1952年兵庫県竜野市に生まれる。竜野中学校, 淳心学院高校を経て東京大学理学部へ。'76年東京大学大学院修士課程を終了後, 通商産業省入省。 生活産業局窯業建材課長, 資源エネルギー庁石油部精製備蓄課長, 製造産業局次長などを務めた後, 2004年6月から現職。
昨年の秋ごろから「悪い踊り場だ,一服」というような話が結構出てきてますが,きょうは関西はひたすら元気だということを私は言おうと思っています。
まず近畿2,599社をヒアリング調査した「業況判断のDI(景気動向指数)」。この36カ月,3年ぐらい順調に回復しています。今年1~3月は,いろいろなデータが悪くなっているという話があるんですが,少なくとも2,599社の平均をとれば上向いています。4~6月になるとさらにこれがよくなるのでは,というのが近畿の中小企業の方のご意見です。
この10年のうち8年間ぐらいは,全国の方が常に上にありまして,大阪はダメ,元気ない,全国に比べて景気が悪いというグラフになっていますが,この1年ぐらいは関西のほうが上に来ている。全国平均から見ると関西が悪いなんてことは全くないんじゃないか。
「有効求人倍率」の比較でも,平成16年後半から大阪府の数字が全国を上回るようになってきた。直近の2月の数字を見ますと,全国が0.88に対して大阪が0.94。職を求める人と職を提供する人がほぼバランスがとれて,1に近づいてきている。これも一時期に比べると,非常に元気になってきています。
「地盤沈下」「本社移転」「一極集中」「元気のいい名古屋に比べ…」。東京から人が来ると「大阪って元気ないんでしょう」と言うわけです。「東京で新聞を見ると,あまり大阪とか関西っていい記事が書いてない」という話になります。会うなりそういうことを言われて,それで1泊されて,梅田とか難波とかあるいは心斎橋とかに行かれたと思いますが「意外と活気があるじゃないか」ということになるわけです。実態に即さないので「地盤沈下」などという「枕詞」を使うのもやめたらどうかと思います。
大阪は中小企業の町と言われますが,非常に元気な企業と人というのがそこらじゅうにおられます。実例を挙げると「多品種微量生産」の「東海バネ」や「パトライト」。「セル生産」の「和泉電気」。超小型油圧ポンプの「タカコ」。 液晶テレビの部材をつくる会社もたくさんあります。私がちょっと回っただけでも,すばらしい人がおられる。共通して感じるのは,経営者の信念や,意志の強さ。オンリーワン製品を持ちたい,トップを目指したいという気持ちです。それに国際的。大阪で商売とか,東京で商売とか,言わなくて,世界で商売される。
ここで皆さんに4つのお願いがあります。ここが本当のポイントです。
第1点は,皆様方の会社の中で「第2の創業を」。せめて周りで一つ新しい事業をやってもらえないでしょうか。社内には,自分の能力がもっとあると思っているのに苦労している人もおられるし,若い人もおられる。こういう人の力を活用し,新しい事業を毎年やっていただければありがたい。
第2点は「パトロンになって」。日本はベンチャーに不向きな体質を持った社会ですが,挑戦する人,新しく物事をやっている人に少し惚れ込んでいただいて,パトロンになっていただければ。新しい物は大阪へ行ったら売れるということになれば,世界中から人が集まるようになると思います。
パトロンのもう一つの対象は大学です。産学連携だとかいろいろなことをやっている関係で,関西の主な大学20ばかり回りましたが,国私立ともに,今後どうして生きていくかというのを真剣に,特に学長周辺の執行部は,一体どうやっていったらいいんだろうかと悩んでおられます。今までやったことがないものですから,どうやって産業界にアプローチしたらいいかというのがわからない状況にあります。
そういう意味で「パトロンになって」というのは,事業を目指す若い人々に対してとともに,皆様方がご卒業された大学とか,あるいは関係ある大学に対してパトロンになっていただけると,関西の大学の活性がより進むことが期待できるからです。
3つ目は「プレス」。私自身も毎月記者会見をしていますが,プレスの人には先ほど言いました「枕詞」を使わなくてもいいんじゃないか。「元気いいところを書いてくれよ」といつもお願いしています。プレスが「元気になってきた」と全国に発信すれば「いっちょ行ってみるか」ということになるんじゃないかな。「元気がなくって,治安が悪くて,ホームレスが多いんだよな」ということだけにはならないように。活気のあるところ以外に,人は集まらないというのが世の常です。2030年には日本の今の人口1億2,700万人が,1,000万人減ります。近畿では約200万人減。京都府がなくなる,あるいは奈良・和歌山がなくなると言っていいインパクトが,20年ぐらいの間に来ることになります。その意味で,若い人,あるいは挑戦したい人が「何かができるんだ」と思える大阪にしていく必要があるのじゃないかということで「プレス」と言いました。
最後のお願いは,ちょっと私どものほうの宣伝になるわけですが,今,愛知で万博があります。名古屋に比べて,どうのこうのというのを実感されるためにも,ぜひ愛知万博に行って35年前の大阪万博と比較をしてもらいたい。実際に名古屋の町,夜も含めてお歩きいただくと,一体どっちが本当に元気なのかというのがおわかりいただけると確信しています。