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2004年10月15日(金)第4,042回 例会

交流史から見た日韓関係

尹 英 和 氏

米山奨学生 尹 英 和

1971年韓国大邱市生まれ。 '74年啓明大学日語日文学科卒業,学士号取得。
'98年同校修士課程を中退し桃山学院大学に交換留学。'99年から大阪大学文学研究科研究生として学び,以降,同校文化表現論日本語学科博士課程に進学,現在在籍中。
2003年4月から当クラブ米山奨学生。

 私は,韓国の大邱市の出身です。青森と同様,美人とリンゴで有名です。今日は「交流史から見た日韓関係」というタイトルで話しますが,私はこの分野の専門家ではありません。でも恥をかかないようにインターネットや本を通して調べてきました。

中国から日韓に漢字

 日本と韓国は長い間,交流してきました。最近言われる国際化の時代というのは,交流,協力の時代ということです。協力という言葉で浮かぶ日韓共同の大イベントは2年前にあったワールドカップです。それは大成功でした。それを見て,本当に韓国人であってよかったと思いました。こういう交流は,2年前に初めてあったわけではありません。1500年前までさかのぼるのではないかと思います。その観点で第1に申し上げたいことは,漢字と千字文の伝来です。漢字は4世紀から5世紀の間,韓国の百済から王仁(ワニ,またはオニと言う人もいる)博士という方が来られて,漢字,千字文,儒教を教えて,日本に漢字が広がりました。

 ひらがなやカタカナは,漢字が伝わり,その一部を取ってカタカナができて,少し後に,ひらがなが出来上がりました。このように中国を通して韓国や日本に漢字が伝わりました。ただ,韓国では最近あんまり漢字が使われないようになりました。私は漢字を使ったほうがいいと思います。というのは,意味の伝達や意思疎通が円滑にいくからです。

キムチに日本も貢献

 一番好きな漢字は「叶う」です。「口」に「十」という字を書いて「かなう」と読みます。「のどから手が出るほど欲しいもの,なりたいことがあれば,口で10回以上話しなさい。そうしたら叶います」ということだと思います。10回以上話すということは,努力しなさいということだと思うのですが,そういう事実を文字で伝えられるから,漢字が大好きです。

 「明日」という字も好きです。「明るい日」で「あした」と読むんですが,韓国ではこういう「明日」という漢字は使いません。「日が落ちて,月が出て,また日が出れば明日になる」。そういう事実をそのまま使われているから,「明日」という漢字が私は大好きです。漢字が伝わってきて日本語の文字ができる。こういう交流,お互いの助けがあったから今の日本語の文字が出来上がっていると思います。

 話は変わりますが,次はキムチの話です。キムチは世界中の食べ物になっていると思います。元は日本の漬け物みたいなものでした。塩に漬けて長持ちをするようにして,野菜がなくなった冬にも食べるようにしたんですが,今のようなキムチの形になったのは,16世紀に日本から唐がらしが伝わってきてからです。もし,日本から唐がらしが伝わってこなかったら,ただの漬け物でした。唐がらしが伝わってきて,今のキムチになったという事実を考えると,やっぱり交流というのは大事です。

日本と韓国は相互に影響

 キムチは韓国の三国時代という時代からその根拠を見ることができます。高句麗,新羅,百済というのが韓国の三国時代になります。この中で,「百済」という字だけは読み方が推測できません。韓国から日本に物や人が到来するときには百済から来たそうです。その影響があって「百済」というのを日本では韓国語の「クン(大きい)ナラ(国)」と言って,それがなまって「くだら」と読むようになったと伝わっています。

 さらに例を挙げると「奈良」です。韓国語ではナラは「国」という意味で,発音も全く同じです。それが日本語に伝わって日本語では「奈良」という地名が出来上がっています。また,「はっとり」というところがあります。「服」の「部」と書きます。昔,服部という地域は,機織りの職人,服をつくる職人がたくさん集まって住んでいたそうです。その服をつくる職人というのは朝鮮半島の主に百済から来た人で,その機織りの職人が住んでいるところを漢字では「服部」と書いて,今の現在の日本語としては「はたおり」から「はっとり」という発音になりました。

 漢字もそうですが,キムチもそうで,このように日本も韓国もお互い影響を与えながら共存してきました。また,これからはこういう交流というのが,ヨン様のお陰もあるし,かなり劇的に発展していく時代だと思います。日本では韓国の料理,映画,音楽がはやっており,韓国語もブームです。これは今だけのブーム,交流ではなくて,歴史的には随分昔からこういう交流があって,今また劇的に昔のように交流する時代なのではないかと思います。

 交流では言葉を媒介にして物を交換したり,人が行ったりきたりしますが,言葉は交流においては大事なものだと思います。言葉を考えると,文字を媒介にする書き言葉と,音声を媒介にする話し言葉があります。私の専門は,主に音声を媒介にする話し言葉が中心です。話し言葉というときには3つの観点を考える必要がありますが,しゃべる人,またそれを聞く相手,また,私から聞く相手まで空気を伝わっていくそういう物理的観点,こういう3つの観点を考える必要があります。私は話し手と聞き手の間に空気を通して伝わっていく,そういう物理的な側面を中心にして勉強しています。言葉の音声を中心にして勉強して,それを将来,教育の方面で応用するというのが私の目標です。