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2024年6月14日(金)第4,925回 例会

ピアノコンサート~美しいリストの世界へ~

森 本  美 帆 氏

ピアニスト 森 本  美 帆 

兵庫県立西宮高等学校,京都市立芸術大学,同大学院を経て,ハンガリー国立リスト音楽院ソリスト課程を最優秀の成績で終了,国家演奏家資格取得。2014年から’16年ハンガリー政府SH(Stipendium Hungaricum)奨学金留学生。リスト国際ピアノコンクール(ハンガリー)ファイナリスト。
その他,国内外のコンクールにて多数優勝。関西を中心にソロ,室内楽の演奏活動に力を入れている。

 皆様,はじめまして,森本美帆です。本日はよろしくお願いいたします。このような華やかな場で演奏をさせていただけることを大変うれしく思っております。
 私は2012年から’16年までの4 年間,ハンガリーに留学していました。なかなか聞き馴染みのない国ではないかと思いますが,クラシックの音楽界では,フランツ・リスト(1811-’86年)という「ピアノの魔術師」と呼ばれる大作曲家がいまして,その作曲家を輩出した国として知られています。

「ピアノの魔術師」に弟子入り

 私が4年間所属していた学校は,「リスト音楽院」というのですが,リストが創設し,初代総長を務めた学校になります。ハンガリー人の先生しか学院には所属していません。ファミリーツリー(家系図)みたいなものが学校に張り出されていまして,リストを筆頭に,その下に学んでいる先生の名前が書いてあるのですが,皆,リスト直系の弟子であるということを意味しています。私も学院の先生に習っていたので,一応,リストの弟子だと,おこがましくも思っています。
 私は元々,リストが大好きでした。日本ではよく,フレデリック・ショパン(1810-’49)と比較され,どちらかと言うと,「ショパンの方が美しい音楽で好き!」と答える方が多い印象があります。一方で,リストは難解な曲が多いのですが,すごく多才で,作曲数は彼が一番多いのではないかと思うぐらいの作曲家です。語り出すとキリがないのですが,クラシック,ピアノの歴史に多大な影響を与えた人物です。
 リストにまつわる話として,おもしろいものがあります。なぜピアノは横向きに演奏するのか。ほかの楽器は前向きなのに,なぜピアノだけ横向きなのかというと,リストがすごくイケメンで鼻が高かったので,鼻の高さをお客さんに見てほしいから横向きになったと言われています。ピアノの演奏は結構,手を見がちですが,鼻を見るというのも,一つの楽しみ方かもしれませんね。
 私は関西を中心に活動していますが,新型コロナウイルスの影響もあり,人前で演奏がなかなかできませんでした。普段は,ハンガリー料理を提供しながら,ハンガリーの作品を聞いてみるというような,ハンガリーの魅力を堪能してもらうイベントを開催したりしています。もちろん,演奏がメーンなので,演奏活動もハンガリーの作品をよく演奏しています。今日は,そのリストの作品4曲をご紹介しながら,皆様に聞いていただけたらと思っております。

異なる2つの愛

 まず1曲目に演奏しますのが,ロベルト・シューマン(1810-’56)というドイツの作曲家が結婚前夜に,奥様に愛の歌を贈りました。その曲をリストが編曲した「ミルテの花」より「献呈」という曲を演奏したいと思います。この曲は,とても華やかで私も大好きなんですが,シューマンの奥様はこのリストの編曲版を聞いて,「こんなのありじゃないわ,華やか過ぎる」と語ったそうです。
 では,まず1曲目,「献呈」をどうぞお聞きください。
(演奏)
♪シューマンの歌曲「ミルテの花」より
「献呈」 リスト ピアノ曲に編曲


続きまして2曲目は,どこかで聞かれたことがあると思うのですが,リストが作曲した「愛の夢 第3番」を演奏したいと思います。この曲は,フィギュアスケートなどでもよく使われています。曲名から同じ愛の歌と思われがちですが,実は人類愛をテーマにした曲でして,かなり壮大なテーマを感じられると思います。
(演奏)
♪「愛の夢 第3番」 リスト作曲

私も大好きな曲です。ちなみに,私は譜面を見ていないのですが,これも実はリストが始めたことです。演奏者からすると「いらないことをしてくれたな」と思ってしまうのですが,楽曲に集中できるようになりました。

練習曲に垣間見る美

 では,続きまして「ため息」という曲を演奏したいと思います。ピアニストとして大活躍していたリストは高い技術を持っていました。この「ため息」という曲は,エチュードで練習曲なので,運指の技術向上のために作られているのですが,それ以上に芸術性がとても高くて,美しい曲です。
 サブタイトルを「美しいリストの世界へ」と書きましたが,華やかさだけではなく,美しい曲もあるのだということを皆さまに聞いていただけたらと思って選曲しました。
(演奏)
♪「3つの演奏会用練習曲」より
「ため息」 リスト作曲


あっという間に最後の曲となりましたが,最後は,リストと言えばこの曲ということで,「ラ・カンパネラ」を演奏したいと思います。リストの代名詞と言われる曲ですけれども,この曲も元々練習曲です。難しい技術が詰まっているのですが,例えば連打,同じ音を何度も繰り返し弾くだとか,跳躍,たくさん飛ぶとか,大きな音で和音をたくさん鳴らすとか,そういった技術が求められます。元々ピアノはチェンバロから始まり,すごく小さい楽器だったのですが,リストのこの難しい技術に耐え得るだけのピアノが必要だということで,ピアノも進化するようになりました。そのため,リストの曲を弾くときは,演奏者側もかなり体力が必要になりました。ハンガリーでは,食べ物もおいしかったので,横にずんずん大きくなってしまいました。日本に帰ってきて,日本食を食べると元に戻りました。それぐらい日本食ってすごいんだなと思いました。
 本日は本当にありがとうございました。
(演奏)
♪「ラ・カンパネラ」 リスト作曲