屋銀座店で,精巧な仏像のミニチュアを約50種類集めた展示会を企画したところ,400体の仏像が売れました。こちらは一番人気のあったミニチュアの「阿修羅像」,大変精巧な樹脂製で,6万3,000円です。

  もう1つ,癒し系の商品をご紹介します。「トロールビーズ」というデンマークで生まれた,今女性に大人気のアクセサリーです。「トロール」とは北欧の民話に出てくる,人々の運命に影響を与えるという「森の妖精」のことです。300種類以上あるビーズの一つ一つに「男性との運命的な出会いを果たせる」など,違うメッセージが込められています。2万円から3万円くらいです。

  次は人気上昇中の「健康づくり」の商品です。「ツー タイムズ ユー(2XU)」というブランドのランニング・ウエアです。オーストラリアのスポーツ選手のデータと意見をもとに,徹底的に機能を追求したウエアです。

  次は,鮮やかなゴルフウエアです。有村智恵プロがシーズン中に着用した「ビバハート」というブランドです。女性のゴルフ人気が高まり,雑誌などでは20代の女性ゴルファーを「ギャルファー」と呼んでいます。

コラボレーション

 最後のキーワードは「異業種・異業態とのコラボレーション」です。思いもかけない業種・業態のコラボレーションによる商品開発も活発で大ヒットするものが出てきています。

  こちらは,若い女性を中心に大人気の「ブランド・ムック」です。「ムック」とは「マガジン」と「ブック」を合わせた造語で,雑誌のように写真や図版を多く使った単行本のことです。中身はファッションブランドの新製品情報ですが,人気の秘密はその付録にあります。ファッションの売り場ではなく書籍の売り場で扱っています。ブランド品の販売は百貨店や専門店だけではなくなりつつあります。

  最後は今年のファッションを3点,お目にかけたいと思います。1番目はヤングのカジュアルファッションです。この冬も人気のダウンコートで裏表リバーシブルになっています。価格も1万9,950円と大変お手ごろです。

  続きまして,日本初の百貨店プライベートブランド・スーツ,当社の「トロージャン」も今年50周年を迎えさせていただきました。 6万900円のかつてない価格で,同等品に比べ3割ほど安い記念価格です。

  最後はエレガントでゴージャスなミセスのファッションです。毛皮製品で有名なイタリアの高級ブランド「フェンディ」のミンクのコートで,254万1,000円,百貨店らしい価格です。毛皮の毛先にミソがあって,フェンディの新技術により24金ゴールドがコーティングされています。

  ヤングの部屋着からミセスの毛皮のコートまで,百貨店の品ぞろえの幅の広さの一端をご覧いただけたかと思います。

  来年こそは強力なヒット商品がどんどん登場して,垂れ込めた暗雲を吹き飛ばしてくれることを大いに期待します。