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2005年11月11日(金)第4,091回 例会

イタリア・フィレンツェで得たもの

福 嶋  千 夏 氏

RI2660地区2003~04年度
ロータリー財団奨学生
福 嶋  千 夏

神戸女学院大学音楽学部声楽専攻卒業,及び同大学専攻科終了。 '03~'04年RI第2660地区派遣により,国際親善奨学生としてイタリアフィレンツェ音楽院に留学。現在神戸女学院大学非常勤講師,関西二期会準会員。

♪プッチーニ作曲 オペラ「ジャンニ・スキッキ」より「いとしい父よ」♪

 ただいま歌わせていただきましたオペラは私が留学したイタリアのフィレンツェを舞台にして書かれています。フェラガモのお宅「フェラガモ宮殿」の横にお住まいの方が私の顧問のロータリアンでした。

留学で得たすばらしい友人たち

 ロータリーの留学生で本当によかったと思ったことがございます。1つは留学前に1年半かけて日本や大阪について教えていただき,それを紹介するよう,親善大使としての役割,そして自覚を得ました。まず1カ月間,ローマとフィレンツェで語学研修を受けたのですが,そのときに世界じゅうからロータリー奨学生が集まっていました。そこでお友達をつくることができ,自分が日本人だなと感じることがたくさんありました。

 語学は一番上のクラスに入ったのですが,例えばG7の通訳になりたいとか,世界を渡り歩く仕事につきたいとか,国際弁護士になりたいとか,すごく興味深い方たちとお知り合いになりました。彼らは日本のことをよく知ってくださっていて,「日本の畳や壁はやわらかくて,これが日本人の優しさにつながっている」とか,「日本人は内緒話しているみたいに話す。声のトーンは,人格のよさをあらわしている」と言われました。

 また,「日本語の『違います』と否定する言葉は,英語の『ノー』とは違って『ディファレント』だから,日本人の奥ゆかしさをあらわしていて,日本語も非常に興味深い」とも言っていました。相手の国のことをまず尊敬するのがお友達になるのに一番大切なことだなと身をもって感じました。

 イタリアは地理的な形成状況からいっても,過去に非常に多くの移民を受け入れているんです。特にアフリカから近いこともあって,本当にたくさんの黒人を見かけました。ユーロスターで前に座った黒人の女性と話をする機会があったのですが,彼女は中央アフリカから砂漠を歩き,一番イタリアに近いチュニジアまで行って,地中海を渡る船を何カ月も待って,やっと乗れてイタリアに入ってきて,身寄りなどを頼って動いていくんだということを聞きました。何万キロもはだしで砂漠を歩いてイタリアに入ってくるわけで,けがをしてる方もいました。随分日本とは状況が違うんだなということを肌で感じました。

イタリアらしいおおらかさ

 担当のロータリアンから直接奨学金の小切手をもらうことが規則で決まっていまして,会うことを楽しみに,一方では手持ちのお金が少なくなってやきもきしていました。彼に電話しましたら,パリに出張ということで全く会えない。首を長くして待って,やっと1カ月後に彼から小切手をもらったときは本当にうれしかったです。こういうところもイタリアらしいな,アメリカやイギリスとはちょっと違うのかなと思いました。例会にはよくお招きいただきました。電話で「明日フォーマルなドレスで例会へ」とか,「明日,着物で来てください」とか,「今から昼食に」など急なお誘いがあって困りもしました。

 ロータリー関係以外にも友達ができました。たくさんの日本好きなイタリア人にも出会いました。文楽や能について関心を持っている方もいました。こういう質問もありました,「日本はアメリカと一番仲がいいが,次に仲のいい国はどこですか?」とか,「原爆を落とされているのに,なぜアメリカと仲良くできるのですか?」とか,「日本人は非常におとなしくお行儀がいいのに,なぜパールハーバーを奇襲攻撃したのですか?」とか,「芸者に旦那は何人いるのですか?」等々,いつも答えるのに困りました。

 そこで,質問をされるよりも,私のほうから質問しようと変えました。ナポリは車の運転マナーが悪いと言われていまして,「ナポリでシートベルトをプリントしたTシャツを売っているのは本当ですか?」と聞いたり,「メディチ家の方はいらっしゃるんですか?」と聞きましたら,「ロータリーに一人いる。法律家だよ」ということでした。

 私はロータリーの奨学生という非常にいい友達を得ました。ほかの国に渡った他分野の研究者,またイタリアで知り合った優秀な日本や外国人奨学生たちです。小さい国から来ている奨学生の方は本当に優秀でした。また,東京大学で建築を勉強している日本の方は「イタリアで教授になりたい」と,1年分の奨学金を節約して3年間勉強しているということでした。イタリア建築について教えてくれました。ある文学研究者はギリシャ文学について,美学の研究者は町の美術館の見方を教えてくれました。音楽の勉強では声学のレッスンを受けましたし,50回近くコンサートにも行きました。講演の定期券を買っている人が多く,何度も通ううちに座席近くの人と顔見知りになって一緒に食事して,その日の公演について話したりしました。

学んだ「奉仕の喜び」

 ロータリーならではと思ったのは,アメリカから盲目の学者が犬と一緒に留学していました。目が見えてもバスに乗るのも一苦労でしたので,どうして彼女は1年も2年も留学生活を送れるのかと思いましたが,ロータリアンのサポートがあるからこそと非常に感心しました。留学を通じて,ロータリアンの方たち,同期の奨学生からの惜しみないやさしさをいただき,「人に何かをしてあげる喜び」を勉強したんだなと思っています。