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2023年4月7日(金)第4,874回 例会

ブルーオーシャン・プロジェクト

更 家  悠 介 君(化学工業)

会 員 更 家  悠 介  (化学工業)

1974年大阪大学工学部卒業。’75年カリフォルニア大学バークレー校修士課程修了。
’76年サラヤ(株)入社。工場長を経て’98年より現職。’89年日本青年会議所会頭。大阪商工会議所常議員,(公社)日本食品衛生協会理事等を務める。2010年 藍綬褒賞,’14年 渋沢栄一賞受賞。
著書:『地球市民宣言 ビジネスで世界を変える』
1996年当クラブ入会,2001年幹事,’03年理事・国際奉仕委員長。

 今日はブルージャケットで話をさせていただきます。これから2年半ぐらいは,これでずっと通そうと思っています。プラスチック海洋汚染防止と海の豊かさの持続的活用に向けて「ブルーオーシャン・プロジェクト」に取り組もうと思っているからです。2025年の大阪・関西万博でパビリオンを出すと決め,「ブルーオーシャンドーム」としました。

ビジネスの力で世界を変える

 実は「ヤシノミ洗剤」が環境を破壊していると言われ,調べるとボルネオの熱帯雨林がパーム園で狭まっているというので環境保全の運動を始めたり,アフリカの衛生開発をやったりしています。それが段々と高じ,『地球市民宣言ビジネスで世界を変える』という本を書きました。地球規模の問題では国の役割が大きいですが,平行して我々は,地球の空気や水,温度といったことに個人も企業も「地球市民」として取り組まないといけない。言葉を替えれば「SDGs」。サステナブルな地球を次の世代に残しましょうと。17の目標で’30年まで続き,いろんな企業も熱心に取り組むようになりました。ビジネスの力を通じて世界を変えていこうということです。
 スイスのポリマ財団が運用する「ポリマ号」は石油を一切使わず,100%リニューアブルエネルギーで動く船で,プラスチック海洋汚染のキャンペーンのために世界を周っています。東京五輪の時に来てもらって海を汚してはいけないという訴えをしたかったのですが,コロナ禍でそれどころでなくなった。せっかくの船なので,「日本の万博のアピールを」ということで万博のスペシャルサポーターにしてもらい,(’22年3月に)ドバイ万博で大阪万博のアピールを民間的にしました。

世界の海で進むプラスチック汚染

 ’21年10月に関西経済同友会で対馬を訪問しました。ここも随分とひどく,雨が降ると15分ぐらいで海岸にごみがいっぱい集まる。大体,年間2万~3万㎥,海流が中国やフィリピン,台湾,韓国のごみを運んできて,対馬は何も悪くない。プラスチックは紫外線や波の力で分解し,マイクロプラスチックという目に見えない大きさになります。これを分解する自然のエンザイム,酵素はなく,それ以上分解されません。なので,プランクトンや魚の体などを回り,最後は人間の体にも来るリスクがあります。実は,世界中でプラスチック汚染が非常に進んでいます。
 プラスチックでこれだけ汚れていて大丈夫なのかと議論していて,つい勢い込んで大阪・関西万博でブルーオーシャンドームをやろうということになりました。世界的な建築家の坂茂さん,日本を代表するデザイナーの原研哉さんにパビリオンを支えるチームに加わっていただき,進めています。ドームはおまんじゅうが3つ並ぶ形をしていて,竹とカーボンファイバー,紙を使った,軽い構造物です。人類が直面する課題とその解決方法を展示やイベントなどで示していく構想です。
 私が理事長を務める「ゼリ・ジャパン」(ZERI=ゼロ・エミッション・リサーチ・イニシアチブ,「廃棄物排出ゼロは自然にならえ」を理念とするNPO法人)と,(持続性・実効性ある海の保全と繁栄を両立した課題解決を目指す,企業連合によるプラットフォームの)「ブルーオーシャン・イニシアチブ(BOI)」,(日本経済新聞社などが創設した)「ブルーオーシャン・フォーラム(BOF)」に,いろんな企業に入ってもらって進めていきます。’22年6月にリスボンであった国連海洋会議には海をビジネスのチャンスとしてやろうというグループの人も多く参加し,我々も分科会を開催するなどしました。BOFも’22年12月にキックオフのシンポジウムを開いています。
 対馬市とは’22年9月に連携協定を結びました。ビジネスを通じて対馬のアイランドモデルを作っていこうというものです。これまでの,モノを作って消費して廃棄する「リニアエコノミー」から,作って消費してリサイクルして回す「サーキュラーエコノミー」を島の中で実践できないかというのが一つの方向感です。電気を作ってEVを走らせようとか,食品や農業由来のバイオマスでメタン発酵をしようとか,新産業を作って太平洋の島国にビジネスとして移設しましょうと。
 アフリカ西海岸のモーリタニアは漁場的にはリッチですが,最貧国の一つ。今ここで,サスティナブルな漁業と住民還元のプログラムができないか,研究しています。網を一切使わずにバブルフィッシングができる船を造って漁をするという提案があり,スポンサーが付いたらやろうと。「ラピッドフリーザー」は冷凍液に食材を浸すことで高品質な急速冷凍を実現した冷凍機です。これを使ってウガンダのカンパラにある日本料理レストランに,ケニアのモンバサで揚がった魚を届けるビジネスを始めている人がいます。こうしたことをモーリタニアでもできればと思います。
 海藻プロジェクトですが,海藻を1t養殖すると120kgの二酸化炭素が吸収されます。昆布は陸上の木よりも7,8倍の早さで大きくなります。海の中のカーボン,海の森を作って魚も寄せ,かつ,その活用によって新しいフロンティアができないかという話です。

SDGsを考えてビジネスを

 ビジネスにはイノベーションが必要です。(今の社会を作ったイノベーションを起こした一人で,アップル創業者の)スティーブ・ジョブズは“Stay hungry,Stay foolish”,「何でも貪欲になってみろ,ばかでいて常識にとらわれるな」と言っています。私はまねができないので,社会の矛盾に心の中で静かな怒りを持ち,それをビジネスでやっていこうと思って実行に移しています。「経済なき道徳は寝言」と言った二宮尊徳は「道徳なき経済は頽廃」とも言っています。経済の裏に社会とのあり方や道徳というSDGsをちゃんと考えてください。渋沢栄一も同じようなことを『論語と算盤』で言っている。こういうことにならって我々もSDGsに取り組みたいというのが結論です。
(スライドとともに)