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2003年12月19日(金)第4,004回 例会

店頭に見る最近の消費動向

奥田 務 君

会 員 奥田 務 

1939年生まれ。 64年3月慶応義塾大学法学部卒業。 4月大丸入社。87年4月本社営業企画部長。 91年9月大丸オーストラリア代表取締役。 95年5月大丸取締役。 96年5月常務取締役。 97年3月社長。 03年6月取締役会長兼最高経営責任者。 当クラブ入会:98年7月。 PH準フェロー, 準米山功労者。(百貨店)

 大阪地区の百貨店売り上げは,9月・10月には阪神タイガースの優勝で前年を上回りましたが,11月には高い気温にたたられ,苦戦しています。面白いことに,東京地区と比べると,2月以降10か月連続で大阪がまさっていて,失業率が高く大阪は景気が悪いと言われますが,百貨店売り上げでは西高東低であると,少し自慢できると思っています。

人気のマニフェスト商品

 “消費は人の心理を映す鏡”と言われます。今悪くても将来の見通しが明るいとお金を使い,今よくても将来悪くなると思うと財布のひもが締まります。秋の衆院選の「マニフェスト」で,年金問題が特に皆さんの関心を集めて将来不安が拡大し“マニフェスト消費不況”と言える状況です。一方で生活不安を言わずにもう一度生活を楽しもうというニーズが高まっています。百貨店の店頭から見た消費の動向を3つのキーワードでお話しします。

 (1)マニフェストのある商品・サービス

 国民のニーズを的確に把握し,国民や市民が共感できる政策,具体的な解決策をアピールするのが政治のマニフェストです。百貨店もお客様の潜在ニーズを探り当て商品やサービスに置き換え提案する「マニフェスト商品」が支持を得ています。大丸ではお客様の要望を商品・サービスなどに反映させる「カスタマーズビュー」という運動を行っています。

 女性の飽くなき美への願望をもとに,ウエスト,ヒップをほっそりと,脚も長く見せる「美脚パンツ」をカスタマーズビューで開発しました。10サイズパンツと呼ばれ,注文服並みのサイズが選べ,後ろポケットなどデザインを工夫し大ヒット商品になりました。また「美脚ロングブーツ」「美脚ストッキング」「美脚サンダル」もヒットしています。ニーズをくみとったうえでsomething-new, something-different(どこか新しい,どこか違う)を合言葉に,政治家と同様に,公約を守る責任を日々痛感しているところです。

自己投資する“できる女性”

 (2)元気な女性 将来不安を抱え頼れるのは自分だけということで自己投資型消費の優先順位が上がっています。“他人よりセンスのよい自分”をアピールする商品に人気があり,大丸だけでこの夏限定販売した「高級ブランドTシャツコレクション」は即日完売。“自分ならではのおしゃれ”への関心も高く,5月末から6月初めに神戸店と心斎橋店で開いた秋冬物受注会は2億円を超す売り上げとなりました。一歩先にという競争心でしょう。

 “できる女性”が目立ってきて,ダイエット食品はもちろん,おじさん御用達のスッポンスープや,豆乳,はちみつなどの健康食品,においの少ない,米や麦の焼酎愛好家が若い女性に増えています。健康と美容へのこだわりが出ているのでしょう。ファッション武装でも,仕立てと生地がしっかりし知的に見える「メンズ仕立てのレディスシャツ」が人気です。働く女性から要望の多かった内ポケット付きの機能的ジャケットも人気爆発です。

 最近男性の顔のたるみ,シミなどの老化予防効果のある美容液が売れ,男性が自分で買う比率が非常に高いと聞きました。女性の方が元気があるようです。しかし女性らしさへの回帰にも関心が強く,今商品グループ別の売り上げ伸び率は,エステティックサロンなど美容関連のサービス消費が一番高いのです。

 (3)復活と新生 最近1960年代のものを今風にとりいれた復古調が目立っています。今の不安,自信喪失の時代にあって高度成長期の古きよき時代に学ぶということが底流にあるのではないかと思われます。

 ジャクリーン・ケネディに代表されるクチュールスタイルが復興し,トレンチコートやミニスカートは60年代後半のブームの再来です。クロコダイルの型押しや光沢感のある洗練されたイメージのバッグ,上品なスタイルの靴が人気を呼んでいます。男性用ではサイケデリックと言われたプッチ柄のネクタイ,そしてマリメッコ柄の食器や寝具も好評です。

 単なる復古ではなくsomething-newが付け加えられたところにマーケティングの新しさがあるという意味で,復活というより新生と言った方がいいのではないでしょうか。

 消費の話はこのあたりにして,ファッショントレンドをモデルを使ってご紹介します。

“お菓子色”は景気回復の前ぶれ?

 1番目は,従来の視覚,着心地,肌触りなどに“味覚”を加えた「おいしいカラーのファッション」です。甘いピンクのコート,クールなミントグリーンのニット,スカートは流行のミニ,ブーツは美脚ロングブーツ。2番目は,60年代をヒントにし,ゆったりしたスタンドカラーのショートジャケット。ひざ丈のスカート,やや甘いピンクが新しい上品さを醸し出しています。3番目はトレンチコート。カジュアルな素材感,細身のシルエットなどが加わりバラエティが出てきています。

 デザイナーや専門家の話では来年の春にかけパステル調のお菓子のようなカラーがはやりそうです。私どもの調べによると,明るい色が売れるときは景気がよくなります。現実はお菓子ほど甘くないとは思いますが,景気はぜひ回復してほしいし,企業業績もミニスカートの丈のように上がっていくことを切に願いながら,お話を終わります。