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2005年3月18日(金)第4,062回 例会

アニメ映画監督体験記

西 澤  昭 男 氏

(株)ワオ・コーポレーション
代表取締役社長
西 澤  昭 男

1942年東京生まれ。京都大学文学部美学美術史学科卒業。'76年大阪でワオ・コーポレーションを設立。教育事業を全28都道府県にて展開。 '03年劇場用アニメーション映画第一作「NITABOH 仁太坊~津軽三味線始祖外聞」の脚本執筆と監督を務める。 '05年アニメ映画第二作「ふるさと-JAPAN」を製作中。 東京杉並区の教育特区にてアニメ専門の大学院大学を設立申請。

 今日はアニメ「NITABOH 仁太坊-津軽三味線始祖外聞」を見ていただきます。主人公は仁太坊という実在の人物で,140年ほど前,青森県の片田舎で生まれて,眼が全然見えなくなって,お父さんもお母さんもいないという境遇の中で,生きていくために,三味線を弾くのではなくて「叩き打法」といいますが,三味線を叩くように始めた。それが今に伝わる津軽三味線です。

全国でキャラバン上映

 非常に厳しい条件の中でも,目標を持ってしっかり努力していく,それをまた助けるいろんな友達が周りにいるという,かなり私なりのフィクションを入れております。われわれ教育産業というか教育の仕事をやっておりますので,子どもたちにぜひ見てもらいたいし,できればご家族で,またおじいちゃん,おばあちゃんとお孫さんが見ていただけるような,かなり実写に近い形でつくっております。

 昨年2月に東京の銀座シネパトスでロードショーを2週間やりまして,その後は140カ所ぐらいで全国的にキャラバン上映をやっていっています。きょうも後ろにありますが,いわゆるデジタルプロジェクター,デジタルハイビジョンという簡単なもので全部映せる,昔のように映写機が要らないんです。ああいう装置を全国さまざまな所に持っていきます。今5~6万ぐらいの子どもとお父さん,お母さん,あるいはおじいちゃん,おばあちゃんに見ていただいています。

 まずちょっとだけ見ていただいて,また話を続けたいと思います。

(アニメ上映)

 全体が100分という長編でございまして,今8分ぐらい,とびとびに見ていただいたんで分かりにくかったかと思います。最後の三味線の場面は,仁太坊と田原坊との対決シーンですが,手の動きをできるだけきちっと音と合わせようということで,これは大変な作業だったようです。私は監督ですから「やれ」と言うだけでよかったんですが,アニメーターのほうは何人もかかってやっているんです。もう二度と三味線とかこういう音楽のものはやりたくないと音を上げたそうです。

塾という教育現場で

 なぜわれわれがアニメをやるのか。私,来年で学習塾,自分が教えてちょうど30年になります。全国でちょうど250の直営校があって,通っている子どもは3万5,000名です。ここ30年を10年ごとに区切ってみますと,最近の10年は学力低下が盛んに言われ,この学力低下問題というのは,恐らく皆様の想像以上に進んでいると思っていただいたほうがいい。

 先ほども仁太坊の例で言いましたが,目標に向かって努力するとか,そういう気持ちが今の日本の子どもたちには非常に希薄になっております。目標というものがはっきりしないし,努力ということが悪いことのように思っている人も随分いる。

 そういう子どもをどうするか。ゲームとか携帯とかは,子どもたちは喜んでやるわけです。同じように漫画とかアニメというのも結構入りやすいのかなと思って,アニメの形で何か私どもが訴えたいことをつくってみたらどうかなということが,第一のきっかけだったわけです。

 われわれは民間でやっておりますので,教育内容をどうするかと同時に,事業体としても頑張っていかなくてはいけない面があります。宮崎アニメの影響が圧倒的に多いんですが,世界的にも随分注目をされてきております。そういった意味ではアニメ自体を,子どもたちのためにもなり,同時に私どもの事業の一環としても,ぜひもっともっと広めていきたい。できれば世界にも広めていけないかなと考えております。

阿佐谷にアニメ大学院

 そういう中で,アニメの業界に入ってみますと,日本のアニメの人材は非常に脆弱です。間もなく韓国に抜かれると思います。それから中国もものすごい勢いで日本を追いかけています。原画というのがあって,それを動画という動くほうに移すんですが,その仕事を全部韓国とか中国へ出していたために,結果的に日本は空洞化になって育っていく人がいなくなってしまったんです。今、日本には本当に力のある原画マンは100人ぐらいしかいません。

 東京の杉並区には60社ほどアニメの会社があり,杉並の山田区長の方針としてアニメの街にしたいということです。私どもは今回,杉並区の阿佐谷に6階建てビルを借りて大学院大学をつくるんですが,そこで人材育成をしたい。監督とか演出ができる人と,それからいろいろな分野で少なくなっているプロデューサーの本格的な養成をしていきたいというふうに思っています。

 できれば子どもたちに,もっともっと,アニメを見ていただける機会をつくりたい。また実際に学校なんかでも見ていただいているんですが,私どもへ直接メールが来たりして,「津軽三味線なんか最初は全然おもしろくないと思ったけど,三味線の音がすごかった」とか,「仁太坊の生き方に感動した」とか,思わぬところでメールがどんどん届いております。われわれもやっていくことに意を強くして,この後まだ,さらに頑張っていきたいと思っているわけです。