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2024年5月17日(金)第4,921回 例会

SDGs未来都市「真庭」の挑戦~地域資源を生かした真庭市の取組~

太 田    昇 氏

真庭市 市長 太 田    昇 

1975年3月京都大学法学部卒業,同年4月京都府に就職し,総務部財政課長,知事公室職員長(人事担当部長),知事室長,総務部長を経て,2010年京都府副知事へ。
’13年4月真庭市長へ就任し,現在3期目。SDGsを旗印に,地域資源を活かした木質バイオマス発電事業など,持続可能な地域づくりへ向け地方創生を推進中。

 人口減少の話ですが,2020年から’50年までの30年間に,20~39歳までの女性がどのぐらい減るのかと推定をしましたら,51.9%減で,半分強減ります。ただ,女性は子供を産む機械じゃありません。日本のジェンダー格差をなくしていくことが大事だと思っております。

農山村と都市をつなぐ

 農山村と都市との関係は密着で,今,万博で作っている木造建築物も大手ゼネコンの3社が請け負っておりますが,そのうち2社の材は,真庭市の銘建工業さんという集成材の日本一のメーカーのものです。農山村にある企業が都市とつながっている好例だと思います。
 真庭市といえば蒜山高原が有名です。市の人口は約4万1千人,面積は828㎢で,琵琶湖の1.3倍,東京23区の1.2倍ぐらいです。
 真庭の主産業は,農業・林業と言っても,工業生産高の3割ぐらいが木材産業で,人口4万1千の町に製材所は30あります。
 人口減少が進んでおり,総合計画でも’40年に3万4千人を目標にしております。初めはそれよりちょっと上目に推移していたのですが,最近は厳しい。特に出生数が減っています。合計特殊出生率(女性が一生涯に子供を産む数)も大事ですが,都市ではこれが低くなります。絶対数の出生数が大事です。
 今度の人口戦略会議で,「ブラックホール都市」という言葉が紹介されました。流入はあっても,子供が新たに生まれないから都市は消滅していくという意味です。そのために,都市集中を抑制,緩和していくことが日本の今後の行方にも大事なことだと思っております。

農山村を守る取り組み

 真庭市の「脱炭素・SDGs」に向けた取り組みを紹介します。
 まずは,バイオマス発電。これは銘建工業さん独自のものも5,000kWありますが,銘建工業さん,森林組合,真庭市が一緒になって作ったものは10,000kWです。材料はチップですが,山からの間伐材,木の根っこ,製材所の廃材など産業廃棄物をチップにして燃やします。ウッドショックで売上が下がった年もありましたが,大体毎年20億円の売上があります。税引き後の純利益は大体1億数千万円から2億円出ます。売上の1割が純利益というのは,結構優秀な会社です。借金が5億円になりますけど,無利子の5億円ですから経営は順調です。真庭市は,自然再生エネルギー100%を目指しており,中国電力を除いて62%まで来ています。ただ100%は難しいです。地域毎に電力を回していって,足りない分を調整していく地域マイクログリッドの形にすると,より安全性が高まるし,効率的になります。
 次に,生ごみと人間の糞尿を混ぜるとメタンガスが出ます。メタンガスで発電して,プラントを動かして,最後液肥を作るのを目指しておりましたが,試作で成功しました。今1,500トンの液肥が出ております。一番大事なのは重金属とか有害物質が混ざった肥料ができないことです。試作での重金属含有量は大体国の基準の1/1000以下で,安全です。真庭市全体の生ごみと糞尿を処理するために50億円をかけた建物をつくりました。狭い土地でドローンで液肥を撒けると非常に効率的な農業ができます。生ゴミが減るので,燃料費も減らせます。環境にも優しいし,年間1億円も浮くことになりました。
 「チョイソコまにわ」と呼んでおりますけれども,トヨタさん,ダイハツさん,それからアイシン(昔のアイシン精機)が中心となってAIオンデマンド乗合交通を整備しました。会員制ですが,地域の各地区に小さな停留所をいっぱいつくります。事前に連絡を入れると委託を受けたタクシー会社の車が来て,乗り合いですが,指示通りのポイントを回ります。1人でも運んでもらえます。会員制で,この4月時点で加入1,000人,3,000回ぐらい使われています。高齢化が進むと自分の車を運転しにくくなります。都市部でも移動手段を確保するのは大事なことです。国民が移動する手段を確保するのは,国,公共団体の責任だと私は思っています。

豊かな農山村を目指して

 非常にデリケートな生活保護の関係も議論いたしました。生活保護というのは権利ですが,実態を正確に把握する必要があります。今,日本全体で生活保護率が少し上がりつつあります。ちょっと前の統計だと,確か1.4%ぐらいで,真庭は0.5%です。大阪は5%を超えています。
 そういうお金を人口で割ってみると,大阪では1人当たり12万円払っています。真庭の場合なら1万2千円です。10倍違います。つまり全体の傾向として,都市集中が進めば進むほど格差が大きくなります。
 日本の場合,都市集中が異常です。都市に人口が集中するほど産業の問題も起こります。格差の中で福祉関係の費用が要ります。財政問題で言えば,今,過密対策費を相当防災対策にかけています。一方で真庭では,過疎対策にも費用をかけています。この費用を減らすことができたら,財政構造が改善するはずです。ヨーロッパとの違いはそこにあります。
 都市部も経験してまた田舎に帰った人間から見て,今,そういうふうに思っております。都市部にも豊かさはありますが,真庭の家には,井戸水があり,年間水温が変わりません。薪ストーブを使っています。そのうちホタルも観察できます。そういった豊かさを感じる生活ができます。国を挙げてバランスが取れた国づくりを進め,人口減少に対処していくことが大事だと思っています。
(スライドとともに)