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2004年2月13日(金)第4,011回 例会

大阪駅改良について

垣内 剛 君

会員 垣内 剛

1944年生れ。69年6月東京大学法学部卒業。7月日本国有鉄道入社,99年常務執行役員東京本部長,00年常務取締役, 01年代表取締役副社長兼執行役員東京本部長,03年代表取締役社長。 当クラブ入会 : 03年9月 PH準フェロー,準米山功労者。(鉄道運輸業)

 1日に80万人が利用される西日本最大のターミナル大阪駅は,明治7年,大阪―神戸間の開通と同時に誕生しました。明治34年の複線化に合わせて2代目が,昭和15年の高架化で3代目の駅舎が開業しました。そして昭和54年に4代目となる現在の北ビルが,4年後にアクティ大阪(大阪ターミナルビル)が完成し,現在に至っています。

新しい都市環境の創造を

 ただ,今のような駅構造となったのは,30年余り前の大阪万博の年で,当時と比べると輸送の形態も大きく変わっています。その大阪駅を北ヤードの整備に合わせ長期的な視点に立って,ホームや改札を含め,大阪の玄関口にふさわしい駅に整備すべく検討してきました。大阪市など関係機関との調整も含め基本的な計画がまとまり,昨年12月,「大阪駅改良・新北ビル開発計画」を発表しました。  今回の計画策定で大きなポイントとなったのは,梅田北ヤード整備計画との関係です。同整備は長らく停滞していましたが,近年,大阪駅地区都市再生懇談会が開催されるなど街づくりへの機運が盛り上がってきました。昨年10月には大阪市から24ヘクタールの梅田北ヤードを対象とする「大阪駅北地区全体構想」が発表され,都心に残された最後の一等地というべき北地区の街づくりの考え方や整備方針が示されました。この構想では,世界レベルの都市環境の創造,新しい産業など価値の創造,水と緑の都の創生などを目標にしています。また,街の骨格として東西・南北の幹線道路を整備することになっています。大阪駅北側には駅前広場を確保し北地区全体のシンボルとし,歩行者ネットワークを重視する考えが盛り込まれ,当社の大阪駅改良計画ではこの構想を十分踏まえています。  この北地区全体構想の街づくり上の制約になっているのが貨物設備の移転問題です。これらの土地を保有している鉄道運輸機構の計画では半分を吹田に,残りも最近,百済の貨物駅が正式な移転候補地になり,今後進んでいくものと期待しています。そのためにも全体開発への弾みとなる先行開発をいかに早く立ち上げるかが鍵になると思います。鉄道運輸機構が旧国鉄の債務返済の原資となるこの土地の売却方法をどうするかなど大きな課題もあります。関経連の秋山会長の提唱により,土地が切り売りされることなく,一体的な開発がなされるよう,保有方法などのスキームについて官民からなる勉強会が開催されております。いずれにしても当社の計画が起爆剤となり,全体の整備促進につながればと考えています。

賑わいの拠点づくりで活性化

 大阪駅改良計画の基本には,この駅が関西のネットワークづくりや今後の大阪,関西の都市再生への足がかりとして期待されていることを考えねばなりません。梅田地区の旧市街地と北地区をつなぐ重要な位置にあることも踏まえ,駅整備と街づくりの視点に立ち,(1)抜本的な駅改良(2)通路・広場の整備(3)新北ビルの開発――を柱として進めます。  (1)については,南北の通路整備に合わせ,線路上空に橋上駅舎を新設し,各線の乗り換え利便性の向上と混雑緩和を図るとともに,北地区への円滑なアクセスルートを整備します。現在混雑が激しい御堂筋口の中2階通路を撤去しフラット化するなど,改札内コンコースの改良を進め,改札内のエスカレーターを21台から76台に,エレベーターを5台から13台に増やすなど,大幅にバリアフリー化します。ホームの上空に壮大なドーム(延長160メートル,幅105メートル,高さ25~ 50メートル)を新設し,アクティ大阪,新北ビルなどとのダイナミックな一体感を演出するなど,快適で魅力的な駅空間づくりを目指します。ホームからも,列車を降りた瞬間からシンボリックで感動的な空間を体感して頂けると思います。

北地区のリーディングプロジェクトに

 (2)では,駅周辺の回遊性を高めるため,新北ビルの1,2階に駅前広場とつながる広場を整備します。これらから北地区,阪急や地下鉄の梅田駅につながる歩行者用連絡通路を設けます。2階広場には北地区に向けたランドマークになるようなアトリウム空間も備えます。駅南の地下通路からアクティ大阪の3階を経由し北地区につながるルートを確保し,駅の南北一体化を図ります。橋上駅舎の屋上を利用した屋上プラザを設け,ドーム内を見渡せる開放的な広場空間にします。  (3)に関しては,線路の使用形態を見直し,現行の10,11番線を廃止・撤去します。これによって土地の高度利用を図り,新北ビルの1,2階広場の上空を重層的に利用するなど,駅と駅前広場を一体化するこれまでにないビルを考えています。ここには,キーテナントの三越百貨店をはじめ,専門店やシネマコンプレックスなどの集客施設,オフィスが入る予定です。高層棟(28階)と低層棟(11階)合わせて延べ床面積は20万平方メートルを予定しています。  総事費として,JR西日本グループ全体で約1500億円を予定しています。この春には,駅改良工事に着手し,全体のグランドオープンは平成23年春を目指しています。少し年数がかかりますが,現在の列車を動かしながら,また多数の乗客にご利用頂きながらの工事になるためです。  設計もこれからですが,これらの計画の実現に当たっては大阪市側との調整を含め具体的な取り組みを進めていきたいと思います。これらの計画が北地区全体のリーディングプロジェクトとなり,開発の機運がさらに盛り上がることを期待し,関西の活性化にお役に立てればと考えています。