1939年茨城県生まれ。土浦一高,慶應義塾大学出身。夏の甲子園全国高校野球大会出場。大学時代主将・遊撃手で神宮の花形選手として活躍。62年阪神タイガース入団。74~81年阪神コーチ・二軍監督。82年同監督。85年毎日放送解説者,87年ヤクルトスワローズヘッドコーチ。90年ヤクルト退団,毎日放送解説者。
昨年のタイガースは圧倒的な強さで,ぶっちぎりの優勝でしたが,こういうことはもうないと思います。毎年6月ごろには落ちる繰り返しで他球団がマークしてなかったこともあり,すべてうまくいきました。さて今年ですが,ライバルチームから紹介しましょう。
ジャイアンツは,すごい補強をしました。こんな打線は,私も昭和37年にプロに入って以来,見たことがない。これで二岡が3番にでも入れば,1番から8番まで皆ホームランを打てる。ホームランが大事なのは試合を変え,一気に流れを持ち込めるからです。
特に今年,近鉄から入ったローズがいい。セ・リーグに移りタイガースのライバルになるので改めて見直しましたが,ミートがものすごくうまい。打率と共に勝負強さを身に付けますますホームランを量産しそうです。今,高橋由があまりよくなく,ローズやペタジーニらがカバーしています。ペタジーニも2ストライクを取られてからはバッティングをまったく変え,絶対にボール球を振らない。この両外人中心の打線は12球団でトップです。
しかし,残念ながらこのチームには投手がいません。今年は上原もよくない。押さえも岡島,シコースキーが頼りにならず,米国の3Aから押さえを1人,この5月中にも取るようです。後ろがしっかりすればこの球団は怖い。今年は各球団とも投手が悪く,エース級が安定していません。6月ごろ各球団の投手がへたってくるとここが出てきそうです。タイガースの一番のライバルと思います。
中日は落合監督が正体不明でよくわかりません。「俺流」ということですが,この人は何か深いものを持っている気がします。表と裏の顔が違うような話をされ,細かい気遣いもできます。ただ,ここも打線が少し弱い。投手は岩瀬が後ろにいて元気ですが,先発の川上らがもう一つよくない。恐らく首は突っ込んでくるが,優勝となるとタイガースの相手としてまでは浮上できないと感じます。
怖いのは昨年最下位の横浜。ここは投手陣が一番変わりました。投手は野球の8,9割を占めるポジションですが,その強化が今の横浜の成績につながっている。各投手が自分の仕事の場所をきっちり決められています。佐々木大魔神が帰って来たこともあり,ここは要注意。山下監督が「今年はやりますよ」と言う通り,昨年はあまり使わなかったバントを活用し,戦略・戦術も変えてきています。
ヤクルトは先発投手,打者とも足らない。打者は岩村とラミレスが中心だが,得点力は上がっていません。投手も押さえの五十嵐や石井がしっかりしているが,勝ち切るにはどうかなという気がします。ただ,ここは試合運びがうまいので恐らく5割前後の所に位置し3位,4位辺りまでは上がって来るでしょう。
広島は鯉のぼりの季節と共に毎年落ちると言われるが,その兆候は出てきています。ここは主力選手の年齢が少し高くなっており,ちょうどチームの過渡期に当たっていることもあって優勝を狙うのは無理かと思います。
さて,今年のタイガースですが,一番のポイントは投手です。井川は昨年20勝5敗で素晴らしかった。大体エースの条件は勝ち星の半分に負けを抑えることとされますが,4分の1だからまったく申し分なかった。が,今年は少し悪い。この分でいくと,「悪い年」に当たるのかもしれない。ただ,彼は非常にまじめで,練習をきっちりこなし,簡単に批判しにくい選手です。彼のことだから悪いなりにも14勝,15勝を期待したい。
これを助けて余りあるのが福原。1昨年,肩の手術をして昨年はほとんど棒に振り2勝2敗だったが,今年は開幕から非常に順調です。ただ,故障上がりの選手はどこまで持つかが心配。梅雨の6月に今の形で投げられるなら大丈夫です。良くなった点は,緩いカーブやフォーク,スライダーを使いながら真っ直ぐを生かすピッチングに変えたことです。
ただ,オリックスに出たムーアの10勝がカバー出来ないと思う。移籍は正解だが,穴埋めとなると伊良部がだめです。今までのように150キロ近い真っ直ぐを常時投げられれば良いが,最近はそこまでいっておらず,カーブやフォークを駆使し,ごまかしながら7,8勝挙げてくれれば。後は福原のカバーとなるが,それでも星が足りません。期待されるのがベテランの藪。真っ直ぐとスライダー,フォークのコントロールがいいと打たれない。下柳,久保田が少し復調気味,安藤,リガン,ウィリアムスも良くなっています。
攻撃陣の方は良い時と悪い時の繰り返し。その中で余り好調でないのが赤星と金本です。昨年は赤星が出塁するだけで相手バッテリーが嫌がった。真っ直ぐ主体の投球になるところを後ろの打者が狙い打ち,良い連鎖反応になったが,赤星の不調で後ろの打者も今岡以外はあまり奮っていません。問題は浜中で,肩の関節のつなぎが緩く脱臼しがち。振り込みが出来ないのでバッティングがよくなりません。外人のアリアスはスライダーやカーブをうまく見分けられるようになったが,キンケードは内角ばかり攻められ,今,身体を起こし回転させる打撃に変えようとしています。
岡田監督は,「ぶっちぎり優勝」の後はつらいのにうまく引き継ぎ,自分のものを出そうとしています。あまり露骨に変えない方が良いが,チームを切り開きたいという思いは長い目で見てあげたい。最近は厳しい良い顔になってきた。今後はもっと厳しくなりそうです。結論として,今年のセ・リーグの優勝となると,今のところ,どこともわかりません。