1945年和歌山市生まれ。大阪大学大学院経済学研究科修士課程修了,経済学博士(神戸大学)。和歌山県文化功労賞受賞。大阪府立大学経済学部長,同大学副学長,関西大学大学院会計研究科教授。大阪府立大学名誉教授。
この間ハーバード大学,インデイアナ大学の客員研究員を歴任。専門は理論経済学,関西経済論,経済効果分析。「経済効果ってなんだろう?」など著書多数。
いろいろな経済効果を分析してきました。今回の卓話のタイトルを決めたときは,阪神は巨人に6ゲーム,7ゲーム離して独走しており,これは大丈夫だと思っていましたが,その後バタバタと負けまして,卓話当日にはひょっとしたら阪神が2位,3位になっていたらタイトルを変えないといけないかなと心配していました。辛うじてまだ首位にいるということで,今年の秋の美酒を楽しみにしております。
経済効果とは,イベントであったり,事件であったり,いろいろな人の行動があったときにどれだけのお金が動いたかということを分析します。利益ではなく,「総売上」になります。消費者,自治体,企業が消費・投資をしたお金の総額です。
2003年に阪神が優勝したときの経済効果は1,481億円と計算しました。これは空前絶後の数字で,星野監督のときです。阪神が岡田監督のもと’05年に優勝したときの経済効果は643億円。その後の優勝チームの経済効果を見ていきますと,大体200億~400億円ぐらいですから,阪神の優勝がいかに大きな経済効果をもたらすかということがわかります。
今年阪神が優勝したらどうなるか。5月の段階で,ある新聞社から頼まれて計算したところ,621億円。やはりかなりの経済効果ですが,阪神が優勝街道をばく進すれば,さらに増えることになるでしょう。阪神優勝が関西の経済には非常に大きなプラスになることがおわかりいただけると思います。
コロナ後に,関西経済を立て直すためにはどうしたらいいかということをいくつか申し上げたいと思います。
まず最初に,モノづくりをしっかりやっていただきたい。’10年に「平城京遷都1,300年祭」が行われ,多くの観光客を集めました。10年がたち,奈良の新聞社から「(公式キャラクターの)せんとくんの10年間の経済効果を計算してほしい」と頼まれました。せんとくん関連のお菓子やお土産がどれだけ売れたか,観光客がどれだけ増えたかということで計算したところ,10年間で2,000億円という結構大きな数字が出ました。しかし非常に驚いたことに,実際に観光客が泊まったり,モノを買ったり,食べたりした金額よりも,経済効果の方が少なかったのです。
一体どういうことでしょうか。例えばせんとくんのおまんじゅうが奈良で売れたとします。ところがそのおまんじゅうをつくっているのは京都のお菓子屋さんだった場合,1,000円のおまんじゅうのうち,500円は原価として京都に流れます。経済学でいいますと,その地域の自給率が低い,つまり自分のところでモノをつくってないというわけです。外でつくられたモノをある場所に持ってきて売っているだけで,そこにはお金がたまっていかないのです。モノづくりの大切さを絶対に忘れてはいけないということです。
これからの大阪経済にとっては,情報化,IT,ロボット,医療,そういった分野でモノをつくっていくことが非常に大事です。ある順位があります。1位が米国,2位がシンガポール,3位がデンマーク,5位に香港,8位に韓国,11位に台湾,16位が中国,日本は27位でした。何のランキングかおわかりでしょうか。これは,国際経営開発研究所が毎年発表している「世界のデジタル力ランキング」です。デジタル化に日本はいかに遅れているか。日本の順位は毎年落ちており,非常にゆゆしきことだと私は思っています。
コロナ後の大阪・関西経済の活性化策として,観光は非常に大事で,訪日外国人の誘致に力を入れることが重要です。6~7年前,上海のラジオ局が,初めて日本に観光に行く上海の人たち30人を対象に,「日本に行ったらまず何をしたいですか?」とのアンケートを取りました。最も多かった回答は,「水道水を生で飲みたい」でした。アジアの国々で水道水はほとんど飲めません。2番目に多かった答えは,「青信号になったとき,目をつぶって横断歩道を歩きたい」でした。いかに日本が安心・安全で,ルール通りにきちんとしているかということを中国の人たちも認めているわけです。
2025年大阪・関西万博,IRを成功させることも非常に重要なことです。開催期間中だけでなく,万博が終わった後も大きな経済効果をもたらします。万博に来た外国の人が日本のファンになり,リピーターになっていただけることも大事です。
最後に人生・ビジネスの成功の秘訣についてお話しします。私の大学時代の友人に,松下幸之助さんの晩年の秘書がいます。彼によると,幸之助さんは「常にコツコツ努力をして,人に感謝して,運をつかむことが大事だ」「困ったときにはいろんな人が助けてくれた。自分の友人であったり,先輩であったり,後輩であったり,そういういろんな人たちの人間運,仕事運に恵まれて成功した」と話されていたそうです。
では運をつかむためにはどうしたらいいのでしょうか。それは,運をつかんで成功している人,自分より能力のある人,自分より頑張っておられる方とおつき合いをして,その運を少しずつ自分で学んで受け継いでいくことです。皆さんは大阪RCで非常にすばらしい運のある方々とおつき合いをされています。この運をいかして,今後ますますご自分の人生,またお仕事の方を発展させていただきたいと思います。
(スライドとともに)