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2006年12月1日(金)第4,140回 例会

大阪府における薬物乱用の現状について

西 村   章 氏

大阪府健康福祉部薬務課麻薬毒劇物グループ
薬物乱用防止対策総括主査
西 村   章

1978年大阪薬科大学卒業後,神戸大学医学部附属病院で研修。'79年 大阪府に入庁し衛生部薬務課に勤務。以降,保健所,大阪府立病院(現大阪府立病院機構急性期・総合医療センター)勤務。'06年より大阪府薬物乱用防止対策総括主査。

 きょうは,薬物乱用の現状について,概略をお話をさせていただきます。

第3次乱用期

 薬物乱用とは「医薬品を本来の医療目的から逸脱した用法や容量,目的のもとに使用。医療目的にない薬物を不正に使用」することを言います。本来医療に使われる医薬品でも,逸脱した使い方で乱用に陥っている方もいます。1回でも「乱用」になるのです。

 乱用される薬物と主な作用では,覚せい剤は興奮作用,ヘロインは抑制的な作用があり,コカインやMDMAは興奮する作用があります。LSDはごく微量で幻覚作用がある麻薬です。アヘンは抑制作用,大麻は幻覚作用。

 また,医療用医薬品の乱用を申し上げましたが,向精神薬もすべてが医療用で使われているわけではありません。

 大阪府における薬物乱用の現状では,覚せい剤事犯の検挙者数は平成12年の2,463名をピークに減少傾向です。警察庁は平成10年に第3次覚せい剤乱用期に入ったと宣言しました。たしかに12年以降,減少傾向ですが,検挙数は依然多く,乱用期を抜け出したという宣言はされていません。

 第3次乱用期に入った原因は3つあります。まず,供給源の多様化。第2次乱用期には暴力団関係者がかかわっていましたが,第3次では外国人が登場しました。また,密売の場所,方法が変化しました。街頭での販売型から配達型になり,お金もあらかじめ受け取っておく形に変わっていると言われています。そして,乱用が低年齢化し,中学生,高校生の間に乱用者が増えています。

 ここ数年,大麻やMDMA等錠剤型麻薬による検挙者数が増加傾向にありますが,30歳未満の青少年層が多数を占めています。

 また,覚せい剤関係の初犯率は50%前後ですが,大麻は初犯が90%前後で,青少年層が使い始めて,初めて捕まったという傾向が出ています。

 乱用の低年齢化に関しては,不良外国人による無差別な密売と,若者たちのはき違えた個人の自由意思―他人に迷惑をかけなければ何をしてもよいという考え―があるのではないかと思われます。

 若い人は,インターネットや,携帯サイトなど氾濫する情報源のなかから,いろいろな情報を得ていて,薬物についても,そして,密売人との接触にもそういったITの道具が使われていると言われております。

 さらに,最近の薬物の密売価格の低下と使用方法の簡便化が,低年齢化に拍車をかけています。以前の覚せい剤では静脈注射が一般的でしたが,最近では吸引や錠剤を内服する方法に変わってきています。

乱用の低年齢化に歯止めを

 以前は脱法ドラッグとか合法ドラッグと言われていましたが,今は国が違法ドラッグという言い方に決定しています。この違法ドラッグの事件が,今年7月にありました。

 7月の事件では,大阪北部で違法ドラッグを服用した学生が,マンションから転落して亡くなられました。

 この事件で使われた薬物は,事件当時の法律では規制薬物としての指定はされていませんでした。しかし,成分の構造式が麻薬に指定された薬物に似ていて,作用も似ていました。麻薬とか覚せい剤の指定は,構造式を持つものをひとくくりに規制するのではなく,1つ1つを規制するのです。

 こうした薬物は,巧みに宣伝されています。大麻はタバコよりも害が少ないなどと,誤った情報が流されます。MDMA等の錠剤は,カラフルな色や有名ブランドや人気キャラクターの刻印で見た目を飾り立て,若い人たちの抵抗感をなくしています。

 こういう薬物の密売人にとって,若い人たち,特に中学生とか高校生ぐらいの子どもは絶好のターゲットです。中学生とか高校生という年代の警察官はいないし,学校に行っていなくても見ただけで年齢の判断がある程度つきます。しかも,この年代の子どもは友達とのつき合いが深く,友人にも同じことをしようと勧めたりするのです。

 大阪府は,知事を本部長に「大阪府麻薬覚せい剤等対策本部」を設置しています。ここには「取り締まり対策(警察関係)」と,いったん薬物依存に陥った方々を治療して更生へ導く「中毒者対策」と,私どもの「啓発対策」があります。

 啓発では,誘いの情報のウソや誤解をなくす,薬物乱用の誘いを断ろうというように若い人たちにアピールしています。

 若者が将来,こういった薬物だけではなくて覚せい剤等のもっとヘビーな薬物乱用に陥ってしまうことを防ぐためにも,ぜひ必要なことであると考えて私どもは取り組んでおります。

根絶に向けて

 薬物に関して大阪が1番というのは,私の知っている限りで2つあります。1つは,大阪での薬物関係の検挙者は全国の大体10%ぐらいで,人口比に直しますと1番です。こうした1番は,ぜひ返上したいと思っています。

 もう1つは,薬物乱用に関しての運動の中で,国連への募金についてです。大阪府が1番で,昨年度も1番でした。これには,ロータリークラブからいただきましたご寄付が大きく影響をしております。

 最後に,私どもは大阪府での啓発事業をやっていますが,啓発資材は国が作っています。子ども向け,青少年向けの啓発資材は不足しています。しかし,大阪府も財政難で,なかなか私どもで制作したり,購入したりできません。この面でのご援助と,皆様方の周囲でも,薬物乱用防止にさまざまなご協力をいただければ,ありがたいと思います。

 (当日の卓話謝礼を国連「ダメ。ゼッタイ。」募金に寄付)