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2024年4月12日(金)第4,917回 例会

職場愛が止まらないコーチングコミュニケーション

曽我部  聡 子 氏

Lana blooming 代表
メンタルコーチ・研修講師
曽我部  聡 子 

大阪女学院短期大学英語科卒業後,大阪ガス(株)に入社。経営調査部にて6年勤務して退社後,子育て期間を経て2014年にコーチングを学ぶ。以後,アドラー心理学に基づくコーチングを教える講師としての講座実績は300回以上,個別での相談は毎年100回以上。現在は企業にてチームビルディングやマネジメントの研修も行っている。

 コーチングコミュニケーションの専門家として,少しでもお役に立てることがあればと思っております。テーマは「職場愛が止まらないコーチングコミュニケーション」としました。「職場愛の効用」,「コーチングとは」,「目的論」,「勇気づけ」ということでお話しさせていただきたいと思っています。

職場愛で心の景気改善へ

 社員が職場で,仕事やチームのメンバーを愛せるようになったら,どんなにすばらしいことがあるでしょう。まず,仕事にやりがいを持っていたり,チームのメンバーや上司,部下との信頼関係が築けている場合,ストレスが減ります。人間関係の問題もなく,良い環境で仕事ができるとミスも減ります。仕事をするのが楽しくなり,「この会社で働きたい」という人が増えるので,離職率も下がります。モチベーションが上がり,仕事にやりがいが生まれます。すると,コミュニケーションの量と質が改善します。社員同士で話がしやすくなれば意見が活発に交わされ,アイデアが出やすくなります。アイデアが形になり,世の中に広がっていけば自然に売上も上がるのではないでしょうか。
 心の景気をよくすることが,結局世の中の景気をよくすることにつながると私は信じています。
 心の景気をよくする上で大切なコーチングとアドラー心理学をご紹介させていただきます。
 コーチの語源である馬車を現代風に言うと,タクシーが似ていると思います。タクシーは,乗ると2つのことを聞かれます。まず「どこに行きますか?」という行先と,「どの道を通っていきますか?」と行き方です。その時に,行き先も大事ですが,こだわりの行き方があると思います。「急いでいるから高速を使ってほしい」とか,「この景色を見たいのでこの道を通ってほしい」というものです。なので,タクシーの運転手は,安心安全に行きたいところに,その人の行きたい方法で連れて行くことが仕事になります。
 コーチの仕事も実は似ています。コーチングの場合は,その人がどんな人生を生きたいのか。どんなキャリアを積んでいきたいのか。子どもなら,どんな大人になりたいのか。目的地に向かって,挫折しないその人らしい生き方を一緒に探します。
 ただ,運転手とコーチは似ていますが,決定的に違うところもあります。タクシーに乗った時に,「どこに行きますか?」と聞かれて「わかりません」と言う人がいたとしたら,「思い出したらもう一回乗ってください」となりますが,コーチングの場合,「あなたはどんな人生を生きたいですか?」と聞いて,「わかりません」と答えた人に対しては,「では,それを一緒に見つけましょう」と言うのがコーチです。
 そこが,決定的に違います。コーチはその人の行きたい未来を一緒にみつけるのが仕事になります。例えば上司が部下から気持ちを聞いたり,可能性を引き出すことができるといいと思います。しかし,私たちの意識は,できていることより,できないことに目が向いてしまいがちです。そうなると,チームの中のコミュニケーションが悪くなってしまいます。そこで,ご紹介したいのが「目的論」という考え方です。

目的論で活性化する組織

 「目的論」を活用できると,その人のいいところを伸ばすことができます。目的論は,アルフレッド・アドラーという精神科医,心理学者の考え方です。
 考え方の違いを説明しますが,誰か怒っている人がいるときに,原因論で考えると「あの人が怒っている理由は」と原因や過去を追求するものです。一方で目的論では,「怒って何を得ようとしているのか」と未来や目的を追求するものになります。
 モノが壊れたときにどうやって直すとうまくいくかということを考えると,ステップ1で悪いところを見つける,ステップ2は直す,ステップ3はうまくいく,となるでしょうか。モノを直すときには「原因論」が有効です。
 今度は人に当てはめるとどうなるか。例えば,その人は複数の特徴がある魅力的な方ですが,わがままという特徴を持っていたとします。この特徴を直してほしいときに「目的論」で考えるとうまくいきます。まず,増えてほしい特徴を考えます。「わがまま」の反対は「思いやりがある」ですので,そういう部分をみつけて,指摘します。すると自然に増える,という流れです。意識したものが増える脳の仕組みを利用しています。モノや仕事については原因論,人に関しては目的論で関わるとうまくいきます。

勇気付けることで元気な職場に

 次に,信頼関係を築くための「勇気づけ」を行う際の注意をご紹介したいと思います。
 1つ目は,「人との比較を重視(個人間評価)」です。例えばチームの中で,「あの人はできるのに,君はできない」と比べると勇気をくじいてしまいます。対して,「個人の成長を重視(個人内評価)」すると勇気づけになります。「昨日よりできてたね」という個人内を比べる視点は勇気づけになります。
 そして,2つ目は「成果のみを重視」です。成果は大事だと思いますが,それだけを見てしまうと失敗したときには勇気をくじいてしまいます。「過程も重視」することが大事になります。
 そして3つ目は,一方的に判断・評価・分析・解釈するのは勇気をくじきます。何か失敗したときに「どうしていつもそうなんだ」と指摘してしまうと,完全に勇気をくじいてしまいます。相手の判断・評価・分析・解釈を聞いた上で勇気づけるためには,理由をきちんと聞くことが大事です。
 コーチングを皆さんにお届けしたいと思ってお話しさせていただきました。職場改善のきっかけになればと思います。
(スライドとともに)