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2026年7月31日(金)第5,015回 例会

プロダクト開発における次世代3Dデジタルの前線

株式会社ケイズデザインラボ
取締役プロデューサー
内 田  麻 子 
クリエイティブディレクター加 藤  健太郎 

取締役 内田 麻子氏
DICカラーデザイン株式会社(DIC株式会社100%グループ会社)を経て,2015年より同社プロデューサーとして,国内企業のDX化に従事。
クリエイティブディレクター 加藤健太郎氏
小泉産業株式会社,株式会社KENOSを経て,2013年よりクリエイティブディレクターとして,様々な業界の企業のプロダクト・サービスのデジタル化の支援に従事。

 本日のテーマは「プロダクト開発における次世代3Dデジタルの前線」です。ケイズデザインラボは20周年を迎えますが,来週から社名は「ビアンカエンジニアリング」となります。ビアンカには「美案家」という意味を込め,建築家や図案家のように美しい案をお届けしたいと考えています。プロデューサーをしております私,内田と,クリエイティブディレクターの加藤の2名で来ました。3Dスキャンやプリンターのデータを活用し,デジタルものづくりの技術を製造業の皆様の開発現場に実装してもらうのがコア事業です。創業したのは2006年,ちょうど20年前です。本日お話しするのは三点です。一つ目は「プロダクトデザインの未来」,二つ目は「次世代3Dデータの可能性」,三つ目は「AI時代のデジタルアーカイブ」です。

加藤氏「表面デザインは重要」

 ここからは加藤がご紹介します。一つ目,「プロダクトデザインの未来」についてです。プロダクトのサーフェスデザインには表面に凹凸加工を施すシボなどがあります。私どもは様々なサーフェスデザインをフルデジタルで精密にコントロールしながら作り上げていきます。シボやカラーリングなどの前段階にある,本質的なデザインの領域を指します。私どもはその領域とリアルな質感表現をデジタル上で表現する技術を組み合わせ,新しいプロダクトデザインに挑戦しています。

 人間はモノの良し悪しを判断する際,その表面のデザイン,色,形,質感を瞬時に判断しています。サーフェスデザインは大きな形状と同様に重要であり,人間の深層心理にも関わる要素です。サーフェスデザインを緻密かつ適切にコントロールすることで次世代プロダクトの価値向上につながります。

 ただ,CG上でシミュレーションして検討する事と,実際に製品として実現できるかどうかは別の問題です。製造段階に至って課題が生じ実現困難になるケースも少なくありません。私どもは,リアルな形状をデジタル上でも表現でき,それが実際の凹凸データになっているため実現可能な領域までデザインを進めています。また,「SURFACESTUDIO」というシステムを運営しています。サーフェスデザインのサンプルを何百アイテムという形で自由に閲覧でき,それを立体データとして確認できます。細かなデザインやサーフェスを立体データで確認することで,実際のプロダクトがさらに良くなる世界を目指しています。

新しい3Dデータ形式

 続いて二つ目「次世代3Dデータの可能性」です。「インプリシットモデリング」をご存じでしょうか。一般的なCAD(コンピューターによる設計)データは面や線の部品を組み合わせて外形そのものを記録します。これに対しインプリシットモデリングは外形の設計図を数式で表現する,造形のルール集です。軽量で表示速度と計算速度が速いという特徴を持ち,私どもは次世代の3Dデータ形式として注目し事業を進めています。このインプリシットモデリングとCADモデリングを組み合わせてデザインすることで,非常に興味深いプロダクトデザインが可能になります。

 また,国内スタートアップ企業の「Nodi」と組んでいます。同社のNodiというマルチモデリングシステムでは,CADデータとインプリシットモデリングデータを同時に設計し,一か所でデータ化できます。一つのモデリングツールの中でCADデータとインプリシットモデリングデータの両方を扱えるものは画期的です。

 1年ほど前までAIにプロンプトを入力しても,適切なモデリングCADデータが出力されることは少ないものでした。しかし最近は言葉で指示するだけでCADデータに近いものが生成されるようになりました。このようなAIの急速な進化を受けて進めているのが,インプリシットモデリングなどを活用してAIに直接モデリングを行わせる技術です。CADデータで作成すると一つのパラメーターを変更するだけでも相応の時間がかかりますが,AIとインプリシットデータなどを使えば数値を変更するだけでリアルタイムの変形表示が可能です。メーカーの皆様にこの技術で「デザインの根本から変えていきませんか」と提案をしています。

AIに何を読ませるか

 最後の三つ目は「AI時代のデジタルアーカイブ」です。数年前までは「デザインが重要な時代」と言われていました。しかし今は,「デザインの時代」から「アーカイブの時代」に移りつつあると捉えています。画像生成などデザイン制作の一部はAIが代替する世界になるかもしれません。そうなるとAIに任せる制作作業だけでなく,AIにどのような情報を入力するのか,「何を食べさせるか」ということが重要になります。そして学習させるべき情報を企業の資産としてアーカイブする基盤が必要になります。私どもは「KORE。」というアーカイブプラットフォームの公開を8月中に予定しています。単に情報を管理・保存するだけではなく,活用策としてほかの仕組みやAIにつなげていくかということまで考えられるプラットフォームです。

 デジタルアーカイブは地域創生や市区町村における地域文化の保存にも活用できると考えています。各地には文化財や重要文化財のほかに,固有の価値や魅力的な資源も数多く存在します。こうした資源をデジタルアーカイブとして保存し,広く魅力を発信する仕組みができると考えています。

 本日お話ししたサーフェスデザイン,インプリシットモデリング,そしてデジタルアーカイブは別のテーマに思えるかもしれません。しかし私どもにとっては20年考え続けてきた3Dデジタル活用の延長線上にあるものです。小さな会社ですが,3Dデジタルの次に何が来るのかを常に考え続け,これからも新しい提案を世の中に発信していきます。ご清聴ありがとうございました。
(スライドとともに)