大阪ロータリークラブ

MENU

会員専用ページ

卓 話Speech

  1. Top
  2. 卓話

卓話一覧

2007年9月7日(金)第4,175回 例会

青少年をとりまく大人が考えなければならないこと

桜 井  和 之 氏

学校法人大阪YMCA
YMCA学院高等学校校長
桜 井  和 之 

卓話者紹介 : 1955年生まれ。桃山学院大学在学中にYMCAのボランティアリーダーとして青少年活動に関わり,卒業後大阪YMCAに入職。教育関係部門を担当した後,学校法人きのくに子どもの村学園教員を経て,’02年開校のYMCA学院高校校長に。

 私どもの学校は,2002年4月に通信制・単位制・総合学科を擁した学校として,170人でスタートし,今は約750人の生徒が学んでいます。15歳から18歳がほとんどですが,本当にいろいろな方がおられます。学校に行けずに不登校になってやめたり,学校からやめさせられたりした人もいます。

 そういう環境で働いている関係で,いろんな方に聞かれることがあります。「先生,最近の若い人は困ったもんですね,どうですか」って。その方は多分「そうですね」という答を期待されているのですが,私は「いやいや,そんなことないですよ。最近の若い人,よう頑張ってますよ。私やったら,この時代,よう生きていきませんわ」と言うと,質問した方はいやな顔をして去っていかれます。

マスコミ報道をどう理解

 「最近の子どもは朝ごはん食べへん」と皆さん思っておられると思いますし,そういう報道が新聞,テレビであります。今年2月ごろには,「給食費を払わん親がおって困る」というのが,朝から晩までワイドショー,テレビのニュースで流れました。つい8月には,「保育料を払わない親がおる」というのが大合唱のように出ていたわけです。

 厚生労働省の調べで,朝ごはんを一切食べない人は実は1割です。7歳から14歳まで,小学生,中学生で朝ごはんを食べてない子が3%なのです。20歳から29歳の人では27.4%という割合です。

 給食費については,小学校,中学校で約1,000万人の対象者のうち9.9万人が払っていません。率にすると1%です。お金で言いますと,4,400億円の給食費のうち22億円が払われていません。率でいうと0.5%です。

 保育料は4,780億円で,そのうちの89.7億円が納められていません。率にすると1.9%。人数ですと,230万人のうちの8万5,000人で3.7%です。

 今,私が朝ごはん,給食費,保育料のことを言いましたが,逆に朝ごはん食べている小学生,中学生は97%。給食費は金額で99%が払われています。保育料を98.1%の人は払っています。そのことをどういうふうに私たちは理解したらいいのかな。

本当はどうなのか知ろう

 青少年の犯罪が増加したとよく言われます。感じとしてはそう思っています。でも,青少年犯罪は本当に増えているんでしょうか。警察庁の「少年非行等の概要」によりますと,「平成18年中(平成18年1月~12月)の少年非行の情勢は,刑法犯少年の検挙人数が3年連続で減少し,知能犯を除くすべての罪種で減少した。平成18年の刑法犯少年の検挙人数は11万2,817人,前年比8.8%減,人口比については18.8%減」。少年犯は検挙率が高いですからほとんどつかまるわけですが,犯罪の数とつかまった人の数はほとんど一緒だと理解をしていただいたらいいと思います。人口比でも減っている。「少年非行等の概要」のほかのページの,刑法犯少年の特に凶悪犯のところをちょっと読みます。「過去10年間の少年における凶悪犯,殺人,強盗,強姦,放火の検挙人数は1,170人,前年比18.8%の減,3年連続の減少となった」― 減ってるんですね。でも,感じとしたら増えてるなとなります。

 テレビのニュースなどで同じ映像が流れていますから,給食費払ってない人多いな,許されへんな,保育料も払ってへんな,朝ごはん食べてへん子多いなと思いますが,本当はどうなんかなということを,私たち教養ある,知識ある,知恵ある大人として,感じて,学んで,知る必要があるんじゃないかな,そんなふうに思っております。

若者たちを信じて信じて

 今の若者は,忍耐がなくて,怠け者で,だらしがなくて,何も考えてへんのと違うかなといろいろ言われます。昔の人は,お腹が減っても物が食べられない大変さを味わっていました。今は,物が目の前にいっぱいあるけど,「全部食べたら病気になるでぇ,全部食べたらあかん」と,我慢せないかん大変さ。どっちが大変なのかというのは一概に言えないと思います。

 昔は,何か欲しいときは,お年玉や小遣いをためたり,アルバイトをしたりして買ったわけです。今は,テレビつけてますと,「お金がなかったら貸してあげますよ。お金を借りて物を買いなさい。貸してあげますよ。貸してあげますよ」と言われてます。我慢をするというような時代ではない。今は何でも買える。クレジットカードでもそうですよね,今はお金がなくてもクレジットカードがあったら買えるわけですから。

 そういう時代の中に生きていて,本当に今の若い人たちは大変な時代に生きているなぁ。こんな厳しい時代,よう生きていけへんなぁ,そんな感じが,私の素直な感じでございます。

 皆さんも,今の若者,また,報道のあり方,本当の数字,みんな持ってんねんと言ったとき,みんなとは何パーセント以上のことを言うのかなということをぜひご理解をいただいて,若い人たちの話を聞いて信じてあげてほしいな。

 学校でも,いろんな困ったことや事件がいっぱい起こります。私,職員会議でいつも言っているんです,「生徒信じて,だまされて,裏切られたら本望や。それが大人の務め,学校で働いている人間の務めや。信じて信じて信じて,聞いて聞いて,そして,裏切られたらそのときや」というふうに思っておりますし,そういうふうに生きていきたいな。

 そして,もう1つは,私自身が,大人自身が楽しく人生を生きている姿を若い人たちに見てほしいな,見せていきたいな,そんなふうに思っております。