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2026年2月6日(金)第4,994回 例会

世界の難民と日本

石 川  え り 氏

認定NPO法人 難民支援協会
代表理事
石 川  え り 

1976年生まれ。上智大学卒業。’94年のルワンダにおける内戦を機に難民問題への関心を深め,大学在学中,JAR立ち上げに参加。大学卒業後,企業勤務を経て2001年より難民支援協会(JAR)に入職。直後よりアフガニスタン難民への支援を担当。’08年1月より事務局長,’14年12月に代表理事就任。二児の母。上智大学,一橋大学国際・公共政策大学院非常勤講師。

 私が高校3年で進路を考えていた1994年にアフリカのルワンダ内戦で大量虐殺があり,同じ民族同士が殺し合うことに非常にショックを受けました。何十万人という人々が隣国へ逃れましたが,国際社会の援助が十分届かず,逃げた先でも命を落とすことを知り,何とかできないかと焦りました。国際人権NGO「アムネスティ」でお手伝いを始めたところ,難民の人がよく相談に来ていました。私はいつかルワンダに行って難民支援をするつもりでしたが,それがきっかけで日本にいてもできる支援を始めるようになりました。ただ,紛争や迫害は日本社会で生きている分には無縁なので,難民はすごく遠く感じられてしまう。翻って日本が平和であることの証左なのだろうと思いました。

1億2,300万人,増え続ける難民

 難民を背景に持つ著名人として,ウクライナ出身の大関・安青錦を挙げたいと思います。安青錦は2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受け,母親が働いていたドイツに逃れました。17歳11カ月でした。当時,18歳~60歳の男性は兵士として戦場に行くため,ウクライナを出られなかった。そうなる前に何とか国を出た安青錦は,’22年4月に来日しました。関西大学相撲部の山中新大さんの実家に下宿して,昼は日本語学校で勉強し,夜は相撲部で練習。8月に師匠の安治川親方と出会って弟子入りし,翌年9月に初土俵を踏み,その後の快進撃は,ご承知の通りです。日本では,安青錦は難民とひも付けて報道されませんが,イギリスの新聞「ガーディアン」は「ウクライナ難民が大相撲で優勝した」と,難民の背景を持つことも合わせて紹介しています。
 人口約4,000万人弱のウクライナでは現在,1,000万人近くが避難を余儀なくされています。昨年12月までに日本に避難した約3,000人のうち,3分の2が女性です。難民には紛争や迫害といった難しいイメージがありますが,民間での受け入れが大関・安青錦を誕生させた例を見ると,すごく可能性を秘めた若者が才能を開花させるために逃れていく側面もあることが分かります。
 世界で避難を余儀なくされている人は増え続けています。2024年も過去最多を更新し,日本の人口とほぼ同じ約1億2,300万人に上ります。多くはスーダン,シリア,アフガニスタン,ウクライナといった紛争が起きている国から逃れています。難民の受け入れ国はイラン,トルコ,コロンビア,ドイツ,ウガンダなどで,ドイツ以外は先進国ではなく,周辺の国々です。経済的に不安定な国が,多くの難民を受け入れているのです。ウクライナのことを話しましたが,日本で報道されない危機は,圧倒的にアフリカに集中しています。

在留外国人との共生

 日本に来る外国人,滞在する外国人は「観光客,短期滞在,留学生,技能実習生,特定技能,定住者,永住者,帰化」と多様です。
 最近,経団連が「転換期における外国人政策のあり方~秩序ある戦略的誘致・受入れ環境整備に向けて~」という報告書を出しました。その中で「外国人政策の3つの原則と視点」として,①「受入」から「戦略的誘致」への発想転換②包摂社会の実現③ライフコースを考えた政策形成―を挙げています。
 ③は「外国人個人の人生設計を考えて受入れていきましょう」ということです。つまり,入国して日本に定住し,永住が進んでいく中で,家族ができて,子どもが生まれ,学校に行く可能性も考えて外国人を受入れていくことを提言しています。
 日本で暮らす外国人は非常に増えています。’24年末の在留外国人は376万8,977人と過去最多で,日本の人口の3%を占めています。次に出る’25年末の統計では400万人,人口の4%が見えてくると思います。生まれる人よりも,亡くなる人がずっと多い日本で,在留外国人が人口減少を補っているのが現状です。それが避けられない以上,どう外国人と共生をしていくかが問われており,ようやく議論が始まり,可視化されたことを私は前向きにとらえています。
 日本の難民受け入れの枠組みは,難民認定のほか,補完的保護や緊急避難措置などがあります。’24年に難民認定を申請して認められたのは190人で,認定率2.2%の狭き門ですが,才能や夢を開花させたい人がたくさんいることをお伝えしたいと思います。

85カ国の1,000人を支援

 1999年に設立された「難民支援協会(JAR)」は「難民の尊厳と安心が守られ,ともに暮らせる社会へ」というビジョンに基づいて活動しています。スタッフは現在約40人で,日本に逃れてきたばかりの外国人に法的支援,生活支援を提供し,少し落ち着いたら日本語教育をして就労につなげる包括的な活動を目指しています。2024年度は85カ国の約1,000人(過去最多)に対応し,難民申請の手続きや日本での生活について対面やリモートでカウンセリングを行うなど個別に支援しました。
 チャリティランやチャリティウォークを年に1回開催しています。われわれに寄付していただくと,東京マラソンの出走権がもらえる仕組みで,大阪の難民支援団体「ラフィック」も大阪マラソンでやっています。古本や食料の寄贈など,多くの方々に活動を支えていただいており,月1,500円から始められるマンスリーサポーターも募集しています。
 昨今は,難民に厳しい風が吹いており,外国人に対するまなざしに厳しいものがあると思います。一方で,地域社会で着実に暮らしている人たちや,日本に来たからこそ夢を開花できた安青錦のような人もいます。難民が世界中で非常に増えている中で,私たちが彼らとどう向き合い,彼らと一緒にどういう社会を作りたいのか,避けずに議論し,対話を積み重ねていくことが何より必要ではないかと考えています。ミラノ・コルティナ冬季五輪でも難民選手団を応援していただき,日本に逃れた世界の難民に思いをはせていただければと思います。
(スライドとともに)