大阪ロータリークラブ

MENU

会員専用ページ

卓 話Speech

  1. Top
  2. 卓話

卓話一覧

2003年7月18日(金)第3,984回 例会

イニシエイションスピーチ
穴子とアイバンクと眼のお話

下村 嘉一 君

会 員 下村 嘉一

1951年生まれ。 '77年3月大阪大学医学部卒業。 '81年8月ジョージア医学大学留学。 '83年8月大阪大学医学部眼科助手。 '93年1月大阪大学医学部眼科講師。 '99年4月近畿大学医学部眼科教授。現在に至る。 当クラブ入会 : 2002年12月。 PH準フェロー、準米山功労者。 (眼科医)

さばき3年焼き8年

 卓話のタイトルは「アイバンクと眼」となっていましたが、事務局から「それでは面白くない。下村さんの実家は穴子屋さんだから、穴子の話もしてくれ」と言われ、このようなタイトルに変えました。

 実家の穴子屋(下村商店)は高砂で明治4年に創業しました。穴子をたくさん殺します。そこで、親父から「お前は医者にならへんか。それも、出来たら眼医者に」と言われました。なんで眼医者かというと、生の穴子をさばく時に眼に釘を刺すからなんですね(笑)。笑い話が本当になってしまいました。

 学生の時に穴子を焼くのを手伝ったことがありますが、これが難しい。穴子でなく串を焼いてしまうんですね。桃栗三年柿八年と言いますが、穴子の場合は「さばき3年焼き8年」と親父が言っていました。

アイバンクに登録を

 眼の一番前のところにある、黒目と言われる部分が角膜です。ここが悪くなったら、アイバンクに登録していただいた人の角膜と置き替えるということを、専門にしています。

 現在、大阪アイバンクは千里の阪大医学部の敷地内にありますが、私が医局にいた頃は、中之島の阪大病院の中にありました。可愛らしい女子高生4人が来て「アイバンクに登録したい」と言ったことがあります。話をよく聞いてみると、アイバンクと愛人バンクを間違えているんですね。最近の事件はすごいですが、青少年問題と家庭の崩壊が大きな問題だと思います。

 大阪アイバンクで眼球を登録した人は平成9年は700人でしたが、11年から少なくなって、昨年度は300人しかいません。これだけ登録があればいいと思われるでしょうが、大半は若い人で、年をとった人が少ないんですね。

 大阪大学のデータでは、角膜移植を待機している人は、平成13年から急に少なくなった。アメリカから眼を輸入しているからです。昔は登録してから手術まで5年はかかっていましたが、今は1年半から2年ほどになりました。近畿大学では3か月で出来ます。

 アイバンクの登録をよろしくお願いします。

アイバンクに電話しますと、申し込み葉書が届きます。眼球提供登録をしますと、カードが届きます。これを必ず常時携帯してください。電話は06-6875-0115です。「花が5つでいい子」と覚えてください。献眼の専用電話は06-6875-0116です。

 臓器提供意思表示カードが、どこの病院でも置いてあります。このカードの角膜だけのところに丸をすると、角膜移植だけになります。心臓も腎臓も全部あげたかったら、全部に丸をしてください。このカードがあれば、吉本新喜劇を1000円安く見られると聞いたことがあります。大阪アイバンクでは1年に1回、四天王寺さんで厚生労働大臣からの感謝状を(角膜提供者の)遺族に渡しています。

 最近は角膜移植をするケースとして、角膜に水がたまり、角膜が白くなる水ほう性角膜症が増えています。白内障の手術が原因の方が結構、多い。もともと角膜が悪い人が多いようです。

選球眼が大事

 最近はレーシックという言葉がよく出てきます。エキシマレーザーというレーザー光線による手術のことですが、近視の治療で脚光を浴びています。ただし保険はききません。両眼で50万円とか40万円とかしますが、眼鏡やコンタクトで視力1.0あるような人の手術費を保険でカバーしたら大変です。小泉首相が言っているように、医療保険はパンクしてしまいますからね。

 レーザー光線による手術にはPRK(光学的角膜表層切除術)とPTK(光学治療的角膜切除術)、そして今流行っているレーシックがあります。

 エキシマレーザーの手術そのものは簡単です。難しいのは選球眼です。大リーグの松井やイチローの言う選球眼とは違って、この患者さんの眼なら手術をすると視力が1.0出る、この患者さんの眼は手術をしてはいけないという選球眼が一番、大事なんです。そして、術後は経過を観察する。これが、眼科の専門医でないと近視の手術をやってはいけないところです。しかし、今の医師法では、医師免許があれば、美容整形の先生でも明日からでも(近視の手術を)出来るんですね。

 プロゴルファーのタイガー・ウッズはレーシックをやって非常に強くなりました。だから、多くの患者さんが「この手術をやったらゴルフが上手くなる」と思って来はるんです(笑)。違うんですね。

人工角膜を研究

 近畿大学では最近、人工角膜を研究しています。真ん中がPMMAという素材で、直径10ミリぐらいです。この素材は第二次世界大戦で戦闘機の風防ガラスに使われていましたが、破片がパイロットの眼に入っても異物反応がなかった。これをヒントに、この素材で眼内レンズを作りました。

 私が考案した「下村式角膜鑷子(せっし)」というのがあります。先が普通の鑷子(ピンセット)と違って2つに分かれ、さらにその2つの先端がまた2つに分かれ、合計8つでもって角膜をつかむことが出来ます。角膜移植の時には、ドナーの角膜をつかむのが難しいので、この下村式角膜鑷子は結構、使われています。