1937年生まれ。関西大学経済学部卒業。’62年税理士登録。’67年税理士井上暎夫事務所を開設。’73年,吹田北(現千里)RC入会。
’02年2660地区ガバナー。’04年国際大会財務担当。’07年規定審議会・地区代表議員。
3年に1度の規定審議会は今年,4月23日から28日まで米・シカゴで開かれました。初日はオリエンテーションでしたが,2日目からは朝8時から午後6時まで5日間びっしり本会議が開催されました。本会議には337件の提案があり,うち59件の制定案と38件の決議案が採択されました。本日は,4つのポイントに絞って私なりに感じましたことをお話させていただきます。
かねてから日本のロータリーの取り組み方は大変まじめであるといわれてきました。このことは日本から提案された決議案をみてもよくわかります。今回も日本のクラブからいろんな提案がされました。「メークアップ期間をかつての1週間に戻す」「メークアップの対象になる奉仕委員会の会合の廃止」「イークラブ(e-club)そのものの廃止」などが提案されました。しかし,提案はことごとく大差で否決されました。日本と世界のロータリーに大きな隔たりができてしまったと思うわけです。
一方,会員身分の停止となる会員の出席率を「60%」から「50%」に引き下げる提案がなされましたが,こういう緩和の規定はすぐ通りました。こうした流れの中で規定を元に戻したいという日本の提案はもう無理ではないか,と感じたほどです。例会回数の変更につきましても今回,「月2回以上とする」という提案がなされました。これは理事会に付託するという条件付きで採択されました。
日本のロータリーはとかく「ロータリー原理主義」といわれておりますが,そのような考え方にこり固まっているとやがて置き去りにされるのではないか,と思っております。
DLP(District Leadership Plan ・地区レベルでのロータリー強化プラン(例)ガバナー補佐制度),CLP(Club Leadership Plan ・会員数の少ないクラブの活性化を図るための簡素化された委員会組織プラン)について「理事会が実施する前に規定審議会で討議され,それに沿って実施されるべきではないか」と日本から提案がありました。これに対して「受け入れるかどうかは,地区及びクラブの問題である」という反対意見が出され,あっさり否決されました。つまりCLP,DLPは理事会の推奨プログラムであって,それを受け入れるかどうかは地区やクラブの手の中にある,という考え方です。
このCLPを前提にした3つの案が出されました。ひとつは,「クラブ関係委員長をクラブ理事にする」という案です。しかし54対434の大差で否決されました。その一方で,日本人理事の努力で「4大奉仕をクラブ標準定款に記載する」という案が理事会名で出され,賛成434で可決されました。これは,やはりロータリーに対する考えは従来通り4大奉仕になると皆さんが理解している表れではないか,と私は思っております。
CLPのイラストを初めて見た時,私は4大奉仕はどこへいったのか,と驚きました。実はこの434の賛成を受けてビル・ボイドRI会長は直ちにCLP委員長と事務局にイラストを含む全てについて見直すよう指示されたと聞いております。CLPについては各地区内のクラブで意見が錯綜しております。私はCLPはクラブを活性化させるためのひとつの手法だと理解しておりますので,クラブがそれぞれ考えていくべきだと思っております。
会員資格が厳格に守られていないことを反映して「規定通りに運用すべきだ」という決議案が日本のクラブから出されました。ところが,これは否決されました。現状の幅広い解釈で良いというのが大方の支持だと思います。
加えて「財団学友を会員に迎える」ことが採択され,「地域社会への活動による奉仕に献身している人」という項目が,一部修正のうえで採択されました。これは職業分類が職業ではなく社会奉仕の種類によって作られるということになるわけで,ロータリーにとってはひとつの分岐点というか,新しいロータリーに変わっていく分かれ道になるのではないか,と私はその時,感じました。
かつてロータリーは職業奉仕を金看板にしてまいりましたが,現在,RIの活動は人道的奉仕活動に向いています。今回の会員資格の改正は3分の2の賛成を要する定款の改正であり,重く受け止めなければいけないと考えます。
もうひとつの流れとして,ロータリーに若い人をむかえようとする動きがあります。その表れとして財団学友を正会員にすることがあります。注目すべきは,卒業2年以内のローターアクターの入会金を免除することが決まったことです。
ロータリーの第2モットー(He profits most who serves best)は過去に何度も廃止の瀬戸際に立ちましたが,その都度,日本のロータリーの働きかけもあって今日も残っておるわけです。しかし,モットーが使っている「He」が性の表示に関していかがなものかという論議があり,一時使用停止の通達が出ました。結果的には現在の「They」になって使用されることになったわけです。今回,この件に関して「He/She」とする提案がありました。
ところが,その後の理事会では「He/She」は英語になじまないという意見が出まして「One」としてはどうか,ということになりました。結局,採択されたものを理事会で勝手に「One」に変えるのはいかがなものか,とする意見があって2010年の規定審議会に理事会から提案することで決着しました。ただ,このモットーについては「profit」の解釈を巡って欧米の反対もあり,次の規定審議会でも楽観はできないと考えます。