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2005年7月8日(金)第4,076回 例会

音楽と私 ~最近思うこと~

朝 比 奈  千 足 君(音楽)

会 員 朝 比 奈  千 足 (音楽)

1943年生まれ慶応義塾大学法学部卒業。 1966年西独ブレーメン市立音楽院に留学。 '68年ベルリン音楽大学に入学。'70年からクラリネットの独奏者として巾広く演奏活動を展開し,'78年指揮者デビュー。 帰国後主要なオーケストラを指揮すると共に, 海外各国への演奏旅行を続ける。現在, 神戸フィルハーモニック音楽監督兼常任指揮者。京都市立芸術大学音楽部非常勤講師。
1973年6月22日当クラブ入会。

 江崎会長の年になり,卓話の第1番バッターということで大変光栄に存じます。私は30歳のときに入会しました。独身でした。それから32年間,お世話になっております。音楽家という職業柄,正規のロータリーの活動はほとんどしていないのに,こんな私をずっと許してくださっている皆さんの心優しさに改めて感謝します。私の留学先はドイツでした。指揮者になってからも主にドイツを中心として仕事をしてきましたので,ドイツの話をしたいと思います。

南ドイツは関西人気質

 日本では,今年の4月から来年の3月末まで「ドイツ年」です。ドイツの文化,先端技術,ファッションなどを日本で1年かけて紹介するイベントです。たくさんの展覧会やコンサート,お芝居などの行事があります。音楽の分野でもドイツのいろいろな町のオーケストラやオペラ団が日本中を公演して回ります。

 ドイツの本当の姿は地味で,堅実で,かつ非常に頑固なものです。北部のドイツと南部のドイツ,あるいは昔の東ドイツ,それからライン河流域の工業地帯にあるウェストファーレンという地域,黒い森といわれているシュバルツバルツを中心とする南西ドイツ…などそれぞれ色合いが違います。

 南西ドイツの人は一番田舎者だと言われているようですが,ワインが一番おいしくて,最もドイツ人らしい生活をしています。性格では北と南で大きな差があります。ベルリンを中心とするプロイセンという北の地域の人と,南ドイツのミュンヘンを中心とするバイエルンの人を比べると,少し人種や言葉が違います。北の人は非常に律儀で,正義感があり,強い性格です。南は文化や食べ物も豊かで非常におっとりしていて,関西人,大阪人の気質に通じるものがあります。

 レストランのテーブルに一人ずつお客が座っていたときに,北の人は「ああ,満席だ」と諦めますが,南ドイツの人は「まだ空いている」と思い,相席で座ります。北はちょっと人見知りで,閉鎖的,そのテーブルに座ったらテーブルは自分のものという気持ちがあるようです。

 ドイツ料理ですが,「よくおいしくないでしょう」と聞かれます。でもジャガイモは日本よりはるかにおいしい。ソーセージやハムやチーズの種類はたくさんあって,パンの種類もそれこそ一生かかっても食べられないぐらい豊富です。料理というよりも材料,あるいは保存食としてドイツの料理はおいしい。基本的には北方の国ですから食料は貧しい国だった。保存技術がたけているので,ソーセージとかハム,それからジャガイモでつくる料理というものが非常においしいのです。

どこの町にもオペラハウス

 音楽の話に入りましょう。ドイツでは人口40万から50万人ぐらいの町には必ず立派なオペラハウスがあります。それとは別に,コンサートホールがあるところもあります。コンサートの開始時間は平日夜の8時から大体10時ごろまでです。終わると会場の前にバスが待っていて,各方面にアクセスしています。帰りの心配をすることがまずない。

 終わってから食事をする場合もあります。必ず劇場やオペラハウスの周りはにぎやかな繁華街になっていて,演奏会が済んだら真夜中の1時,2時ごろまでは飲んでいるという世界があって,楽しいわけです。普段から音楽のある生活をしている。オペラハウスにも夫婦同伴で行くことが多いわけです。

 日本でのことですが,先週シンフォニーホールで,乳幼児を連れてコンサートホールへお越しくださいという企画がありました。演奏はドイツのボンから来た優秀なオーケストラでした。ニュースで見たのですが,お母さん方は喜んでいましたものの,子どもたちは薄暗いところでなんか知らないけれど音が鳴っている,ワァワァ泣き出す。お母さんは子どもを抱いて保育室へ連れていく,そういう意味で大騒ぎでした。

 企画としては素晴らしいのですが,まだ改善の余地があるようです。

 私も演奏会でいろいろな工夫をしています。指揮者なのでいつも演奏者にばかり顔を向けて仕事をしていると思われがちですが,皆さんを向いてしゃべることもあります。コンサートが始まる前に私が出て,これから演奏する曲の内容,あるいは聞きどころなどを5分ぐらい,お話します。

ロミオとジュリエット

 プロコフィエフという作曲家が書きましたシェイクスピアの戯曲で「ロミオとジュリエット」というお芝居がありますが,そのお芝居をバレエに直して作曲をした曲があります。その曲をバレエもなしで演奏をすると何のことかわかりませんので,少しナレーションをつけて聞いていただく工夫をしました。ちょっとその音を聞いて下さい。

 ナレーションは,毎日放送アナウンサーの古川圭子さんです

――ナレーションに続き「ロミオとジュリエット」の演奏♪――

 これは6月26日に神戸で開いた神戸フィルハーモニックの第50回目の定期演奏会の模様です。物語の様子や景色を想像してもらいながら演奏を聴いていただきました。この日は日曜日の午後4時から始めました。ゴルフのお帰りでも間に合います。終わっても6時台,その後,宴会でもどこでも行けます。これもロータリーで知った技です(笑)。

 今後とも私たちの演奏活動へのご支援をお願いして,話を終わりたいと思います。