1976年大阪市住之江区出身。大学時代に障がいをもつ男性の入浴介助に携わったことをきっかけに,仲間とともにサークルを立ち上げる。以降,大阪を拠点に障がい児・者,子ども・若者の支援活動を続けながら,社会福祉領域における課題解決に挑む事業体の設立に携わる。
NPO法人edge代表理事,一般社団法人FACE to FUKUSHI共同代表。近畿大学非常勤講師。愛読書は『キン肉マン』。座右の銘「へのつっぱりはいらんですよ」。
障がい者といったら,皆さんどういうイメージを持たれていますか。例えば仕事ができないとか,代わってバザーで売ってあげなければならないみたいなところがあると思うんですけれども,私たちはそのあたりを変えていけないかということにチャレンジいたしまして,愛知県豊橋市にある「久遠チョコレート」というところと連携をして,障がいを持たれた方とチョコレートを作っています。クオリティの高いものをつくろうということでパティシエさんに協力していただき,「久遠チョコレート」は全国で40店舗展開しています。
1枚1枚障がいを持つ人たちが丁寧に作っています。こんな時代が来るとは思わなかったんです。障がいを持った人たちが作ったから買ってくれということではなくて,すばらしい商品,おいしい商品と言われるものを提供しています。最近,北新地の入口のところに(フランチャイズの)お店を構えました。実は,このチョコレート,ものすごい重度の障がいの人たちもやっています。チョコレートというものは,一度失敗しても,もう1回溶かすことができるんですね。だから廃棄することもなくて,もう1回溶かしてさらにチャレンジできる,こういうところにも目をつけて取り組んでいます。
19歳の時,友達から電話があって「簡単で楽なアルバイトがあるぞ。じいちゃん,ばあちゃんの横に座るだけでいい」と。バイクが欲しかったので,すぐに飛びついたんですね。自分から福祉センターに電話しました。「週5で,何なら週7でやります」って言ったんです。当日センターに行って,「障がいを持った人たちの入浴介助に入ってもらうんだよ」って言われて,僕は声も出なかったんですが,知的障がいと身体障がいの重複障がいをお持ちの方の入浴介助をするというスタートになったんです。
その本人さんは40歳ぐらいで,お母さんは65歳,2人で生活をしてはるんです。そういう流れで入浴介助をすることになって,家に入っていったときに,今まで見たことのないぐらいの量の唐揚げとご飯。お金を稼ぎにいこうと思って間違えたところが,重度の障がいの本人さんと,65歳の腰の曲がったお母さんが僕を楽しみに待っていたんです。
僕は入浴の介助は,その時が初めて。お風呂から上がったときに,そのお母さんが大きなバスタオルを持っていて,「ありがとうね,ありがとうね」って言われたんです。そんなことが続いて,気づかされることになったのは,障がいを持った人たちの親亡き後の問題なんです。自分が亡くなった後,この子がどのように地域で暮らしていくのかっていうようなところで,僕は,障がいを持つ人たちを地域で支えることが仕事にならないのかなと思ったんです。それで高校時代,大学時代の友達だけで起業した次第なんです。
今では知的障がい者の在宅の支援だけではなくて,例えば不登校であったりとか,発達障がいを持っている子どもたちの支援であったりとか,例えばニート,引きこもりと呼ばれるような人たちの居場所支援であったりとか,就労の支援みたいなことをやっています。
不登校を経験してきた子どもたちが成長すると,やはりなかなかアルバイトにすらつけない。ついても,真っ先にカットされたりしていくわけです。例えば,障がい者就労をしている企業もそうです。真っ先に障がいを持った人たちからカットされていくんです。
こういう世の中を変えていきたいなというところで,われわれは制度を生かしながらも,制度では足らないところの支援をどう作っていくのかというようなNPOを実践したい,ということを思って今まで活動してきています。
われわれは今後,若者たちや障がいを持たれた人たちの就労に力を入れていきたいと思っています。彼らが何もできないわけではなくて,社会で何かしらその人たちのSOSに気づいて支援をすることができれば,早くに子どもたちにリーチすることができれば,子どもたちは変わっていきます。できることが増えていきます。選択肢が増えて,自分がどんな仕事がしたいとか,どんな地域で暮らしていきたいのかとか,どんな夢を持っていいのかとかっていうようなことになります。今後大切なことは,そのスタートラインに立てる子どもたちをどう守っていくのか,ということが大事だなと思っています。
これから一つ提案したいのは,SDGsであったり,CSR(企業の社会的責任)であったり,社会貢献というところでいくと,僕,採用のマッチングみたいなことのお仕事をして,今までに学生2,000人ぐらいのボランティアを輩出したりとか,去年,一昨年でいくと,大きい福祉法人なんかに新入社員のマッチング事業みたいなことをやっているんです。
学生たちの動向を見ていると結構,企業が社会貢献にどれぐらい力を入れているのかっていうところら辺を,一つの企業ブランディングとして見ているというところなんです。
障がいを持った人たちや,例えば今,ニート,引きこもりって言われている人たちが何十万人と無業者になっています。税金も納めることができていません。
そういう人たちに,きちんとしたトレーニングによって,企業が受け入れる態勢,土壌をつくっていただけたら,人材不足の解消みたいなところになってもいきますし,また,そういう人たちが多種多様な課題を持ちながらも,その企業で働いているということが一つのブランドになって,個々の会社がそういうことに一生懸命取り組んでいるということが若い人たちの採用につながっていくんじゃないかという仮説を持って今やっています。