大阪ロータリークラブ

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2006年9月15日(金)第4,130回 例会

海・山・空 青少年とキャンプ

石 原  福 造 君(協会・団体)

会 員 石 原  福 造 (協会・団体)

1951年生まれ。桃山学院大学卒業後,大阪YMCA入職。青少年活動,国際交流,指導者養成にかかわり,大阪YMCA副総主事となる。高齢者レクリエーション研究会副会長。徳島県青少年センター副運営委員長など。著書は「自然派の大人から君達へ」「高齢者レクリエーションその理論と実際」など。'03年4月当クラブ入会。PH準F・米山準功労者。

 私が一番専門とする子どもたち,あるいは野外活動のお話をさせていただきます。私どもYMCAは,日ごろから皆様のご支援を受けて活動しています。企業あるいは団体の応援団として賛助会というものがあり,約200社から毎年,賛助会費をいただき,青少年の育成に使わせていただいております。最初に感謝を申し上げます。

YMCAと大阪RC

 YMCAは1844年に英国・ロンドンで誕生しました。産業革命のさなか,近代文化が発展しようというときでしたが,当時の労働環境は劣悪でした。その生活改善をしようと二十歳代の12人の若者が集まって始めた運動で,現在,世界120以上の国・地域にYMCAがあります。YMCAは「Young Men’s Christian Association」の頭文字ですから,キリスト教を基盤にした運動です。

 日本のYMCAはまず東京にできまして,大阪が2番目で1882年にできました。大阪YMCAは現在4つの法人を持っています。財団法人,学校法人が2つ,社会福祉法人で,青少年活動,国際交流,社会奉仕というボランティアを中心とした活動をしています。YMCAはボランティア・アソシエーションと言われ,現在,大阪のYMCAには約3,000名のボランティアがおり,高校生,大学生の18~22歳,22~30歳の青年,それ以上の人たち,シニアの人たちが,それぞれの役割を持ってYMCAで活動をしています。

 とりわけ,きょうお話ししますキャンプというのは,大学生のボランティア・リーダーが年間登録してトレーニングを受けており,子どもたちと一緒に生活をするうえで,なくてはならない存在です。つまり,先ほどの賛助会の会費などを用いまして,青年たちを養成しているのです。

 いろいろと調べますと,大阪RCは戦後の青少年育成との結びつきが大変強い。戦後すぐに,大阪RCが復興というか,次の時代を担う青年たちを育もうという活動の中で,ロータリーキャンプというようなものを企画しました。六甲山にありますYMCAキャンプ場,これは1951年に開設しましたが,このときにいろいろな形で大阪RCが関係しており,1953年に,戦後初のロータリーキャンプを大阪RCと大阪YMCAが主催しています。

 次に,海のキャンプ場。島国では,海が青年には重要な役割を果たすだろうと,1968年に徳島・阿南国際海洋センターをオープンしました。ここにも大阪RCが関わっています。大阪RCは,こうしていろいろな形で戦後の青少年の教育についてイニシアチブをとってきました。

教育キャンプ

 YMCAが提供するキャンプは,レジャーキャンプではなく教育キャンプです。なかでも子ども対象には,海のプログラムが優れています。それは,今の社会でも一番大事なことですが,決断することを学ぶからです。行くのか行かないのか,漕ぐのか漕がないのか,海に出ますと,すべて自分で決めないといけない。すべてのプログラムを,段階はありますが,子どもたちが自ら決める,このことが大変大事なのです。

 最近の傾向で,私は,今の子どもは豊かさに負けた,今の社会は豊かさに負けたと思っています。恵まれ過ぎて我慢する,頑張るということをしなくなっている。YMCAは,キャンプのときに家に電話をさせません。子どもたちは親元から離れて頑張って,緊張しています。家族の声を聞くと,緊張が切れて頑張りができなくなってしまうので,禁止しています。

 しかし,子どもは,最近は携帯電話を持って来ます。ボランティア・リーダーは一緒に生活をして,けんかなどは自分で解決することが大事だと見守りますが,子どもは解決しない,すぐに携帯で電話をします。お母さんはYMCAに「何とかしてください」と言う。子どもが頑張って,自分で課題解決するという経験のためにキャンプに行くのですが,なかなかご理解いただけません。自分での課題解決には,反復練習しかないと思っています。経験を積むほど,いろいろな形で豊かになるのです。

自分で決断する力

 今の子どもはいろいろな問題を起こしますが,資質として子どもが変わったのではなく,社会環境が大きく変化したためだろうと考えています。子どもは本当に純粋で,与えられるものを受け止める。もっとも大きな問題は大人になっていない親であります。

 キャンプで子どもはいい顔をしています。帰ってきて親の顔を見ると,その緊張が切れます。お母さんの顔を見て「ワーッ」と泣く。これが年々多くなっています。それでも,今年,9泊10日のキャンプが終わった子どもたちの背中は,自信にあふれていました。この子どもにお父さん,お母さんが「よく頑張ったな,よく遊んできたな」と言ってやれるかどうかが,青少年を育てる上で大変大事なことになるのです。

 野外活動,キャンプは,体験をしながら自分で考え,学ぶことです。知らないことに自らトライしていく。暑いときにはどうしたらいいのか,海に入りたいときにはどうしたらいいのか。考えながら取り組んでいくのが野外活動です。これに対し,学校では知識として本から学ぶ,理屈から入っていきます。自分で考えていろいろトライしていく力が,やはり成長過程では大切であると思っております。