1940年東京生まれ。日本大学大学院修士課程修了(心理学),愛知学院大学大学院博士課程修了(経営学),「新市場創造型商品の研究」で博士号を授与。'84年(株)マーケティングコンセプトハウス設立。世界中の成功商品開発コンサルティングに没頭。「最新・成功商品開発マニュアル」・「ヒット商品開発-M.I.P.パワーの秘密」・「長期ナンバーワン商品の法則」等著書多数。
最近,景気が良くなってきたと言われますが,悪い状態に慣れてきたという言い方が一番近いのではないでしょうか。きょうは企業の業績を向上させ,経済を安定成長させるキーワードをご紹介しようと思っております。
最初の話は「新市場創造型商品(Market lnitiating Product)」です。10年以上続いている市場を創造した商品のことで,この商品が重いから軽くしようという商品の問題を解決しているのではなくて,従って生活に変化をもたらすような商品というふうに定義しております。2001年にドクターをいただいたときの研究論文でこの定義を発表しているわけですが,そういった内容のものをM.I.P.という記号でお話しさせていただきます。
2番目のお話は,このM.I.P.というのは非常に成功率が高いということです。2つに1つが10年以上,何十年という間その市場で1番を保ちます。と同時に高い利益を毎年続けます。一方の,既に市場のあるところに後発参入した商品が1番になれる確率は200に1つで,200個出して1つしか1番になれない。ほとんどの商品は,多くの利益をとれないまま消えていく。この2分の1と200分の1の関係を,非常な成功率の高さというふうに申し上げたわけです。
3つ目は,創業の成功のほとんどもM.I.P.であります。創業して失敗するケースのほうが多いのですが,成功する創業のほとんどがM.I.P.であります。
このM.I.P.はいつごろ生まれたのだろうか。その要点は資料に出ております。100年前までさかのぼって年表をつくり,それを10年単位で数えてみたのがその折れ線グラフです。
このグラフを見ていただきますと読み取れますのが,GDP対前年伸び率とこのM.I.P.が生まれる比率が,高い相関を示しているということです。つまり新しく市場が生まれるということと景気が,非常に高い関係を示しているということです。
グラフに関する2つ目は,終戦(1945年)を境にして極端に新しい市場,M.I.P.が生まれております。そして,1960年代が22%でピークでありまして,1970年代に入りますと新しい市場が生まれる比率が低下しているということです。
そのグラフでもう1つ言えることは,ほとんど重なるかもしれませんが,現在の市場の7割が30年前につくられ,その後の30年間では今現在の30%の市場しか生まれていないのです。
M.I.P.という商品に対するニーズ,新しく市場をつくる商品に対する消費者のニーズは潜在しておりまして,最初にぶつかる壁がこのM.I.P.に対するニーズが潜在しているということです。それに対して,どういう手段があるのか。新しくマーケティングリサーチの手法としても,そのM.I.P.を開発するために新しいリサーチの手法が必要になるというわけでありますが,潜在する本音のニーズをさぐるベストな調査方法をG.D.I.(Group Dynamic Interview)と呼んでおります。
もう1つの手法の観点から申しますと,せっかく発掘したこの潜在しているニーズを商品の形にしていく,つまり商品のコンセプトにしていく。これも多くの企業が今まではやったことのない作業であります。
その2つの大きな新しい作業に挑戦していかなければ,M.I.P.はいいなと思われても,実際にはコンスタントに皆様のものにすることが難しいわけであります。手法としてそういうものがあるんですよということです。
それでは潜在しているどんなニーズに応えたらM.I.P.ができるのだろうか。その1つは「心と体の Health&Beauty」。「体の Health&Beauty」はもう常識で,非常に大きな市場ができているわけです。ところが,もう1つの「心の Health&Beauty」についてはほとんど未開拓であります。ここに無限のM.I.P.市場が潜っていると私は断言をします。「心のヘルス」というのは心楽しく,心豊かにというような方面の需要であります。
どんなニーズに,というもう1つの切り口として,私は消費者ニーズの種類を4つに分類しています。これ,とても参考になると思います。
1,維持するニーズ(その状態を保つ)
2,予防するニーズ(その状態を保つため,あらかじめ対処する)
3,復元・回復するニーズ(悪くなった状態を元に戻す)
4,向上のニーズ(今よりもっといい状態にする)
どの生活分野のニーズにも,今申し上げたそれぞれ4つの種類があるということを念頭に入れていただいて,このようなニーズに応える新しい市場を創造していくのが,実はM.I.P.ということになるわけでございます。
各企業にはM.I.P.アレルギーと呼んでもいいような非常に強い抵抗があります。世の中にないものをつくる,人の行かない道なき道を行くわけですので,よほど経営層がバックアップしてというような態勢がありませんと,サラリーマンスタッフがM.I.P.をつくるのは実は至難の技であります。経営層の方は,失敗を恐れずにやらせるというようなことが,従来以上に強く必要となってきている。こんなふうに考えておりますし,またそのようにお伝えをさせていただきたいと思います。