公使相当の上級外交官。総領事として在大阪・神戸米国総領事館に赴任する前は,在ペルー米国大使館で総務担当参事官を務めていた。これまでに,国務省情報調査局副エグゼクティブディレクター,在日米国大使館総務部首席課長,在バスラ米国総領事館副総領事,在福岡米国領事館首席領事などを歴任。国務省在籍期間は24年におよぶ。マイアミ大学法科大学院で法務博士号を取得。
(日本語で)「皆さん,もうかりますか?」(笑い)。ご紹介いただきました総領事のクーバスと申します。残念ながら私の日本語は「めっちゃ悪い!」。それで,きょうは英語でやらせていただきます。
(以下英語で・通訳常見仁美さん)皆様,こんにちは。本日は,大阪という活気ある魅力的な街を築いてこられた大阪RCの皆様とご一緒でき,大変光栄に存じます。
大阪は私にとって特別な場所です。と言いますのも,私は関西におけるアメリカ合衆国の代表として,この美しく歴史ある都市で暮らし,仕事をするという特権を与えられているからです。
そして,大阪が特別な場所という意味では,もう一つ個人的な理由があります。25年前,まだ駆け出しの外交官だった頃に,ここ大阪で最愛の妻亜希子と出会いました。私たちの交際はこの街で始まりました。当時一緒に行ったたくさんの場所を鮮明に覚えております。最初のデートで訪れたインド料理店に,実は先週の金曜日に行ってまいりました。
亜希子と私は「文化をつなぐ」という,きょうのスピーチのテーマそのものを体現するような人生を共に築いてまいりました。わが家こそ,異なる背景を持つ人間同士が絆を深めることができるという証です。英語と日本語,そして少しのスペイン語を話す私たちの2人の子どもは,家族の中心となる文化の融合を象徴しています。
文化をつなぐという考え方は,個人的な経験にとどまりません。それは外交の根幹をなす考え方です。外交とは,共通点を見つけ,国境の垣根を越えたつながりを築くことです。
大阪,そして関西地域全体は,まさに文化が交わる最もよい例と言えます。昔から交易と商業の拠点として栄え,現場ではイノベーションと創造性の中心地としての役割を果たしています。大阪は常に世界中の人々を受け入れ,その考え方を享受してきました。
大阪RCもまた,文化をつなぐすばらしい一例です。その起源は1世紀以上前にさかのぼります。一人の日本人実業家が,アメリカでの自身の経験に触発されて,ロータリークラブを大阪にも作りたいと考え,地元のリーダーたちと一緒にそのビジョンを実現させました。
そのすばらしい歴史は,ロータリークラブが体現する「つながり」と「協力」の精神を表しており,日米間に培われた長年の絆を象徴しています。その遺産は,現在の大阪RCの活動にも引き継がれています。
万博のアメリカパビリオンを訪れた方は,展示場全体に流れていた曲を覚えていらっしゃるかもしれません。その歌詞には,こうあります。「Just imagine what we can experience together(想像してみてください。私たちが一緒に体験できることを)」
この歌詞は,万博の精神,そして文化をつなぐという本質をよく表しています。芸術やイノベーション,文化交流でも,共通の体験には,人と人とを結びつける力があります。そして,それは私たちにより大きな夢を描くようにと促してくれます。アメリカのパビリオンは,アメリカのイノベーションの力を示すとともに,世界とのつながり,そして文化交流の重要性をたたえる場でもあります。
トランプ大統領が言う「アメリカ・ファースト」というのは,「アメリカ一国主義」というものを表しているわけではありません。アメリカは日本を筆頭とした同盟関係によって平和と繁栄を実現し,「自由で開かれたインド太平洋」を支えているのです。
日米の絆をさらに深めていく中で,万博のアメリカパビリオンに来られる200万人を超える来場者の中から,将来の同盟を担う存在が生まれるかもしれません。
そして,万博の閉幕を見据える今,改めて「人と人とのつながり」の重要性を強く感じています。私にとってそのつながりは,まさにここ大阪から始まりました。亜希子と妻の家族との出会いから始まり,私がこの地で築いてきた友情やパートナーシップを通じて,さらに深まってまいりました。
私たち一人一人が「文化をつなぐ架け橋」になれると信じております。仕事を通じて,家族を通じて,そして地域社会の中で,私たちは皆,異文化理解を育む大切な役割を担っております。
大阪RCの皆様は,この「つながり」と「協力」の精神をまさに体現されています。地域社会への奉仕,国際理解への貢献,そして日々の活動の中での尽力に心から敬意を表します。
皆様こそが文化をつなぐ「橋」そのものであり,本日この場にお招きいただいたことに深く感謝を申し上げます。
最後に,私の話を聞いていただき,このような機会をくださったことに大変感謝いたします。未来を見据え,文化と文化,人と人,そして地域社会をつなぐ「橋」を,これからも一緒に築いていきましょう。共に力を合わせれば,私たちはすばらしいことができると思います。ありがとうございました。
〈卓話に続き更家会員が関西発の対米貿易拡大策について質問,舩山会員が日本から米国への留学生増加策について質問,山本章会員が能や時代劇について質問,クーバス総領事とやり取り〉