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2009年2月27日(金)第4,245回 例会

更生保護ってご存知ですか?

廣 田  玉 枝 氏

法務省大阪保護観察所
所長
廣 田  玉 枝 

1949年京都市生まれ。’71年京都大学教育学部(心理学専攻)卒業,法務省入省。大阪保護観察所配属以後大阪,京都,神戸,大津,岡山,松山,広島各保護観察所等で,保護観察官として犯罪や非行をして保護観察となった人の指導に当たってきた。2006年名古屋保護観察所長,’08年2月から現職。臨床心理士。

 更生保護の主な仕事は,犯罪とか非行をしてしまった人たちが社会の中で立ち直っていくために援助することです。私のような保護観察官という国家公務員の立場の者と,保護司や更生保護施設,更生保護女性会,BBS会,協力雇用主といった民間の方々によって支えられている制度です。

4種類ある保護観察

 少年と大人で少し制度が違うので,分けてお話しします。まず,少年の場合。スーパーでの万引き,停めてある自転車を失敬して乗っていこうか――という占有離脱物横領,こういった悪いことをしますと,警察でお縄ちょうだいということになります。

 万引,占有離脱物横領,強盗など全部ひっくるめて100人が家庭裁判所に送られたとすると,実はこのうち75人が「特段の処分なし」ということになります。

 その次に重いのが「保護観察処分」。「君は今回こういったことがあったので,しっかり立ち直るために保護観察する」というもので,これを「1号観察」と呼んでいます。ここまでは家に帰れます。

 その次が「少年院送致処分」。短期で半年,長い子で1年ぐらい少年院に入ります。帰ってきてから20歳になるまで保護観察を受けます。これが「2号観察」です。

 大人の場合,一番軽いのは「無罪」。次に「罰金」です。お金で済まない場合は,次に「執行猶予」があります。執行猶予の中でもちょっと重い「保護観察付執行猶予」もあります。年間4万7千人ぐらいが執行猶予の判決を受けますが,うち約1割が保護観察付執行猶予で,執行猶予の期間中,保護観察を受けます。これが「4号観察」です。次は刑務所に行く「実刑」で,懲役と禁固があります。

 年間約3万人が刑務所から出て来ます。半分は刑期いっぱい務めた「満期釈放」。後の半分は「仮釈放」といい,本来の刑より少し早く世の中に帰ってきます。早く帰ってきた分を「そのまま放っておくわけにいかない」ということで指導するのが「3号観察」。保護観察にはこの4種類があります。

 では,保護観察というのは一体何をするのか。米国や英国ではすべて国家公務員が指導にあたりますが,日本にだけは保護司制度があります。保護観察になった人は,担当の保護司さんのところへ月に2~3回行くか,保護司さんが家を訪ねられて,指導します。

 犯罪や非行をした人を面接のために家に招き入れることを,「恐いのでは」と思う方も結構あります。ただ,実際に面接をしてみると,こうした人たちも冷静になり,いろんな指導を受ける中で,しっかりやっていかなくてはと思っている人がほとんどで,いい形で面接が進んでいく例が多いのです。

 大阪の保護観察所では今,5,300人ぐらいお世話をしており,その63%が1号観察と2号観察の少年です。1号観察は法律では20歳までと決まっているのですが,ほとんどの子が20歳までいかずに卒業していきます。

老朽化する更生保護施設も

 刑務所を何回も出たり入ったりしていると,家族も見捨ててしまうような人が出てきます。そういった人のお世話をするのが「更生保護施設」です。そこで生活をさせ,仕事に送り出します。

 全国に101ヵ所,大阪府には4ヵ所あります。その中に定員110人という,全国一大きな「和衷会」があります。少年専用の「泉州寮」も泉佐野にあり,親から見捨てられて帰るところのない少年たちの世話をしています。

 この2ヵ所が老朽化して,建て替えなければならない。国からの補助金をメインにしますが,特に泉州寮は昭和36年の建設当時,関西財界にもご協力いただいたという沿革があります。大阪府も非常に厳しい状況です。大阪府更生保護協会で寄付を募って下さるとのことで,ご協力を賜れたらと思います。

 皆さん方からしますと,何でこんな犯罪や非行をした人に,いろいろ指導したり援助したりしなければならないのかと思われるかもしれません。しかし安全・安心な町をつくるという皆の一番共通した願いのためには,一度つまずいてしまった人にまた悪いことをさせないというのは,ある意味効率的な指導の方向だろうと思います。そういう意味で,この更生保護の仕事を皆の身近なものとしてとらえていただけたらと思います。

就労が再犯防止のカギに

 最後にもう1つお願いです。こうした立ち直りの指導の中で痛感するのは「働いていたら大した間違いはない」「仕事をしてない時が危ない」ということです。統計でも,働いてない人と働いている人の再犯率を比べると,5倍の差があります。仕事の指導をしっかりやらないといけないと考えています。

 ただ,自分で仕事を探すということがなかなかできない人が多く,法務省と厚生労働省がタイアップして,刑務所出所者等の就労支援に取り組んでいます。併せて,そういった事情を承知したうえで雇ってくださる「協力雇用主」を増強することに非常に力を入れています。

 ロータリーの皆様で,こういった雇用が可能だという方は協力雇用主として登録していただけたらありがたいです。大きな企業の方で,すぐに雇うのはなかなか難しいという方は,協力雇用主さんの応援団になっていただきたいと考えています。「大阪府就労支援事業者の会」というのをこの3月に立ち上げようと考えています。会員になって下さいとお声を掛けたら,頭の片隅から今日の話を引っ張り出して,加入して下さい。協力雇用主としてご苦労なさっている方にとって,大きな力づけになると思います。