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2007年5月11日(金)第4,159回 例会

デジタル革命 地方からの狼煙

田 島    俊 氏

毎日放送 メディア開発総括 田 島    俊 

1968年,京都大学文学部卒業後,毎日放送入社。報道記者として大阪府警や大阪府庁,大阪市役所を担当。テレビ編成部長,総務部長,メディア開発局長などを経て現職。総務省地上デジタル放送総合推進部会委員などを務める。

 私は民放ローカル局の代表として,地上デジタル放送の推進にずっと携わってまいりました。実は今放送業界を動かしているのは,NHKの代表1人,東京キー局の代表が5人,そして,大阪以下のローカル局の代表として私がその中に入っています。私たちは,全国の放送事業者民放127社の意見を取りまとめて,対総務省との交渉事に当たっております。

急務のデジタル転換

 アメリカではゴア元副大統領が光ファイバーで全家庭を結ぶ「情報スーパーハイウェイ構想」というのを提唱しました。日本では,「IT戦略本部」という小泉純一郎前首相が推進しました。つまり,最も優れた先進的なIT国家をつくろうということで,IT戦略というのを発表されました。

 2002年当時のIT戦略の中には放送のデジタル化というのは1行も出ていませんでしたが,いろいろな経過を経ましてここまでやっと来ました。地上放送のデジタル化が完了する2011年7月24日まで,あと4年しかありませんが,4年後には極端に言うと皆さんの(アナログ用)テレビは全部映らなくなります。私は昨日も一昨日も東京にいたのですが,いかにアナログをとめるかという作業をやっております。アナログをとめた途端,皆さんのご家庭ではテレビが突然映らなくなるわけですから,それをどうやって乗り越えるか。

 これはもう既に本が出ておりますが,東京ガスさんが液化天然ガスに転換されるときにずいぶん苦労された,1軒,1軒つぶしていって,全く心配がないという形で初めて液化天然ガスに転換されました。それよりもさらに難しい作業だろうと思っております。皆さんのご家庭,全く漏れなくデジタル受信機を置いていただいたということを確認した上でないと,恐らくアナログ放送はやめられないであろうというふうに思っております。

 あと4年の歳月で,アナログをやめるためにどうやってデジタルを宣伝していくかということで,いろんなアイデアを出し合い,やめる方法等についても話し合っています。

のしかかるデジタル投資

 デジタル化が何で大変かというのは,1つは,大きく言いますとデジタル投資です。全民放127社で8,000億円ぐらいのデジタル投資が必要だと言われておりまして,東京キー局は大体225億円ぐらい,大阪準キーが125億円,それ以外のローカル局は54億円,これは平均です。

 いかに大変かという数字でお示しをするのに一番いい例は,例えば経常利益と比較をしていただくとよくわかるのですが,東京キー局の平成16年度の経常利益5局平均で大体189億円,ということは大体1年間の経常利益プラスαでデジタル化が全部できる。関西でも大体50億円から40億円程度ですから,2年分か3年分ぐらいの経常利益でいける。ところがローカル局は,5億円とか,少ないところは2億円ぐらいの経常利益しかない。この会社が54億円をどうやって投資するか。こんなことは普通の会社で言ったらあり得ない,もう全部倒産するわけです。

 そんな状況で,デジタル化というのは大変な難作業ということをおわかりいただきたいと思います。

デジタルテレビの買い時は?

 肝心のデジタル化の話ですが,「じゃ,何でデジタル化するの?」という話になるわけです。画面がきれいになる。確かにハイビジョンはきれいです。携帯電話でテレビが見られるというサービスまで始まっています。それはそれとしてやっぱり一番大きいのは「電波の有効利用」です。

 今まで私どもは,VHFとUHFという非常に広い幅の電波を使っていたのですが,それを3分の2に減らしてデジタル化をしたわけです。残りの3分の1は,これから通信事業者さんを含めて皆さんに使っていただこうというのが一つの大きな国の方針で,したがって国策ということに位置づけられたわけですが,われわれは電波を返上するわけです。

 したがって,われわれとしてはそういうことを協力したのだから,少しお金を援助してくださいよというお願いをしているのですが,なかなかストンといきませんで,難しい局面を迎えています。

 しかしながら,4年後の7月24日にはアナログ放送をやめるということは厳然として決まっておりますので,ぜひ皆さんデジタルテレビを1日も早くお買い上げをいただきたいというふうに思います。

 「いつデジタルテレビを買ったらいいですか?」とよく聞かれるので,「買いたいと思ったときが買いどきですよ」と申し上げています。といいますのは,受信機は確かに年々安くなります。私は2003年に買いましたが,50インチのプラズマが100万円近くしました。ところが,今は1インチが5,000円を切っています。そんな状況で大幅に下がっています。ですから,「時間がたてばたつほど安くはなるのですが,人生限られていますから,それだけきれいな映像,すばらしいものを楽しむ時間が減る。そう考えればお早くお買い上げください」,そういうふうに申し上げております。

 ただ,アナログテレビが全部ゴミになるわけでなく,デジタルの受信装置をできるだけ安いものをこれから開発して,生活困窮者には国費で配らないといけないかなということまで議論しています。

 テレビのコマーシャルで,草剛やデジタル大使として各局の女性アナウンサーが出てやっておりますし,御堂筋パレードでは今年もやりますので,ぜひ皆さんご協力よろしくお願いいたします。