1954年生まれ,兵庫県西宮市にて育つ。’81年東京理科大学大学院工学研究科建築学専攻修了,竹中工務店を経て’86年から安井建築設計事務所,’97年より社長。
日本建築士事務所協会連合会会長や日本建築協会会長,日本建築家協会副会長を歴任。米国建築家協会・韓国建築家協会名誉フェロー会員。大阪RCでは2005~6年幹事,’19~’20年副会長を歴任。
私の年度のテーマカラーは「菜の花色」です。春に先駆けて開花する菜の花は,単体としても,群としても大変穏やかな美しさがあり,世界中に広がっています。菜の花は食べてもおいしい,菜種油としても使えます。菜の花色に「先駆ける」「美しい」「社会のために役に立つ」「グローバルにつながる」というメッセージを込めました。1922年に創始した大阪RCは,少し先輩の東京RCとともに日本のロータリー活動の先駆けを担いました。これからも活動を発展させる良き手本でなければならないと思います。そのためにクラブとしても,メンバー一人一人としても,内面の美しさを持つ,生き生きとした姿を備えていたいと思います。今年度は,個人はどうあるべきか,クラブはどうあるべきかを菜の花とともに一緒に考えて参りましょう。
大阪RCが設立した頃,ガバナーだった米山梅吉さんや井坂孝さんは「ロータリーは量より質である」と言い切っていました。多少の異を唱えたのが,’33年にガバナーに就いた大阪RCチャーターメンバーの村田省蔵さんで,主要都市でクラブとメンバーを増やすことを実践しました。それをきっかけに東京と大阪はいろいろなクラブ設立に手を貸しました。米山さんはその後,日中戦争が激しくなると「孤高を保つのもよいが,世の中の事象に対して何もできない。ロータリーがそれなりの意見を持つにはそれなりの数も必要」と述べるようになりました。でも「ロータリアンへの教育は大変重要である」と念を押しています。大事な議論だと思います。この逸話にあるように,日本のロータリーの戦後の発展に先立ち,クラブとメンバーの質を高め,メンバーを広げることで多様な社会課題に向き合い,社会に働きかけ,そこからさらに学びを得るクラブとは何か,こうした今も有効なテーマと議論が掘り下げられ,良い方向性を見出していた戦前だったと思います。
大阪RCのチャーターメンバーである片岡安氏は私の父方祖父が,星野行則氏は母方祖父がお世話になりました。片岡さんは建築家でもあります。私が敬愛する彼らは大阪RCを大阪の社会の大切なインフラ,議論の舞台と考えていたと思います。
私の入会は1997年で,嘉納秀一会員と同日です。以来ともに出席100%を続けています。2005年に江崎会長のもとで幹事を務め,’12年に松澤会長のもとで友好委員長として90周年記念行事を担当,’20年当時,次年度会長の堀会長とクラブビジョンをまとめ,’22年に上山会長のおりに100周年式典を切り盛りしたことなど,学びの多い経験をする機会を得ました。大変ありがたく思っています。
ロータリーは「奉仕の理念」を明確にうたっています。ロータリアンは行動の全てを社会奉仕につなげ,グローバルな友好,平和と結び付けていくべきだと教えています。一人一人の意識や倫理が問われますが,一人では達成は難しいので,志を共有する者が学び合って汗をかくべきだと呼びかけているのです。
一方,ロータリークラブは「自発性に基づいたコミュニティ」です。ロータリー活動では世代を超え,違う分野の人たちと胸襟を開いて語ることができます。新しい知見を得ることは刺激や発見にとどまらず,会員を確実に成長に導いています。社会課題に対する大事な気付きが生まれ,クラブというコミュニティだけでなく,社会全体の質を高めることにつながる。このサイクルはロータリー活動の醍醐味でしょう。
クラブビジョンの中に「自発性に基づいたコミュニティ」という言葉を少し入れました。より良いコミュニティは,自発性が支えるものだと思います。フランスの思想家アレクシス・ド・トクヴィルは民主主義社会を支える条件を考察するにあたり,19世紀のアメリカ社会を観察し,自由な結社が若い国を支えていることに気付きました。自発性に基づくコミュニティが社会を支えるのは健全な姿です。
今年度のRI会長はフランチェスコ・アレッツォさんというイタリアの方です。マリオ会長予定者から交代しましたが,メッセージ「UNITE FOR GOOD」を引き継ぎました。日本語では「良いことのために手をとりあおう」ですが,どちらかと言うと「良いことをするために連帯しようぜ」と,力強く前進する力が宿っているように感じます。
また,2660地区の吉川健之ガバナーは「学びと交流を通じてロータリーを愉しもう―新たな仲間を迎えよう―」と掲げ,クラブ間の交流を後押ししておられます。
これらを踏まえて私は「つながりあおう,学びあおう,そして踏み出そう」をテーマに走り出そうと思います。実はこの並びが大事なのです。まず,毎週の例会とそこでの交流が生き生きしたものになるよう,例会運営を最も大切にします。クラブが成長するために,運営は絶えず必要な改善に取り組みますが,皆さんのお知恵を借りて,前年度から次年度に続く流れの中で上手に進めて参ります。
皆さん,例会出席はつながりあい,学びあうためにとても大事な日常習慣です。そこから始まって,一人一人としても,クラブとしても同じ場所にとどまらず,自ら行動を始め,踏み出して,社会をより良いものに変えていこうではありませんか。社会の課題は山のようにあります。いろいろな奉仕活動に取り組みましょう。委員会,クラブ全体で取り組む行事に積極的にご参加ください。クラブを着実に成長させていきましょう。
ロータリークラブは大きな家族です。大阪RCの103年の歴史は温かい交わりがつくり出してきました。今年度はその温かな関係を広げることに意を用います。今年一年,菜の花の年度を皆さんとともに味わい,楽しんで走り出しましょう。「つながりあおう,学びあおう,そして踏み出そう」この中之島から。
(スライド・映像とともに)