大阪ロータリークラブ

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2007年2月2日(金)第4,147回 例会

今後の日米関係

Daniel R. Russel 氏

駐大阪・神戸アメリカ総領事 Daniel R. Russel

1953年,米国生まれ。米サラ・ロレンス大学と英ロンドン大学を卒業。民間会社勤務後,
'85年米国務省入省。以後,東京,大阪,韓国,オランダ等の在外公館勤務などを経て,'05年8月から現職。著書に「America’s Place in the World」。

 私は,ロータリーの活動について,大変高い評価をしています。特に社会や世界に貢献する活動に敬意を表したいと思っています。

親密,健全,安定

 現在,そして今後の日米関係は,親密で安定,健全な状態だと見ています。が,若干懸念するべきところもあり,ますます日米のために力を入れなければならないと思うようになりました。ポイントは3つの単語で表せるでしょう。Contact(交流),Cooperation(協力),Understanding(理解)です。

 日米間が安定している理由は,簡単に言いますと,共通の価値観,共通の原則にあります。民主主義,自由経済,法律や人権の尊重,言論や宗教の自由。また,国の国益も一致していますし,経済関係も非常に密接です。

 さらに文化交流。この交流は,双方向的なものです。学生時代に英語の本をお読みになったでしょうが,今のアメリカの子どもは日本の漫画を読んでいます。ハリウッドの映画で育った方が多いと思いますが,今のアメリカの子どもはアニメに夢中です。

 野球にしても,アメリカの監督が日本に来て,松坂,井川,松井,イチローがアメリカで活躍。食文化では,パン料理やスターバックスが日本に入り,アメリカでは,お寿司が人気です。

 日米の盛んな文化交流の根底には,共通の価値観,相互の利益が存在しています。政治から来るものではなく,民間レベルでの連携に根ざしています。だから,日米交流,日米の協力,理解を高めるためには,民間が力を貸さなければならないのです。

直面する課題

 一方で,日米両国が直面する問題や危機もあります。日米関係を強めることになる危機もあります。例えば北朝鮮問題では,北朝鮮が弾道ミサイルを発射,核実験を昨年行いました。その前に日米で事前協議をして,戦略やシナリオを頻繁に練って,情報もお互いに提供しましたので,実際に核実験が行われたときには,準備が整っていました。だからこそ,中国に影響を与えることができました。

 国連安保理で,日本が史上初めて決議案を出し,全会一致で可決されました。他にも国際テロ対策,鳥インフルエンザ,地球温暖化などについて,日米は密接に協力をしています。こうした危機は,日米間にはまったく,問題になりません。

 懸念すべきは別にあると,私は考えています。日本は島国で,150年前までは鎖国をしており,やや閉鎖的な傾向がありました。

 アメリカは国土が大きいので,外国や海外のことを忘れる傾向があり,やや保護主義になりつつあります。アメリカ人にとって外国はカナダやメキシコ。東海岸からできた国ですから,欧州などは祖国として見る向きもあります。アジアを遠く見たり,アジアで中国の存在を大きく見る傾向が,懸念材料のひとつ。

 そして,イラク。アメリカの政治の関心,政治的なエネルギーは今,ほとんどイラクに向いています。その上,アメリカの国会議員はなかなか海外に出かけられない。日本に来る議員は少なく,アメリカと日本の議員の連携が薄くなる恐れもあります。

基盤作りは民間から

 先ほど少し中国に触れました。基本的には中国の台頭自体は,日米間に問題はありません。日本もアメリカも,中国に対して同じ期待を持っています。仲が良くなっても,日中同盟,米中同盟というのは,ちょっと想像がつきません。だから当分,日米同盟はアジアの安定,繁栄の基盤になると私は思います。

 問題はどこにあるのか。アメリカは中国寄りになっているのではないか,という心配をよく聞きます。アメリカにとって中国には問題がたくさんあり,それですごく注目されているのです。

 日本でも,企業,大学,政治家で,中国の方を向く人が多いようです。ただ,アメリカや日米関係をなおざりにしては困ります。中国の台頭につれて,日米関係に,若干,ストレスを抱えることが考えられます。

 昨年,ハーバード大学のエズラ・ボーゲル博士が来日しました。二人で話すなかで,「ハーバードやMIT,シリコンバレーでは,インド人や中国人の学生はたくさんいるが,日本人の学生が見当たらない。これはとても心配だ」と言っていて,私も同感でした。

 今の世界情勢では,日米間がしっかりしなければなりません。私の上司でしたマンスフィールド元駐日大使は「21世紀は環太平洋世紀になる」と言いました。そして「アメリカはアジアの国ではないが,太平洋の国。アジアで密接なパートナーが必要で,そのパートナーは明らかに日本だ」とも。これは全く真実でした。

 この丈夫な日米関係を守り育て,次の世代に引き継ぐのは,政府ではなくて民間なのです。経済や文化,また組織ベースや個人レベルでの連携は極めて重要。だからこそ,私はロータリーの活動を高く評価しています。

 日本の景気をよくするためには,まず地方が元気でなければならない。東京だけが日本ではありません。関西の活性化にアメリカは関心があり,役割があると考えています。

 毎年400万人弱の日本人観光客が訪米します。ハワイに行く人が圧倒的に多く,米本土に行く人はわずか150~170万人。アメリカ人で日本に来るのは,わずか82万人。双方向的でない観光動向のため,一部航空便の運行がストップしてしまいました。また,関西空港から出国する日本人が少ない。振興策は,みんなの手で行わねばならないと思います。

 最後に,ロータリークラブは,日本とアメリカの協力のシンボル,象徴的な組織であると私は考えています。今後,ますます日米関係に力を発揮していただくことを期待しております。