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2003年3月7日(金)第3,968回 例会

日韓交流新時代へ―『もてなし文化』の民族学―

李 容淑氏

(株)リンカイ 代表取締役 李 容淑
(リー ヨンス)

1958年大韓民国・大田市に生まれる。'78年牧園大学音楽科(声楽専攻)卒業。 '75年韓国ミスコリア大田。'88年(株)日本MMC韓国支社設立時に入社。その後現地役員。'92年来日、(株)山一入社・旅行部外国人担当。'95年(株)リンカイを設立。関西で唯一の韓国人経営の旅行社として、国際交流を目的に韓国から来るインバウンドの旅行を扱う。

 私は大阪市に住んでおりまして、住民税をちゃんと払う一人の大阪人です。こちらに来て10年になりますが、「住めば都」です。最初は右も左もわかりませんでしたが、今はキタもミナミもわかるようになりました(笑)。

 ワールドカップの時、韓国では真っ赤なシャツを着た何千人の人並みが世界中に報道され「そういう情熱はどこから出るのか」と日本の方に聞かれました。大昔、1万年以上前には朝鮮の韓民族は中国大陸に住んでいて大陸民族、騎馬民族でした。狩猟を行う「武の民族」です。武の民族というのは実質を大事にし、進取の気性を持っております。道徳性とか正統性よりも、戦争でどうやって勝つかを考える、そういう気質でございます。

 それが今までずーっとつながっていて、W杯の時、「勝つ」という目的のために皆の気持ちが一つに結集しました。私の会社の社員たちも仕事をせず応援ばっかりしていたので、「給料はサッカー協会からもらいなさい」と怒りました。だけど、私もソウルに行ってみたら、真っ赤なシャツを着て一緒に応援したんです(笑)。そういう情熱と活気は良い点です。

いまの韓国はタテ社会

 しかし一方、なんで大統領がやめたらすぐ死刑になったりするのか、という質問もよく受けます。さっき話した騎馬民族の歴史は、紀元前から7000年間続きましたが、その後は今の北朝鮮を含む半島部分にどんどん流れていって半島民族になりました。今度は馬とか狩猟ではなく農業でお米をつくる。村がつくられて、集団主義になり、血縁、地縁、学縁が重視されるタテ社会になった。「武」がだんだんなくなって、「文」が社会の中心になった。宋からは朱子学が入ってきて、儒教が一番影響力を持つ今の韓国の流れができました。

 皆様が韓国の人と接する際に一言申し上げたいのは、韓国はタテ社会ですから、自分より一歳でも上ならお兄さん、一歳でも下なら弟です。食事をするとき目上の方より先に食べないこと、お酒を注ぐときは絶対両手を使わなければだめなんです。そういうことを大事にしますと、最初の印象はスムーズにいけると思います。それと、韓国で食事に招待されて十分食べたと思ったら、そのまま残して下さい。一生懸命食べてホッとしたら、また出てくる(笑)。韓国は豊かさにあふれる食文化ですから、ちょっと残した方が礼儀にかなっているのです。

 さて、「文」の社会になると、道徳性とか正統性に全部フォーカスを合わせます。そういう正統性から、政権が代われば自分たちに反対した人に復讐が行われ、大統領だった人が死刑になったりする。民族性の良くない面です。血縁、地縁、学縁の支配する社会を、今回の新しい政権がどのように改革していくか、楽しみにしております。

“観光後進国”から脱却を!

 次は観光の話です。観光産業はその国の顔でございます。世界の経済の第1位はアメリカですが、アメリカの第1位の産業は観光産業です。NYでテロ事件があったとき、市長さんが一番最初に言ったことは「皆さん、ご心配なくニューヨークに来てください」というセリフでした。それに比べると、今までの日本は観光産業に力を入れていない、観光産業は遅れています。日本では年間1600万人の人が海外に行きますが、海外から日本へ来るお客さんは400万~500万人にすぎません。こんな比率は先進国では日本だけです。

 ちょっと考えて下さい。韓国の人が日本へ来て、回転寿司を食べたら韓国のものより美味しかった。中を見たら生ワサビが入っている。うどんを食べたら本だしのスープがおいしかった。帰ってから輸入品の生わさびや本だしを探します。日本のおばあちゃんたちが小さな車を押して歩いているのを、観光に来たお年寄りが見て、物も入るし、歩くのも楽そうだというので、そのクルクル車を10台ぐらい買ってくださいと言われ、びっくりしたこともあります。どこかで見ているんです。観光産業は、観光だけでなく、日本経済全体に関係する大事な産業だということを、この場ではっきり言っておきたいと思います。

 今、韓国で最高、日本で最低というものがあります。それはゴルフです。日本では一番不況ですが、韓国では日本のバブル期以上の盛況ぶりです。10年間はこの状態が続いていく。私は自信をもってそう言えます。ブームの韓国から日本のゴルフ場にどうやって人を呼ぶか。これは日本の観光産業振興につながる大きな課題です。韓国の方がいらっしゃった時、ゴルフ好きな方はゴルフに連れて行ってゴルフクラブをお土産にしたら他のものは何も要らない。本当です(笑)。

観光の基本は「もてなし」の心

 最後に、日本に来た韓国の人の評価ですけど、よい点は、町と車がきれいで、治安がよく、交通が便利。反対に物価、特に交通費が高い。それからハングルが書いてないし、英語もあんまり通じない。食事も物足りない。お代わりが出ないとか。韓国では、キムチとか白菜とか、なくなったらどんどん出るのに、こっちはちょっとでも頼んだら余分にお金がかかる。外国人が入管を通るところは狭くて時間がかかってイライラするという苦情もあります。こうした点はもてなしの心を持って、よく考えていただきたいと思います。