大阪ロータリークラブ

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コロナと分断

会 長 稲畑 勝太郎
(化学品卸売)

 今年の年頭には予想だにしていなかった,新型コロナウイルスの蔓延による社会生活の激変,という事態に戸惑ったまま,今年もまもなく半分が過ぎようとしています。

 かつてなかったほどよく眠り,よく走り,家で晩飯を食べ続ける生活の中で漠然と頭に浮かんだのは「地震や水害の時に人々は結束するのに,コロナでは社会が分断へ向かうモーメントが高まるのはなぜか」といった疑問でした。もちろん,人の移動や接触が制限されているわけですから,そもそも物理的に分断された状況に置かれているわけですが,精神的にも分断・対立の進行を思わせる事例がたくさんありました。

 感染拡大の初期にはPCR検査推進派と反対派の対立がありましたし,「若者が感染を拡大させている」「いや,老人こそ…」といった世代間の反目,「自粛ポリス」の出現,はては「コロナ離婚」に至るまで,挙げだしたらきりがありません。家内に言わせると,私がTVに向かって文句を言う頻度も上がっているそうです。

 よく考えてみれば,多くの人は新型コロナウイルスの直接の被害者ではありません。

 現在,我が国では人口に対する感染者数の割合は累計でも0.013%,言い換えると7~8,000人に1人の割合に過ぎません(そもそも検査をしてないからだ,という話は横へ置いておきます)。つまり,多くの人にとって新型コロナウイルス感染は,既に起こった災いである地震・水害とは違って「まだ起こっていない災い」なのです。「まだ起こっていないが,これから起こるかもしれない災い」に長い時間晒されたときに心の中に起こるのは「不安」であり,不安には,日頃心の奥底に沈めていた感情や偏見を露にさせる作用があるように思います。どうやら我々が闘うべき相手は,ウイルスだけではないようです。

 先月末の緊急事態宣言の解除に伴い,手探りながらも徐々に日常を取り戻して行こうという動きが彼方此方で見られます。第二波・第三波の到来も懸念されるだけに,感染防止への注意を怠らないのは当然としても,我々の心にある「不安」とも折り合いをつけながら「新たな日常」を構築し,適応して行きたいと考えています。

 今朝(6/8)のニュースで,このような環境下で(だからこそ)これまで全く縁がなかった異業種とのコラボレーションで新たなビジネスを立ち上げたという例が紹介されていました。幸いにも世の中は分断の話ばかりではないようです。不安を乗り越え,分断から統合へ。ロータリークラブがそのような動きに少しでも貢献できればと思っております。

2020年6月15日発行