大阪ロータリークラブ

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2020年8月7日(金)第4,759回 例会

人生もロータリーも100年に向けて

佐 川  泰 宏 君(教育)

副会長
クラブ奉仕(戦略計画)委員長
佐 川  泰 宏  (教育)

1970年関西学院大学卒業。(株)東京アカデミー入社。’88年同社代表取締役社長・理事長就任,現在に至る。ティーエーネットワーク(株),大東廣告(株),七賢出版(株),テレコムスタッフ(株)(「世界の車窓から」「迷宮美術館」等の映像制作)などの代表取締役社長兼務。2006年当クラブ入会,ローターアクト委員長,理事・友好委員長,ロータリー情報委員長を歴任。
米山功労者マルチプル。PHF。

 いきなりですけれども,皆さん「楢山節考」という小説を覚えておられますか。1956年に中央公論新人賞をとった作品です。作者は深沢七郎さん。映画化も2 回されています。

「楢山節考」から人生100年時代へ

 テーマは姥捨て山です。この小説の中で「楢山参り」という言葉が出てきます。山に捨てられるときですね。その年齢はいつか。この小説には「70歳」とあるんです。要するに「口減らし」の物語です。戦後間もない時代でした。しかし,その後日本は高度成長を遂げて,今は「人生100年」と言われています。
 今,日本では100歳以上の方が7万人いるんです。わが大阪RCも,10年を待たずして100歳の方が続出することになると思います。非常にめでたい話だと思います。
 一方,年齢の話をすれば,どうしても人口の話をしなければならないと思うんです。日本の人口は1940年前後,太平洋戦争が始まった頃には7,200万人でした。70年後の2010年頃に1億2,700万人まで増え,ここから下降に入っていくわけです。70年後,7,200万人ぐらいに戻るようです。
 1億2,700万人が7,200万人になるのは,大体4割減るということです。4割減るというのはどんな感じか。最近テレビで,コロナの前と今の人出を比べる街の映像が出ています。あんな感じなんですね。4割減れば本当に通りが寂しくなる。
 今,日本が抱えている大問題は山ほどあるでしょうけども,2つだけ申し上げたい。1つは少子化の問題,もう1つは経済格差の拡大です。両者には密接な関係があります。
 この20年間,若者の可処分所得は下がりっ放しなんです。非正規の社員が多いからです。全従業員の3分の1ぐらいが非正規です。同じ仕事でも手取りが半分しかない。そういった人は100万人と言われています。
 少子化の原因は何か。この経済の問題が非常に大きいと思います。例えば結婚しようと思っても,結婚できない。あるいは遅くなる。仮に結婚しても子どもをすぐつくれない,あるいはつくらない。

非正規1 0 0 万人と社会不安

 この人たちをどうしたら救えるか。ようやく政府も重い腰を上げまして,就職氷河期世代の人を救おうとプロジェクトを立ち上げたんです。地方自治体も採用を始めましたが,大体2~3人の枠ですね。焼け石に水で,やらないよりはましというレベルだと思います。
 国も採用をやります。ただ,今回採るのは157名で,さっき申し上げた100万人を救う手立てにはなりません。
 そういった人がいる一方で,1億円以上の金融資産を持っている人が日本には300万人いる。この格差が一体どうなるのか。広がれば社会不安につながっていくと思います。
 話をロータリーに戻したいと思います。東京RCは今年で100周年,大阪RCは再来年で100周年を迎えます。すごい数字です。どんな企業でも組織でも,100年もつというのは大変なことです。何か必要とされる存在理由があるからこそだと思います。
 それでは大阪RCの100年を今後どうやって迎えていくか。堀会長が7月3日におっしゃったように,ロータリーの今後を示すのは「親睦と奉仕」と思います。
 親睦とは何か。おつき合いして仲良くなる,そこでいろんな影響を受ける,人間性に触れる,人脈もできる,そうすると人間性に膨らみが出てくるわけです。それが「ソーシャルキャピタル」です。日本語に訳せば「社会的資産」。それを社会に返す,これが「奉仕」ではないかなと思うんです。
 この後のクラブフォーラムで,クラブビジョンについての討論をやりたいと思いますけれども,大阪RCのビジョン案として出ていたのは,こうです。
 前文「大阪RCは,100年にわたるロータリー活動に誇りを持ち,これからも社会の変化やリスクに対応しながら,生き生きとしたクラブであり続けるために次のクラブビジョンを掲げます」。本文「会員のそれぞれの自発性と多様性を尊重し,互いに手を取り合い,自己研鑽と奉仕活動を通じて,次の世代と共に持続可能な社会の実現を目指します」。これが策定されたクラブビジョンであります。

奉仕活動のビジョン

 もうちょっと具体的な奉仕活動の指針というのが出ておりまして,4つあります。
1.奉仕活動を通じて連携し,会員が自らの人格を高める。―これは奉仕と自己研鑽の互酬性ということです。
2.時代にふさわしい社会が求める奉仕活動を行う。―これは社会への有益性です。
3.会員の専門力を生かした奉仕活動を行う。―これは活動の多様性であります。
4.次の世代と共に活動し,人を育てる活動を行う。―これは,活動の活性化と継続性を指しております。
 すばらしいビジョンです。これを具体的にどう現実に落とし込んで実行するかが,これからのわれわれの課題ではないかと思います。
 まさしく,ポストコロナの不透明な時代に,持続可能なわれわれの活動とは何か。それは「親睦を通して得たソーシャルキャピタルで可能な奉仕を社会に返す。そのことによってより良い日本の将来を築く一助にしたい」と,こういうことだと思います。