1974年東京大学卒業,通商産業省に入省。同省通商政策局国際経済部,外務省ジュネーヴ日本政府代表部参事官,生活産業局,機械情報産業局,産業政策局,大臣官房等を経て,2004年製造産業局長,’06年中小企業庁長官,’07年通商政策局長,’08年経済産業審議官。(株)損害保険ジャパン顧問,独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)理事長を経て’19年より現職。
最初に,関西,特に大阪経済界のリーダーシップによって今,ここまで万博の準備が進んできたと言っても過言ではないと思っています。こうした機会をいただき,感謝申し上げます。
万博は国家事業です。起工式には岸田総理にもご出席いただきました。会期は2025年4月13日~10月13日(184日間),会場は夢洲。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」,コンセプトは「未来社会の実験場」です。会場デザインは藤本壮介プロデューサー,石川勝プロデューサーが会場運営,小橋賢児プロデューサーが催事企画を担当しています。
この春に土木工事はほぼ終わり,今は建設工事に移っています。来場者の輸送経路は,夢舞大橋を渡るシャトルバスが半分程度,直通の地下鉄が半分程度と考えています。現在153の国・地域,8国際機関が参加を表明し,既に24ヵ国が参加契約を締結しています。
企業・団体によるパビリオンは,動画でお見せした大きなリングの外側,東西の入り口辺りにあります。リングの内側の真ん中に「静けさの森」があり,その南側に8人のプロデューサーによる「シグネチャーパビリオン」を配します。その一つ,石黒浩先生のパビリオンは,テーマが「いのちを拡(ひろ)げる」。「技術の進化がいのちの可能性を拡げていく」を中心テーマに,50年後にいのちはどこまで進化してどんな幸福がもたらされるのか,1,000年後はどこまで飛躍しているのかを頭に置きながら,展示構想を進めています。
「未来社会ショーケース」では,未来の技術を示します。スマートモビリティとして空飛ぶ車を紹介し,会場へのアクセスなどにはEVバスの使用を徹底します。来場者向けパーソナルエージェントとしてスマホに会場の情報をどんどん流し,できるだけ待ち時間なく動けるようにします。多言語自動翻訳で外国人と直接会話ができる環境も整えます。
会場では毎日イベントが開催されます。今月には催事検討会議が発足し,池坊専好さん,吉本の大﨑洋さんに共同座長に就いていただきました。大催事場や小催事場など,それぞれの催事場ごとに番組表を作っていくイメージで予定を決めていきます。万博のテーマへの取組みとして,テーマウィークという形で,シンポジウムやセミナーなどを行いながら外国の皆さんも含めて交流を深めていきます。
今,万博準備全体の半分程が済んだかなという感じですが,これからどういう課題があるのか。大きくは3つで,建設を巡る課題,運営を巡る課題,機運醸成を巡る課題です。
建設を巡っては,建設費と建設事業者の確保の問題があります。建設費は1,850億円が上限になっていますが,最近の資材のひっ迫状況を見ると,いろいろ頭を悩ませながら進めなければならない状態です。建設事業者の確保も大変なのが事実。限られた予算で,ギリギリの価格を提示するので,入札不調や不落が起きていますが,テーマ館は業者未定があと2館というところまで来ており,迎賓館,催事場は設計者も施工者も決まりました。大きな課題は外国館です。各国は威信をかけて構想を策定中ですが,建設業者探しに苦労しています。BIEや各国からの期待に応えるためにも,関係省庁や我々も入って何とかマッチングが成立するよう情報交換をしています。
次に運営を巡っては,できるだけ多くの方に来てほしいと考えています。特に子どもや若者に。また,来場者を平準化することで快適に,安全に入場していただきたい。そして,入場券収入による安定的な収入を確保したい。万博は会期終盤になると混み合うのですが,混雑に対してはやはり警備に力を入れなければいけません。混雑を平準化することも重要で,入場券は,特に前売りで子どもが安くなる価格に設定しています。報道では一番高い大人一日券の7,500円ばかりがフォーカスされましたが,前売りで開幕券は小人1,000円,大人4,000円,前期券(最初の約3ヵ月間に使用可)は小人1,200円,大人5,000円。販売は前売り券に力を入れていきます。
3番目の課題は機運醸成。ロゴマークもマスコットの「ミャクミャク」も大変力強く,うまくいっていますが,日本全国では機運がそう高まっているわけではありません。機運醸成委員会を発足させ,計画を作ってしっかり実行していきます。機運醸成で,お願いしたいことが5つ。ナンバープレートを万博仕様に替えていただく,テーマソング「この地球の続きを」を流していただく,ポスターやサイネージを張っていただく,会場のフライスルー動画を流していただく,社内報に取り上げていただく。これらのことに,1社1社取り組んでいただけるとありがたいです。
今回の万博の意味ですが,コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻で世界中が分断の危機,分断の状態にあります。万博は,世界をもう一度つなげる交流の機会を提供する大きな役割を持っており,ぜひ役割を果たしたい。同時に,日本にとっても意味ある万博にしたい。ジェンダーバランスが取れたり,ハンディキャップを持つ人が普通の人と同じように楽しめたりといった社会を作ることに寄与する,あるいは若い人が世界とリアルに接触できる機会にする。併せて日本を外国の方々によく見てもらう機会にできればと思います。
主催者はお祭りの幹事のようなもので,何よりまず参加する国,来場者が楽しめるようにすること。日本人が得意とする「おもてなし」の心を最大限発揮して参加国を迎え入れ,国民全体が同じ船に乗り,「万博の成功」というゴールに向かって進むという気持ちで取り組むことが重要です。残り半分をあと2年弱でどう仕上げるかが,’25年4月13日を迎えるにあたってのポイントですので,最後までご支援をいただきたい。抱える課題は難しいものもありますが,皆で力を合わせて乗り越えたいと思います。
(スライド・動画とともに)