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2009年4月10日(金)第4,250回 例会

体験のすゝめ

住 谷 栄之資 氏

(株)キッズシティージャパン
社長
住 谷 栄之資 

1965年慶応義塾大学商学部卒業。同年,藤田観光(株)入社。’69年(株)WDIに創業と同時に入社。取締役外食担当。2000年に代表取締役社長。
’04年(株)キッズシティージャパンを設立,代表取締役社長兼CEO。

 私は和歌山で生まれ,小・中・高は大阪の箕面で過ごし,大学は東京にまいりました。卒業後はまず藤田観光に就職して箱根の小涌園に2年ほどおりました。9割ぐらいは掃除で,3年目に瀬戸内海の直島(香川県)に移りました。今はベネッセコーポレーションさんがお持ちで,芸術の島ということで地中美術館とか,島中にいろんなオブジェがあったりで,海外にも非常に知られた島です。当時は30万坪ぐらいを藤田観光が所有していました。何もないところで電気・ガス・水道・電話等の社会インフラを手がけました。レストランやキャンプ場の設計もしました。

 その後,脱サラして外食産業に深くかかわっていきました。今ではマクドナルド,ケンタッキー・フライドチキン,ドーナツチェーン,カジュアルレストランが普及していますが,私が脱サラした昭和40年ごろは「アメリカには食文化はない」と言われていた時代でした。その時期に,ケンタッキー・フライドチキンのフランチャイジー,マクドナルドの日本のライセンスを買ったり,ハリウッドで行われるアカデミー賞の後で必ず祝杯を挙げる「スパゴ」というレストランを日本に導入したりしました。そして2004年,61歳の時にキッズシティージャパンを設立しまして現在に至っております。

「キッザニア甲子園」オープン

 2006年10月,三井不動産さん所有のららぽーと豊洲のオープンと同時に「キッザニア東京」を開設させていただき,3月27日には,ららぽーと甲子園内に「キッザニア甲子園」をオープンいたしました。

 日本はいろんな局面で難しい環境にあります。もちろん経済危機もですが,格差社会だったり,あるいは子どもを取り巻く環境が非常に難しいのです。学校を卒業して就職するのも厳しい環境で,最近はニートとかいう若者も増えています。子どもが事故や事件に巻き込まれるとか,受験もあります。その対策を練らなきゃいけないので大人も忙しいですが,子どもたちも結構忙しく,余裕がない環境にあると思います。

 幼少の時代にはいろんな時間の使い方があると思います。学問は当然大事ですが,本当に知育偏重でいいのかと感じているとき,たまたま友人の紹介でメキシコのキッザニアに出会いました。2004年5月のことです。その施設の中では,子どもたちが職業体験や社会体験をして,いろんなことを楽しく学んでいます。決して学問的だったり,学校の延長線ではなかったので,この施設をぜひ日本に導入したいと思いました(テレビ番組で紹介された際のVTRを上映)。

体験の場を提供する

 私どもが考えておりますのは,『子どもたちがたくましく成長するために』をテーマに,特に職業体験や社会体験を通して,生きる力やコミュニケーション能力,豊富な社会体験,あるいは自主性とバランス感覚,グローバル感覚を身につけるきっかけをつくってもらえればいいなということです。

 昔から「知育・徳育・体育」といわれます。学問は進んでいますが,「徳」,つまり体験という部分では,子どもたちには時間・場所・環境が少なくなっているんじゃないかと感じています。昔でいう地域力のあるところで鍛えられ成長する場面が,非常に少なくなっていると感じています。キッザニアのスペースがその機会というと語弊があるかもしれませんが,子どもたちが働く大人たちの姿を見て,それを自分で体験することで,何かをつかんでもらえたらと考えております。

 キッザニアのコンセプトは『エデュテインメント(Edutainment)』です。これはエデュケーションとエンターテインメントの合成語でして,楽しくないと身につかないんじゃないかという考えです。それが街作りにも現れていまして,キッザニアには警察も裁判所も消防署も,いろんなお店屋さん,銀行や病院もあります。その中で子どもたちには“考えて行動すること”を自然に体験してくれればいいと思います。協調性だったり,親に対する尊敬の気持ちを自然に身につける,あるいは,きっかけをつかんでほしいと考えております。

真剣に向き合うリアルな環境

 キッザニア甲子園は延べ床面積が約6,000平方m,パビリオン数が約50,本年度の予想入場者数が約80万人。東京の昨年度の入場者数は91万人でしたが,こういう経済環境でもありますし,今は入場者数を制限しておりますので80万人ぐらいだろうと。

 リアルな街作りも基本コンセプトです。スポンサー様が本業とされる仕事をキッザニアの中に再現することで,子どもたちが真剣に仕事に向き合う環境をつくっています。「キッゾ」という専用通貨もあります。働くとキッゾを稼げますし,サービスを受けたり商品を買うときはキッゾを払います。こうして経済感覚を身につける構造になっております。

 キッザニア甲子園には,東京にはない新しいパビリオンもあります。自動車工場,証券会社,すし屋さん,電車等です。証券会社はキッザニアの中の会社を調査し,ここはよく入っているとか,ちょっとイマイチだなどと投資先を決めています。電車では,運転手と車掌のコラボレーションを体験してもらいます。これから作りたいパビリオンは遺跡の発掘現場や劇場,総合研究所,マジックスタジオ,大使館なども考えております。

 保護者の方からは,「子どもたちが家で料理をするようになった 」「ルールを守るようになった」「大きな声が出るようになった」といった声をいただいております。お子さんたちからは,「英語がおもしろかった」「大人の仕事が大変リアルに体験できた」というコメントが寄せられています。