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2004年1月16日(金)第4,007回 例会

ロータリー理解推進月間に因んで

戸田 孝  氏

国際ロータリー第2660地区パストガバナー 戸田 孝  

1926年生れ。 50年大阪大学工学部卒業。 (株)トヤマビル社長。 戸田奨学会会長。 62年八尾ロータリークラブ入会。 82年RI第2660地区ガバナー。 86~87年国際協議会グループ・リーダー。 89年ソウル国際大会副S.A.Aなど。(ビル経営)

 心にとどめねばならない話から。1923年,関東大震災の際,世界の約千のロータリークラブのうち,503のクラブから8万9千ドルもの義援金が東京ロータリークラブへ送られてきました。今の金額に換算すると5千~1万倍にもなる。東京ロータリークラブはこの金で学校や孤児施設を建設するなどの奉仕を行いました。この義援金は,ロータリークラブが社会に認知される大きな機会となるとともに,ロータリアンの心に世界的な素晴らしい組織という思いを芽生えさせました。

利己と利他の調和を

 ロータリークラブ創立の精神とその背景を述べたい。宗教改革を行ったマルチン・ルターは,職業は神が人に与えた天職であり,よい物を安く提供することが隣人愛の実践であると説いたが,実はこれがロータリークラブの職業奉仕の源流にあります。また,マックス・ウェーバーは「利己と利他の調和」が資本主義の基本的精神と語り,ロータリークラブにはこうした精神的背景があります。

 ロータリークラブ創始者のポール・ハリスは1896年,シカゴで弁護士事務所を開きました。当時のシカゴは大変な不況でギャングが横行し,職業倫理は地に落ちていました。多忙で孤独な生活をしていましたが,ある時,友人たちとの交流の中で,職業が違う人同士は心を開いて語り合えることに気付きました。彼の脳裏にあるアイデアが浮かんだのです。

 「一つの職業から一人ずつを集めるクラブを作ってはどうか。政治や宗教を一切制約せず,寛容の心を持って各人の意見を尊重する。心が温まる素晴らしい会になるに違いない」

 1905年,彼はこのアイデアを3人の友人に披露して賛同を得て,二つの原則を決めました。(1)皆が親しくなるために,一つの職業から1人ずつ集める (2)ほしいものは会員にお願いし,安く提供し合う。この職業上の相互扶助がロータリークラブ創立の原点です。

砂漠都市のオアシス

 シカゴクラブの会員たちは職業上のわだかまりのない人同士だから,楽しく語り合い,おおいに笑い,経験したことのない喜びを感じました。「シカゴクラブは砂漠のような都市に生まれたオアシス」と記されています。

 ロータリークラブの理念と特性に触れます。一つ目は職業奉仕。これはロータリー独自のもので他の奉仕団体にない概念です。1908年にミシガン大経済学部卒の秀才,アーサー・F・シェルドンが入会後,混乱した経済状況の中でも,正しい考えを持って成功している商社の事例を研究,「成功の道はサービスにしかない」と結論付けました。

 「商売はもうけなければ,成立しない。経営者は利益をあげるのに真剣になるのは当然だが,利益はどうしたら得られるか。最も大切なことは,常にお客さんの身になって考え,サービスの心を取引に導入する。徐々に信頼関係が生まれる。この関係を長く続けるうちに信用が築かれる。事業の永続と繁栄はサービスによってもたらされる」と主張しました。これが職業奉仕の基本的な考えです。

 二番目はロータリーの綱領(The object of Rotary)。目的の推進のために最も重要なものです。「ロータリアンの携っている事業は社会に役立つ有益な事業である。事業の根底にサービスの理念を定着させ,力強く育て上げることである」と書かれています。ロータリークラブの基本的な目的です。

 次に,二つのモットー(標語)について。

1911年に開催された第2回全米ロータリークラブ連合会で,シェルドンの講演論文が発表されました。「職業においても人生においても,最も奉仕する者が最も多く報われる(He Profits Most Who Serves Best)」と説きました。また,ミネアポリスのクラブの会長が演壇に立ち「我々のクラブでは創立以来,守り通した原則がある。それは利己ではなくサービスである(Service Not Self)」と強調しました。二つの講演は参加者に大きな感動を与えましたが,その後「Service Above Self」と改訂され,約40年後に二つのモットーと決定されました。ロータリーの理想である奉仕の心の推進に必要な両輪として大変役立っています。

 最も重要な決議である「決議23-34」も解説したい。第一は「ロータリークラブは利己と利他の調和を目的とする人生哲学である」。これは資本主義の基本的な考えと全く符合します。第二に,ロータリークラブの役割。「ロータリーの奉仕の哲学を受け入れ,その理論が職業と人生の成功と幸福の基礎であることを団体で学び,成功の事例を地域社会に示していく」ことです。

ロータリアンたるの幸福

 最後に,感動を受けた貴重な体験を紹介したい。1967,68年に京都東ロータリークラブのガバナーをされた平沢興・元京都大学総長のスピーチ「栄光に輝くロータリアンたるの幸福」の一節で,平沢ガバナーは天を仰いで五つの幸福に感謝したいと言われた。

 第1は地球の長い歴史の中で,その頂点である人間に生まれた幸福。第2は体も精神力も充実し活躍できる健康であることの幸福。第3は天職に恵まれ,活躍し成果を持つ幸福。第4は生涯の基本である家庭の理解を持つ幸福。第5にロータリアンたる幸福。栄光に輝くロータリーの一員であり,奉仕の精神を胸に良き人生を生きる幸福は何者にも替え難い。

 また,戦前に日本のロータリークラブの心を命がけで守り抜いた飯島幡司さんが1982年,在籍50年の表彰を受けた際の心境をこう話されました。「ロータリーは人の道です。死ぬまでロータリーの道を捨てません。ロータリーは仲良く働いて社会のお役に立つことです。私に与えられたすべてに感謝します。あと4年で100歳です」。100歳までロータリアンでありたいものです。