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2004年3月26日(金)第4,017回 例会

プロ野球新時代-童心に返って

佐々木 修 氏

朝日放送 野球解説者
佐々木 修

1962年広島県生まれ。85年近畿大学呉工学部卒業。85年近鉄バファローズ入団,投手として10年間在籍。通算成績36勝38敗2セーブ。95年朝日放送野球解説者。レギュラー番組 : 「おはよう朝日です」

 プロ野球にはセ・パ12球団ありますが,1チーム70人以内という枠があります。毎年ドラフトで5~6人の新人,トレードや新外国人を加え10人前後が入れ替わります。

 70人のうち,投手は新陳代謝が激しいので1ポジションで35人,野手は8ポジションで35人です。そして一軍のベンチに入るのは28人です。内訳は投手が10~12人で,あとは野手ということになります。

ダイエー,阪神…そして伏兵・五輪

 今季のパ・リーグは混戦でしょう。ただ実力は2003年日本一のダイエーが投打のバランスが抜群。投手で言えば20勝投手斎藤,和田,杉内,新垣,寺原,スーパールーキー馬原と豊富。打線は城島,井口,バルデス,松中の100打点カルテット。小久保が巨人に行ってもこうですからすごい打線です。

 近鉄は,ローズが抜け,中村紀が去年オフに半月板手術。投手もいません。西武は松井稼がメッツへ,カブレラが骨折,そして7月下旬にアテネ五輪の全日本メンバーが招集されれば松坂投手はまず間違いない。台湾を代表する投手の張誌家,許銘傑が台湾代表として抜け,豊田投手か打者で和田が1か月抜けるとなるとかなり厳しいでしょう。しかしセ・リーグと違い135試合して今年は1~3位がプレーオフをします。つまり3位が優勝することもあるということです。こういう盛り上げ方をしなければならないのがパ・リーグの現実です。大阪ドームは横になって見られます。パ・リーグを注目してください。

 さてセ・リーグは,巨人の優勝と思っていました。ダイエーから小久保,近鉄からローズを取り,仁志,清水,清原,ペタジーニ,高橋……超豪華メンバー。ただ,だからといって勝てるとは限らないのが勝負事。皆さん会社のリーダーなのでお分かりでしょうが,これだけの顔ぶれだと,誰がまとめ,舵を取るのか分からなくなるのではないかと,巨人優勝に疑問を感じ始めています。弱い投手力で,上原を五輪に抜かれると優勝は厳しい。阪神連覇の確率が高くなります。しかし誰が五輪に行くのか気になります。恐らくウィリアムスはオーストラリア代表で出るでしょう。

 五輪のことでは長嶋監督の容体が心配です。誰が指揮してもメダルが取れるメンバーですが,日本のベストメンバーですから,国民はふさわしい人でないと納得しないでしょう。

勝ち残る人,去っていく人

 ところで,キャンプを見て,さく越え何発打ったとか言いますが,しょせん練習です。好不調の波は1か月半~2か月でやってくるので,キャンプで絶好調なら開幕は絶不調ということがあります。阪神の金本のようにここへきてやっと調子を上げてきたというのが理想です。しかし若手選手が試合に出してもらうにはコーチ,そして監督に認められなければならない。そのためにはキャンプで頑張らないといけないのです。若手は常に好調でなければならないという厳しさがあります。

 プロ野球選手は狭き門で,全国でその年の120ないし100人未満に入る必要があります。そして夢をかなえ,ゴールを切ったと思う人はそこで終わってしまいます。本当はやっとスタート地点に立ったと考える人が勝ち残っていくのです。全国選りすぐりの人が毎年入り,10年,20年と九つしかないレギュラーを守っている人もいる。それを若手が追いかけていくのですから,入ってからのほうがはるかに難しいと言えるのです。例えばドラフト1位で入団して,お金があり人気がある。飲みに行くとちやほやされ毎日行く。翌日フラフラでバットも振れない。単純で理想的な男の崩れ方です。中に,明日に影響するのでやめるという意志の固い人がいて残っていくわけです。清原のように遊んで活躍する人はまれです。これは褒めているのです。

 さて野球を楽しむのに投手の癖を教えましょう。振りかぶったとき袖口からのぞく手首がまっすぐ見えれば直球。ひねっていればカーブです。ただしこれをプロでやっていてはプロじゃありません。高校野球なら3イニング見れば100%わかります。セットポジションで手首が外からセットに入るとカーブ。内側なら直球です。野球観戦のだいご味は勝ち負けです。でもそれだけではないはずです。阪神だって去年は優勝したが,それまで何年も最下位だったじゃないですか。皆さんが子供のころなぜ野球が好きになりあこがれたのか。単純に速い球を投げ,遠くへ打つ。それが楽しかったころのイメージで,広い気持ちで2004年プロ野球を見ていただきたい。これからの僕の人生のテーマでもあります。

野茂投手,それは「人生の指針」

  私が引退した1995年に野茂投手が電撃的に近鉄からドジャースに行きました。プロ野球界のルールを破ったと非国民扱いでした。近鉄での年俸は2億円で当時としては破格の額だったが,ドジャースでは600万円。結婚もしていたし子供もいました。私たちは必死で止めました。お前はアホか! 野茂は「佐々木さん,なんでプロになったんですか?」と言いました。「すごい打者と対戦して自分が通用するかやってみたかったんでしょ? 僕はそれを追求してるだけです。何を言ってるんですか!」。めちゃくちゃ怒られました。彼はその年,オールスター先発,ノーヒットノーラン,新人王,CM,テレビ出演…10億円稼ぎました。妻子に申し訳ないという気持ちはあったでしょうが彼は童心を貫いたのです。7歳下ではありますが私の人生の指針になっていることは間違いありません。

 ともあれ2004年のプロ野球,セ・リーグだけでなく,大阪ドームで横になって観戦できるパ・リーグもよろしくお願いします。