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2004年10月29日(金)第4,044回 例会

どうなる阪神 どうなるプロ野球

浜 田    昭 八 氏

スポーツライター 浜 田    昭 八

1933年大阪市生まれ。関西学院大学卒業後,デイリースポーツ社を経て,'60年日本経済新聞社運動部でプロ野球を担当。 '97年から現職。著書に「いつの日か江川監督」,「監督たちの戦い」,「ベンチ裏の人間学」,「球界を変えた男・根本陸夫」など多数。

 本題に入る前に,日本シリーズを取材した印象をちょっと申し上げたいと思います。名古屋は大変沸いていましたが,西武ドームでは台風が来ていた関係で,三塁側がすいておりました。こんなにすいたシリーズは何年ぶりかという感じで,テレビの視聴率も非常に低かったと聞いています。やはり野球人気が下がっているのかなと心配になりました。

 西武はレギュラーシーズンでダイエーに次いで勝率2位のチームでした。それがプレーオフで勝ち上がって日本一になるというドラマ性は十分にありましたが,このシステムの不合理な点などを考え直してもいいのではないかと思います。パ・リーグのプレーオフが非常に盛り上がって,セ・リーグもやろうという話が出ておりますけど,今年が盛り上がったからといって,すぐそれに飛びつくというのもいかがなものでしょうか。

感じられた気の緩み

 さて,「どうなる阪神」の前に「どうしてこうなった阪神」ということに触れなければならないと思います。今年の沖縄・宜野座キャンプで「あれ,ちょっと星野監督時代と空気が違うぞ」というのを感じました。ベテランが楽をしているのではないか,ということです。似ているなと思ったのは,西武が広岡監督で4年,森監督で9年やって,その後に東尾監督になったときの春のキャンプの空気です。ものすごく厳しい監督の後で,よく言えば自由放任,悪く言えばうまく管理できない人が監督になると,どうしても選手の気が緩みます。何となくそういう小さな積み重ねが,シーズンが深まってくるにつれて,いろいろと出てくると思うのです。

 ちょうど宜野座キャンプに行っているときに,伊良部の門限破り事件がありました。門限を過ぎて宿舎へ帰ってきただけでなく,飲みに行った先で土地の人とけんかして警察が出てくるというもめごとでした。一事が万事,そういうことがちょいちょいあって,空気が緩んでいたという面があります。

 星野さんと岡田さんとでは,卑近な言葉で言いますと貫録が違います。星野さんのひと言ひと言に経験を積んだ重みがある。岡田監督は1年生監督で,言うことすることに重みが違うようで,それがたるみとなって出てくる。

 構想に狂いもありました。アマの野手ナンバーワンの鳥谷を早大からとりましたが,ショートには藤本という打率3割を打ったれっきとしたレギュラーがいた。球団もファンも,話題性のある鳥谷を見たいとなるので,鳥谷でスタートしようとしたけど,これがうまくいかなかった。それから3番にキンケードを当て込んでいましたが,公式戦になると遠慮なしに内角を攻められ,デッドボールをものすごく受けて,とうとう骨折して使えないというような状態になったわけです。

 投手にもいろいろ誤算がありまして,伊良部は0勝2敗で終わりました。下柳もオールスター戦までは6勝1敗と大活躍でしたが,オールスター戦後は1勝4敗と負け越しました。井川は14勝11敗でしたが,エースが3つの勝ち越しだけというのはちょっと寂しい話です。来年はきっと持ち直してくれると思います。近鉄からとった左腕の前川は伊良部と同じ0勝2敗でした。

来年の阪神は

 では「来年の阪神はどうなるか」。二塁の今岡は,守備の負担が少ない三塁に回ったほうがいいと思います。外国人選手では右の大砲が欲しいというので,横浜のウッズ獲得がうわさされています。ウッズは非常にプラスになると思いますが,若手を育てずに,よそで活躍した選手を持ってくるというのは巨人方式ではないか。同じことを阪神はしてはならないのではないかと思います。

 しかし監督の立場からしますと,すぐ結果を求められる。1年目4位,2年目の出だしも悪いとなると,「六甲おろし」ならぬ「監督おろし」の声がごうごうと起こり始めます。それを防ぐために,どうしても既成の選手を使って,リスクの大きい若手を育てる辛抱に欠けるところがあるのですけど,ファンも球団も,もう少しおおらかな目で見てやってほしいと思います。

どうなるプロ野球

 新規参入球団は楽天になるはずです。仙台はどうやら楽天を受け入れる構えをしている。東京の動きも楽天であるというようなことです。今まで見向きもされなかったパ・リーグに入る,入ると手を挙げる会社がいろいろ出てきました。経営者は全然もうからない商売に参入するということはないと思うのです。近い将来に,やはり連綿として10球団ないしは8球団で1リーグになるという見通しがあるのではないか。そのために,どんどん体力のないところを振り落としたり,合併したりという動きが,これからもますます続いて,先行きがまだ透明ではない。

 選手の給料が上がり過ぎたということで,それを下げようという動きも顕著に起こりつつあります。選手の年俸は確かにものすごく上がり過ぎている。ある程度の体面と体力を保つ最低限の給料は保証しても,あとの給料は出来高払いにすべきではないかと思って何度か提案してきましたが,これはなかなか受け入れられないことで,それをやると選手会がまず大反対すると思います。「どうなるプロ野球」と言うより,「何とかしろ」と言ってやりたい気持ちでいます。出来高払いにするように,ということなどをいろいろ,これからも声高に叫んでいきたいと思っております。