1939年生まれ。'64年3月慶応義塾大学法学部卒業。 同年4月(株)大丸入社。
'87年4月同社本社営業企画部長。'91年9月(株)大丸オーストラリア代表取締役。 '95年5月(株)大丸取締役, 本社営業戦略室長事務管掌。
'96年5月常務取締役, '97年3月社長。 '03年5月取締役会長兼最高経営責任者, 現在に至る。
当クラブ入会 : '98年7月。 PH準フェロー, 準米山功労者。(百貨店)。
きょうは,店頭から見た本年の消費動向についてお話をしたいと思います。1つ目は「ドレスアップ・カジュアル」,2つ目が「おしゃれなオヤジ」,3つ目が「高額消費」,この3つのキーワードでお話します。
まず,ドレスアップ・カジュアルです。ライフスタイルのカジュアル化がどんどん進んでいます。それに加え上流階級とか著名人に憧れる「セレブ志向」というのが若い方を中心に出てきております。カジュアル・ファッションを代表するジーンズと,ドレスアップ・アイテムである非常に高価な高級ブランドの上着,こういった2つをうまく着こなす。従来の普段着感覚のカジュアルではない,非常におしゃれでゴージャスなカジュアル・ファッションが大いにはやったわけであります。
特に,ジーンズですが男女用とも大ヒットをいたしました。今はやっていますジーンズは非常に軽い素材を使っておりまして,はき心地がいい。膝の部分を細くして足を細くきれいに見せるという美脚効果,こういったものでファッション効果を非常に高めております。高いものだと17万円で,一番高いのが21万3,000円です。このようなものが非常によく動いています。
若い人の間で使い古して穴の開いたジーンズというのが非常におしゃれな上着と組み合わされて着られております。ブランドによっては5~6万円するんですが,今世界を席捲しているドルチェ&ガッバーナーというイタリアのブランドで6万3,000円です。着古し感を出すために,サンドペーパーとか軽石でこすったりします。織り糸を1本1本切って穴を開けます。そういったことが手作業で行われており,この手間とおしゃれ感が付加価値になっています。
次は「おしゃれなオヤジ」についてです。「レオン」という雑誌をご存じですか。中高年向けの男性ファッション雑誌です。キャッチフレーズは「モテるオヤジ」「ちょい不良(ワル)オヤジ」。これがものすごくヒットしまして,販売部数が7万4,000部。このような雑誌が支持されているということは,オシャレに関心を持つ中高年が増えてきているということです。彼らのニーズで一番大きかったのが「美脚パンツ」。美脚パンツの効果をより一層高めるということで,ヒップアップ機能のあるお尻を美しく見せるブリーフ,これも注目されています。
3つ目のキーワードは「高額商品」。景気は回復してきているんですが,なかなか賃金は上がりません。このような中で所得格差が出てきております。「貧富の差」がだんだん大きくなってきている感じがします。これに伴い商品でも二極化が強く出てきています。まず低価格志向というところでは,「ユニクロ」というチェーンストアー。一方,私どもはその対極にあります。私どもの百貨店では驚くほどの高額商品が売れ出してきています。例えば高級絵画。東山魁夷さんや加山又造さんら巨匠の作品に人気が集まっています。1,000万円から1億円ぐらいの絵画が,前年に比べると3倍ぐらい売れています。また,この10月に大丸全社で外商の上得意のお客様300名をご招待し,チャーター機で北海道の超高級ホテルで催しを開きました。売れたのは,美術,宝飾,特選食器,スーパーブランド。2日間で25億円。前年に対して約40%の増です。3,000万円のカルチェのダイヤ入り腕時計が1つ。日本に2セットしかないと言われておりますロレックスの1,920万円のペアウォッチ,これも売れました。
例年恒例になりましたファッショントレンドを紹介します。第1番目は,ドレスアップ・カジュアルです。気温があまり下がらない中でも,毛皮のジャケットが非常に売れています。華やかでリッチな雰囲気の毛皮に,先ほど申し上げました人気のプレミアム・ジーンズをはいています。2番目は冬ソナ風の紳士用のきれいカジュアルファッション。話題の美脚パンツ,それにヒット商品の「洗えるカシミアセーター」。さらに暖かくて軽いシルク素材のコート,仕上げはご注目のヨン様巻きです。3番目は「ちょい不良オヤジ」のファッションです。プレミアム・ジーンズに,エレガントなベルベットのジャケットを組み合わせています。非常に清潔なイメージの白いシャツがあって,胸元からペンダントがチラリと出ている。これぐらいキザにいかないと「ちょい不良オヤジ」のイメージにはならないそうです。勇気のある方は,クリスマスはこの「モテ服」で挑戦をしていただければと思います。