(米田会員)古瀬まきをさんはソプラノですが,ソプラノにも種類があり,例えばコロラトゥーラは,曲芸のように声を転がして高い声を出します。レッジェーロは軽いという意味で,軽さと優美さを兼ね備えた声です。リリコは抒情的な声。スピントは劇的な力強い声を出す。彼女はおそらくレッジェーロ。軽やかに優雅な声ながら,コロラトゥーラ,高い音を自由自在に出す技術も獲得しておられ,非常に表現力豊かな声だと思います。
伴奏者の次郎丸智希さんは作曲家であり,ピアニストであり,朗読家という多才な方です。文学と音楽両面からアプローチする独特の作風で,多くの作品も発表されています。
♪アレルヤ モテット「踊れ,喜べ,幸いなる 魂よ」より W.A.モーツァルト作曲
(古瀬氏)この曲は,モーツァルトが17歳の時に,当時活躍していたカストラート歌手のために書いた曲です。今日では重要なソプラノのレパートリーになっています。
続いてはドイツ歌曲を2曲。「クローエ」は,聞くと可憐な感じですが,実はとても濃厚なラブシーンの音楽で,恋人たちの息遣いが聞こえてくるような,とても素敵な楽曲です。「歌の翼に」は,よくご存じかと思います。恋人に「まだ見ぬガンジスに君を連れていきたいんだ,そこはとっても素晴らしい場所なんだよ」ということを歌った曲です。
♪クローエ W.A.モーツァルト作曲
♪歌の翼に F.メンデルスゾーン作曲
外国歌曲の次は日本歌曲を。山田耕筰(作曲)と北原白秋(作詞)のゴールデンコンビによる日本歌曲の金字塔のような2曲です。日本歌曲は私にとってとても大切なジャンル。音楽は西洋のスタイルですが,日本人にしか分からない心の温かさ,日本にしかない風景の美しさ,そういったものがたくさん残されているように思い,時代は変わってもずっと歌い続けていきたいと思っている2曲です。
♪かやの木山の 山田 耕筰作曲
♪からたちの花 山田 耕筰作曲
楽しい時間はあっという間で,最後の曲となりました。この曲は,J.シュトラウスがF.リストと参加していた,とあるパーティーで即興演奏コーナーみたいなものが始まり,そこでポッと生まれた曲と聞いています。元々ソプラノ歌手のために作られた曲で,オーケストラ版に編曲され,耳にされることも多いと思います。私もドイツにおりましたが,冬が寒いだけでなく,暗い。暗くて長いんです。その長い長い冬が終わって春がやってきた時にパッと光が差すように一気に春になるのを私も体験しました。これが春の歌が多い理由なんだなと思ったのを覚えています。
日本も世界も気持ちがふさいでしまうようなことが多いですが,皆様に明るい春がやってきますように,そして,2023年が素晴らしい年となりますように願いをいっぱい込めて演奏させていただきます。
♪春の声 J.シュトラウス作曲
♪( アンコール)踊り明かそう F.ロウ作曲 ミュージカル「マイ・フェア・レディ」より
(上山会長)感想を述べよということですが…。ブラボー‼ありがとうございました。
相愛大学卒業,京都市立芸術大学大学院修了。平成25年度文化庁新進芸術家海外研修員。第15回松方ホール音楽賞,第24回奏楽堂日本歌曲コンクール第1位,中田喜直賞,他多数受賞。ヘンデル「エツィオ」(日本初演)フルヴィア,「フィガロの結婚」スザンナ,「魔笛」パミーナ役など様々なオペラに出演。宗教曲・管弦楽曲のソリストとしても出演を重ねる。オペラ「人間の声」での演唱に対し第40回音楽クリティック・クラブ賞奨励賞,令和元年度大阪文化祭奨励賞。’19年兵庫県立芸術文化センターワンコインコンサートNo.1アーティスト。同志社女子大学嘱託講師,相愛大学,大阪音楽大学非常勤講師。’21年,初アルバム「詩(うた)が咲くとき」をリリース。
作曲家,ピアニスト,朗読家。福岡出身。大阪大学文学部卒業(音楽学),同大学院修了(ドイツ文学),神戸大学大学院人間発達環境学研究科・博士課程修了(人間表現専攻)。第17回万葉の歌音楽祭・大賞,第28回TIAA全日本作曲家コンクール(重唱・合唱の部)第1位受賞。現在,大阪音楽大学講師(ドイツ詩歌),お茶の水女子大学講師(ドイツ歌曲),神戸日独協会理事,女声合唱団「グーター・コンパス」代表。主な作曲作品に『百人一首』『万葉名歌集』,『アマビヱ』三部作,ミュージカル『真夏の夜の夢』,ピアノデュオ『MUSEUM』,女声合唱と語りのための『空蝉と光源氏』他多数。You Tubeチャンネル「次郎丸智希」にて過去の演奏・作品を好評配信中。