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2025年5月16日(金)第4,963回 例会

結果が出る自治体経営~都城フィロソフィを基軸として~

池 田  宜 永 氏

宮崎県都城市
市長
池 田  宜 永 

1994年 4月 大蔵省入省
2007年 4月 宮崎県都城市副市⻑(総括担当)
 ’10年 7月 財務省主計局主査(農林水産係)
 ’12年 6月 財務省辞職
 ’12年11月 宮崎県都城市⻑
 ’16年11月 宮崎県都城市⻑(2期目)
 ’20年11月 宮崎県都城市⻑(3期目)
 ’24年11月 宮崎県都城市⻑(4期目)
現在に至る。

経営資源を最大限活用する自治体経営

 宮崎県都城市は,市役所から車で5分ほど行くと鹿児島県です。文化も言葉も鹿児島・薩摩ですので,都城市は南九州の両県を結ぶ役割だと思っています。
 私が考える自治体経営とは地域の経営資源,ヒト・モノ・カネを最大限に活用して利益の最大化を図ることです。行政には売上や利益の概念がない中,私は就任当初から13年,この考え方でやっています。我々にとっての利益の最大化とは,市民の幸福と市の発展に尽きます。平成の地方創生では全国の自治体に1億円ずつ平等に配りましたが,今国は頑張る自治体をより支援する形なので,自治体間でも多少の競争が生まれています。都城市を勝ち組にするには,常に競争して結果を出して勝負する企業経営を取り入れようというのが私の自治体経営です。
 そのヒト・モノ・カネの力を最大限に引き出すにはキーワードがあります。それは,ヒト=人材育成は人間力や挨拶・接遇,モノ=組織はやる気や熱気があるか,そしてカネ=政策推進ではコンセプトを立てて戦略を練り,一番大事なことであり役所に欠けている「結果を出す」ことです。私は役所が結果を出せないと市民が損失を被ることを職員と共有しています。役所の文化や職員の考え方を変えると市の発展につながると思っています。
 最も大切な経営資源である人財,つまり市の職員を育成して人間力を高めるのが「都城フィロソフィ」です。これは稲盛和夫氏の「京セラフィロソフィ」をベースに私たちが独自に作りました。京セラフィロソフィには人として,社会人としてあるべき姿が書いてあります。導入して7年目ですが,当たり前のことを当たり前にやる人間力を大切にする職員が1人でも増え,より良い市民サービスにつながるよう,私は一番力を入れて取り組んでいます。市のふるさと納税やマイナンバーの交付率が全国1位となったのも,その結果だと私は信じています。
 モノの組織をより良くするには人事異動です。頑張りに報いるために然るべき人に然るべき仕事を処遇しています。ただし,やる気を奪わないのが重要です。組織を引き上げるには,自分でガツガツ進む人がいないと化学反応が起こらず,熱気が生まれません。もっと頑張ろうと思ってもらえる人事を心がけています。
 また私は就任以来,男女や年次は関係ない実力主義で人事をやってきました。就任時は6%だった女性の管理職が今年度初めて30%を超えたのも,能力が高い人を引き上げた結果です。職場にも活気が生まれました。
 仕事の進め方も大きく変えました。私は各部長と年度初めに契約書を結びます。行政は予算以外の数字にはあまり追われませんので,数値目標を明確化して,政策の結果責任を意識しています。またスピード感を持つために,私は協議を基本15分と決めています。市民はお客様であり,市役所は市民サービス産業であることも職員と共有しています。

政策推進はコンセプト・戦略を練って

 私がふるさと納税に取り組み始めたのは10年前ですが,始めた理由は儲けではなく,対外的PR強化であり,全国に都城市を知ってもらうためでした。行政が従来取り組まなかったコンセプト・戦略をしっかり練ることが結果につながりました。キーワードは「日本一」です。肉の生産が市町村別で1位ですし,日本一の焼酎メーカーも都城市にあります。返礼品が肉と焼酎だけだったので,他の業界から何を言われるかわからないと部長たちに言われましたが,これは譲れないので意見や批判は直接私に言ってほしい,と伝えなさいと言いました。ちなみに国の役所の受付で「宮城」県「とじょう」市と間違えられたことや,今でも都城といえば高校野球と言われるイメージを払拭するためでもありました。
 また市ではマイナンバーカードを10人に9人が持っており,デジタル化を進めやすい状況です。自分たちで目標を掲げて独自に取り組んだ結果です。
 市では日本で初めて,九州で初めて,県で初めてという取り組みは率先してやります。誰もやってない方が私はワクワクするし,今や職員たちもその感覚で仕事をしています。職員には失敗しても学んで前に進めばいいと話しています。

移住・定住拡大で人口減少が止まった

 昨年は移住・定住対策に力を入れた結果,13年ぶりに人口減少が止まりました。就任時,都城市の窓口を通じて移住した方は1人でした。これはまずいとターゲットを明確化しました。役所の政策は皆に平等になるように作るため,焦点が絞れず結果につながりにくいのです。私はターゲットを若年層にして移住・定住拡大プランを作りました。そして一番重要なのは営業をしたことです。役所は今まで足で稼ぐ営業はしたことがなかったので,大いに結果が出て,令和四年度(2022年)には移住者が435人まで増えました。職員は結果が出るとうれしいので,自ら営業に行くようになりました。職員が今までなかった感覚を体験すると,その部や課は一気に空気感が変わります。
 こういうことを各部が積み重ねたことで,初めての取り組みを率先してやる空気感が生まれています。行政は殻に閉じこもっていると今からの時代は難しいでしょう。民間で当たり前とされていることを取り組み続けると成果が出るため,これからも取り組んでいきます。都城フィロソフィという人財育成は選挙のマニフェストにはほぼ載ってきません。4年では結果は出せませんし,しなくても政策に反映しないと考える方も多くいます。でも私は結果にこだわるなら一番根っこの人財育成をしっかりすべきだと思い,13年やってきて,ようやく結果が見えてきました。
(スライドとともに)