大阪ロータリークラブ

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2020年7月3日(金)第4,755回 例会

「新年度を迎えて」

堀  正 二 君(内科医)

会 長 堀  正 二  (内科医)

1970年大阪大学医学部卒業,医学博士。’96年大阪大学医学部第一内科教授,2005年臓器別編成にて,循環器内科学初代教授,’08年大阪府立成人病センター総長,現在,大阪国際がんセンター名誉総長。日本心不全学会理事長,国際心臓研究学会(ISHR)理事長, (公財)大阪対がん協会会長,国立循環器病研究センター理事などを歴任。’04年当クラブ入会,’08年健康を守る会委員長,その他委員会の副委員長歴任。米山功労者(M)。

 本日は新年度最初の例会ですので,所信表明も兼ねてご挨拶申し上げます。

コロナ下での活動

 今年2月に始まった新型コロナウイルスの感染拡大は我々にとって深刻なハザードであり,想定外のリスクとなりました。人と人との接触が感染拡大の最大要因です。ロータリーにとっては一番痛いところを突かれたということです。人と人とが集まれない。
 新興感染症に対する基本的な考え方の1つに,その抑制は社会の行動目標であり,個人の人権を侵害しない範囲で優先されるということがあります。緊急事態宣言が出て集会は自粛してくださいということになれば,ロータリーの例会も自粛せざるを得ない。
 イベント・集会では「持ち込み感染」と「持ち出し感染」の防止が大切です。「ロータリーの例会でうつった」と言われないようにしなければいけません。食事の間はしゃべらないでいただきたい。ワクチンが普及するまで恐らくこれが続くと思います。ぜひご協力をお願いしたいということでございます。
 このコロナ禍で,私には「ロータリーって何なの?」と考える時間ができました。何でリスクをおかしてまで例会を続けるのか。その疑問について,私が考えたことを披露させていただきたいと思います。
 2020~21年度のホルガー・クナークR(I国際ロータリー)会長のメッセージをお伝えします。「Rotary Opens Opportunities=ロータリーは機会の扉を開く」というテーマです。会長がおっしゃるRIのコアバリュー(中核的価値観)とは,親睦・高潔性・多様性・奉仕・リーダーシップですが,その中で親睦と奉仕がロータリーの2大柱です。
 なぜ親睦と奉仕が必要なんでしょうか。親睦って,皆仲良くしゃべっているだけじゃないか。それがどうしてロータリーの一つの柱になるのかが分かりませんでした。

人類史とロータリーの理念

 たまたまですけれども,最近の話題作である「サピエンス全史」(ユヴァル・ノア・ハラリ著)を読みました。現生人類(ホモ・サピエンス)の源流にネアンデルタール人とホモ・サピエンス(クロマニヨン人)が存在しましたが,身長はほとんど同じで,脳の大きさもほぼ同じ。何が違ったのか。
 会話能力です。ホモ・サピエンスは会話能力が優れていて,群れをつくることに長けていたんです。ネアンデルタール人は絶滅しましたが,ホモ・サピエンスは瞬く間に全世界に繁栄を築いた。会話能力の何が違ったのかが「サピエンス全史」に書いてあるんです。
 1番目は周辺の情報の共有。ただこれは昆虫・鳥・動物に共通です。2番目,これが大事なんですが,群れの構成員の情報をコミュニケーションするようになった。あいつはサボりだよ,あいつはまじめにコツコツやるねというように噂話をするようになった。構成員を評価し,個性を認め合うようになった。
 個性や多様性を容認できるかどうかは組織や集団にとって非常に大事です。たわいもない対話や噂話でお互いを知り,個性を発見することが大事。実はこれがロータリーの親睦の基本ではないかと私は思っています。
 3番目は,バーチャルな世界を認識して,それをコミュニケーションできるということです。バーチャルな世界とは神話・伝説・宗教・死後の世界や,コロナの第2波が来たらどうしよう,そういうことですね。これが広い共通の基盤,国家的な基盤を考えるのに必要なのではないか。何か結論が出なくてもいい。会員の中でたわいもない会話をすることの重要性がここにあるのではないか。共通の概念をコミュニケーションすることが組織の維持に関係していると思っています。
 親睦と奉仕をつなげる概念としては「社会関係資本(ソーシャルキャピタル)」という考え方を提示したいと思います。その3大要素は,信頼・互酬性の規範・ネットワーク(絆)です。ロータリーは会員間の信頼とネットワークが基本。互酬性の規範というのは「お互い様」「持ちつ持たれつ」という考え方です。
 奉仕には寄付活動も入るわけですけれども,一般に寄付とかボランティア活動をすると,その行為そのものが本人の幸福感,満足感を満たします。そしてお互いの信頼とネットワークが強いほどソーシャルキャピタルの値打ちが上がるということなんです。
 ロータリー活動はそういう考え方をすれば,非常に理解しやすい。奉仕活動を活発にすればするほどソーシャルキャピタルの値打ちが上がる。私たちの目標はこの資産価値を上げることではないかと私なりに理解し,こういうことを基本にしながら一年間頑張っていきたいと考えております。

持続可能な活動を

 そのためには,持続可能なロータリー活動を続けたい。RIのクナーク会長のテーマは「ロータリーは機会の扉を開く」ですが,本年度当2660地区の簡仁一ガバナーは「BACK,to the Future=ロータリーの基本に戻って新たなる未来へ」を挙げておられます。
 私が今年度の標語を「Get over the threat,catch up our activities=持続可能な我々の活動を取り戻そう」としたのは,まさにこの一年間はこういうことをすべきであろうと。それを全うすることが,私たちのゴールではないかと考えてこのようなお話をさせていただきました。
  一年間,どうぞよろしくお願いいたします。
(スライドとともに)