大阪ロータリークラブ

MENU

会員専用ページ

卓 話Speech

  1. Top
  2. 卓話

卓話一覧

2003年10月17日(金)第3,995回 例会

ガバナー公式訪問

若林 紀男 氏

国際ロータリー第2660地区ガバナー 若林 紀男

1941年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。82年大阪東RC入会,99~00年度会長。マルチプル・ポール・ハリス・フェロー大口寄付,ベネファクター,米山功労者。(流通業)

 おさらいとして,RI(国際ロータリー),地区,クラブの3つの関係を思い起こしていただきたい。世界166カ国に約3万2千のクラブがあり,このクラブが構成しているのがRIです。決して,RIという組織のもとにクラブが所属しているのではありません。

 地区はクラブに伝達する中継地と思ってください。地区は基本的にはクラブが出来ないこと,例えば「青少年交換・財団親善学生・GSE」などといったこと以外の事業はしないと,私は考えています。

 ガバナーはRIの役員です。166カ国を 529の地区に分けているので,世界に529人のガバナーが存在していることになります。RI役員という私の役目として,RI会長のマジィアベさんの年度テーマの4つの強調事項をおさらいします。

4つの強調事項

 マジィアベさんはナイジェリアのご出身で,ロータリー99年の歴史の中で初めてアフリカ大陸から黒人の会長になられました。世界のロータリアンがポリオを撲滅しようという運動を起こした1985年当時は,125か国でポリオが発症していました。今日は7か国に縮小されましたが,この中にナイジェリアが入っています。豊かな地下資源,農作物があるのですが,その恩恵に浴するのは一握りの方だけです。マジィアベさんはイギリスで勉強され,弁護士の資格を取得されましたが,自分の国の実情を目の当たりにして思われることがあったのでしょう。マジィアベさんが,年度のテーマを「Lend a Hand」とされたこともうなずけます。

 この「Lend a Hand」の手の行く手が,4つの強調事項「貧困」「識字率」「保健」「家族」です。「貧困」は世界の災難などといった元凶の中心です。「識字率」が高くなると,貧困の一部は解消されます。「保健」は病気予防から治療,アフターケアまでを含めての話です。歴代会長で,「家族」を取り上げたのは,マジィアベさんが初めてです。ロータリアンがロータリーに時間を割けるのも,配偶者の良き理解があるからです。家族の支えがあるから,奉仕活動に参画できるのです。配偶者や家族の支えがあるからこそ今日があるということで,マジィアベさんは「家族」とおっしゃったのです。

ロータリーは民間の国連

 私は最近,「ロータリーは民間の国連のようなものだ」と思っています。ロータリーは,清潔な水のない国があれば井戸を掘り,校舎のないところには校舎を建設するプログラムを持っていますが,こういったものは,まさしく国連が持っているものです。

 自己研鑽,仕事に対して全力投球するということが,ロータリアンの職業倫理につながっていくという考え方をしています。ところが,世界のロータリアンは「ロータリアンはすべて,仕事に全力投球しているといったことを前提にして,奉仕活動をしている。だから,地域社会,国際社会に大小の足跡を残していくことに,ロータリアンは頑張るべきじゃないか」と考えているという話があり,私どもが長年考えてきたことと少しギャップがあるのかなと思っています。

 昨年9月に「ロータリーは民間の国連」の話を裏付けるような「世界平和奨学生制度」が出来ました。各地で起こっている紛争に対して,調停し解決する能力を持つ人材を育てるという趣旨です。世界の7大学とタイアップしてロータリーセンターを作っています。日本では国際基督教大学が選ばれています。

 ロータリー財団奨学生の宣伝に,2期生に緒方貞子さんがいらっしゃることを使わせていただいています。第二,第三の緒方さんを作ろうという構想です。ただし,本当に武力紛争を調停する人材を育てるのではなく,紛争の原因になっている貧困などを専門的知識で調停する能力のことを言っています。

地区の改革

 クラブから「地区の改革を」と言われたことがありますが,基本的に3つのことがあったかと思います。一つ目は「組織の改革」です。会員やクラブ数が増えてくると,地区の中にある組織も肥大化するという状況になっています。二つ目は財政問題です。経済情勢が変わったために,資金繰りにも苦しむような話を聞きましたので,財政改革をしなければなりません。三つ目は「地区の役割」を見直して,本来,地区がやるべきことをやりましょうということです。

 私は「中身の改革」をやらせていただきました。基本原則は「地区は事業をしない」ということです。地区は86ロータリークラブを支援する組織ですので,情報提供,あるいは皆さんからのニーズに応えるだけでいいのだと思っています。

 最後に地区協議会でお話ししたことが「面白かった」ということですので,繰り返します。19世紀後半のスコットランドで,一人のささやかな善意が大きなドラマを生んだ話です。

 ある農夫がため池で溺れている少年を助けました。翌日,少年の父親が農夫の家を訪れてお礼を言い,農夫の息子に教育を受けさせたいと申し出ました。農夫の息子は名門大学を出て,ペニシリンを発見し,ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。少年の父親は晩年,肺炎にかかり,瀕死の床につきましたが,そのペニシリンのお陰で助かりました。

 そして,溺れた少年はどうなったか。彼は,1953年にノーベル文学賞を受賞したウィンストン・チャーチル卿であります。

 皆さん,身近にある難儀に手を貸してくださるようお願いします。「Lend a Hand」をよろしくお願いします。