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2003年2月21日(金)第3,966回 例会

今年の関西経済

國定 浩一 氏

大和銀総合研究所 取締役社長 國定 浩一

1940年7月生まれ。'64年3月東京大学法学部卒業。同4月(株)大和銀行入行。メキシコ駐在員事務所長、新宿支店長、東京営業第三部長、虎ノ門支店長などを経て '89年5月東京企画部長。'90年6月取締役東京企画部長、 '96年専務取締役。'98年6月大和銀行退任。同年(株)大和銀総合研究所社長に就任。現在に至る。

 「大阪、関西は非常に悪い」と言う人が多い。もちろん悪いのは悪いけれど、現実に大阪におるわれわれが、大阪で何か明るい材料がないかと毎日探すのが義務やと私は思います。そこできょうは、明るい感じの話にしたいと思い、テーマの「今年の関西経済」とはほとんど関係のない話になります、申し訳ありません。

 私の本業は経済ですので一言だけ申し上げますと、今の日本経済、特に関西経済は、惨状を呈しておるという現状認識です。株価が小泉さん就任直後の半分近くに下がっているという厳粛な事実は、やはり経済が大変なんだ、今政策路線をはっきりと変更して景気回復最優先にすべきだ、財政政策をしっかりやるべきだという意見であります。

USJは大阪の“宝”

 それでは、「あかんな」ばかり言うてないで、面白いのが実はあるぞという話をさせていただきたいと思います。まずは、USJです。初年度入場者数は1,100万人。今年度は多分 700万人ぐらいやろうと言われています。この間テレビで「USJもあんな不祥事起こして、ますますディズニーランドに溝あけられますな」と言うておるんです。間違った卑下は必要ない。USJ初年度入場者数1,100万人というのは世界最速なんです。今年度は確かに減りましたが、新年度は間違いなく入場者数は戻ると思うんです。これは毎日3万人が大阪へ来る勘定で、大阪市内に甲子園球場ができてそこで毎日試合があるようなもんです。USJの調べでは、8割の人が「また来たい」、9割5分が「元を取った」と言っています。ぜひ大阪の宝を皆で大切にして、「大阪においで」、「今まで何にもなかったけど、今度はあるで」ということを広めたいと思います。

タイガースの経済効果は“ごっついで”

 もう一つはタイガース。今はやりの「経済効果」というのは、本来「対象、期間、範囲」等を限定してやらなきゃいかん。けれど、タイガースには“ごっついで”という大阪弁に該当する経済効果がある。それは何ぼやというのは、皆さんがきょう飲み屋で、「“ごっついで”と言うおっさんおるけど、何ぼやろか」と議論していただくことが経済効果やということです。甲子園で勝ってるのに、仙台で酒を飲んでるやつがおるかと思ったら、福岡でもというようなことが阪神には非常に多い。とにかく騒いでお金が動く特徴を持っています。そういうのは総研とかよりも、僕みたいに甲子園の外野席に年間30回行っているおっさんのほうが、金の動きがよくわかるわけです。

 ちょっと真面目な話に戻して、阪神ファンの特徴は、一言で言うと、“参加型”です。甲子園の観客の半分がメガホンを持ってるかはちまきをして、「かっ飛ばせぇ~檜山」とあの歌を全部歌う。自分の人生ぶち込んで応援しているという感じです。私が会社を出て甲子園に行く時の会話は「社長、頑張ってください!」「よっしゃ!きょうは巨人絞めたるわ!」。これは理論的には非常におかしな話で応援に行く者が頑張ってもしょうがない。ましてや私には巨人をどうやって絞めるかという手段もない。けれど阪神ファンはそういう気構えで行くんです。

 今度阪神のコーチになる西本が「阪神ファンは非常にいい。巨人ファンは趣味だけども、阪神ファンは生活の一部ですね」と言うんです。これをちょっと経済らしく理論的に言いますと、ベースにあるのは「反権力、反中央、反カネ」。これは、大阪を中心とした中小企業の方の考え方と似ている。ベースになるキーワードは、「2勝3敗の哲学」です。巨人ファンは5勝0敗やないと気が済まんらしいですけど。2勝3敗、阪神の勝率ぐらいで我慢して人生楽しんだほうが楽しいよという哲学なんです。もう一つのキーワードは、「ボトムラインからの出発」。つまり、常に負けるのを前提として、勝ったぶんだけ楽しめばいいというような精神です。決してこれは敗北主義ではありません。

 阪神の攻撃時にトイレに立った人に、82歳の応援団長が「コラぁ~、ションベン行くな!」と怒鳴ったんです。けれど攻撃終了後の団長のフォローがいい。「さっきえらいきつう言うて悪かったな。そやけど、巨人が攻撃してる時に弁当食べたり、トイレ行き~な。ほんなら、松井のホームランも清原のホームランも見んで済むで。5対3で負けても3対0で勝ったと思っとったらええねん。悪かったな」さすが団長82歳。そういうふうにきちんとした哲学が出来上がっているんです。

大阪には強いリーダーシップが必要

 参加型であって、しかもベースに哲学がある。経済に結びつく関西人の特色は何かというと、行動に皆がちょっとずつ移すということです。去年「ミスタールーキー」という映画ができました。長嶋一茂がマスクをかぶってアルバイトピッチャーで出て、巨人と競り合って最終試合に勝てば優勝という内容。阪神が4年連続最下位のときに、こんなアホかと言われるような映画を企画したら大ヒットした。これは、関西の中小企業の発展する一つのキーワードに通じると思うんです。アホかと言われるアイデアを、自分の企業の本業で実行したら、結局は成功するということの例です。関西人の特徴は、乗りやすい、ワーッと行く。しかし、リーダーがおらんと乗らへん。自分でリーダーシップをとりたがらない。つまり大阪にはリーダーが必要なんです。

 「國定さん、そしたらタイガースが日本経済を救いますか」と質問をいただきますが、「そんなことはあり得ない」というのが答えです。日本経済はやっぱり小泉さんがきちんとしてもらわんとあかんのですから。