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2007年6月22日(金)第4,165回 例会

ドイツ人ジャーナリストから見た日本企業の特徴

ビアガ・ベッカー 氏

ベルゼン・ツァイトゥング紙東京特派員
(93-94年度大阪RC受入国際青少年交換学生)
ビアガ・ベッカー 

1993年~'94年ロータリー国際青少年交換学生として,大阪府立箕面高校,'98年~'99年一橋大学に留学。'01年ケルン大学大学院(経済,政治・経済ジャーナリズム)卒業。卒業後,ベルゼン・ツァイトゥング紙に入社。'05年から現職。留学以来,日本特派員として,日本について報道するのが夢であった。

 私は,1993年にロータリークラブの交換留学生として来日し,ここで何回もスピーチさせていただきました。大阪の箕面高校に1年間在学いたしました。日本滞在中は,ロータリークラブの会員でいらした柴田様,能村様,関根様のご家庭にお世話になり,わが子のようにかわいがっていただきました。それぞれのご家庭には私と同年代のお子様がいらっしゃいまして,何もわからない私にいろいろのことを教えてくださいました。

日本留学で心に誓ったこと

 交換留学が終わったとき,私は,将来ジャーナリストとして日本に戻ってきて,この日本というすばらしい国,親切な人々,興味深い文化について,ドイツ人に知ってもらうためにレポートをしようと心に決めました。

 その後,ケルン大学と一橋大学で経済学を勉強した後,ドイツ金融新聞「ベルゼン・ツァイトゥング」に入社いたしました。ベルゼン・ツァイトゥングは「日経金融新聞」と同じような専門誌で,30年以上前から日本特派員がいました。

 現在,東京特派員として私はドイツの読者に毎日記事を書いております。日銀の金利政策,東京・大阪証券取引所の動き,郵政民営化など金融市場に関するもののほか,個別の会社の業績の動き,M&A,国際化戦略など広い範囲の記事を書いております。

 取材を通じてわかったことは,企業のメディアに対する対応に,日本の企業とドイツの企業との間に多くの違いがあることです。その違いに,外国人ジャーナリストとしては,正直に申し上げてとても戸惑っております。

記者クラブの閉鎖性

 最初にお話ししたいのは,日本の「記者クラブ」制度です。日本にはたくさんの「記者クラブ」がありまして,ほとんどの上場企業は,東京証券取引所と大阪証券取引所の「記者クラブ」を,自分の広報のためにお使いになっておられます。

 問題は,「記者クラブ」のメンバーになっていないジャーナリストは,「記者クラブ」が開催する記者会見に,原則として参加できないということです。「記者クラブ」のメンバーになるためには,メンバーの同意と,当番(幹事)として「記者クラブ」の事務を担当しなければなりません。しかし,私どものような外国メディアは,当番を担当する人的な余裕もありませんし,言葉の問題もあって,正式なメンバーになることができません。

 記者会見の案内は「記者クラブ」のメンバーにだけ行います。これは「記者クラブ」が企業の広報の仕事の一部を担当していることになります。

 この制度は,「記者クラブ」のメンバーにとっては,優先的に取材ができるので便利であり,企業にとっては広報の仕事の量を減らすことができるかもしれませんが,私のような外国人記者にとりましては,取材を難しくしております。

 このような長い間続いている制度に対して,例外もございます。国際的な商品市場で競争を続けている企業,例えばトヨタ,ホンダ,ニッサン,シャープ,ソニー,東芝などの会社です。これらの会社は独自にメディア向けのイベントをホテルなどで行い,内外,記者クラブの会員かを問わず,すべてのジャーナリストを招いておられます。

外国へ積極的な情報発信を

 次に,企業の広報担当者のメディアヘの対応の問題でございます。個別の企業の記事を書く場合には,経営者の方にお会いして,経営環境に対するご認識や戦略,方針などを策定する際の基本的な考え方を,ぜひともお伺いしたいと思います。

 そこで,広報部門に電話をして,私の自己紹介をした上で,しかるべき経営幹部の方へのインタビューをお願いすることになります。快く受けてくださる会社もあります。最近では,東証の西室社長さん,大証の米田社長さん,ホンダの福井社長さん,東芝の西田社長さんにお会いできて,有意義なお話を伺うことができました。

 ところが,広報担当者から,「この先数ヵ月はお会いする時間がない」と門前払いを受けることもよくあります。そのとき私は,この会社は,世界のメディアの視聴者に自分の会社をPRすることの重要性に気がついておられないという印象を持ちます。外国のジャーナリスト,投資家,ビジネスパートナーに,その会社をよく知ってもらうための努力をするべきだと思います。

 企業が外国メディアを避けることによって,記事を書くジャーナリストはその会社について詳しい正式な情報がありませんので,内容に深みのある記事が書けなくなってしまいます。企業にとっても,自社の立場とか意見などを記事に反映させることができなくなってしまいます。

 最近は,外国人の広報担当者を置く企業も出てきました。多くの企業がホームページに収益実績などの情報を,日本語と英語で同時に発表する努力もしておられます。英語版が日本語版よりも数週間遅れることもあった昔に比べると,とてもよくなりました。

 このような動きは,日本企業と外国メディアとの相互理解と信頼関係をより強くするものだと思います。同時に,日本企業と外国の消費者やビジネスパートナーや投資家との間にも,同じことが言えると思います。

 これは私のアイデアですが,日本の企業はたくさんのすばらしい製品とサービスを提供しておられますが,日本国内の成功に比べて,海外ではそういうことがまだよく知られていないと感じています。一方,外国人ジャーナリストは,日本の企業をもっとよく知りたい,それを海外に知らせたいと思っています。ですから,両者がもっと緊密に連携すれば,日本と日本の企業の認知度をもっと高めることができると思います。