1949年アルゼンチン生まれ。 '74年エール大学大学院修了。 '78年米国広報文化交流庁に入庁。'78~'81年東京の米国大使館で文化交流担当官, 後ポーランドやワシントンDCなどの勤務を経, '90~'94年東京のアメリカンセンター館長。'94~'98年ブエノスアイレス米国大使館広報担当参事官。'98~'01年モスクワ米国大使館広報担当公使参事官。'02年7月に現職。由美子夫人と結婚し,1男1女あり。
きょうは私が現在と今後の日米関係について,私の経験したこと,考えていること,またアメリカ政府の方針などをお話ししたいと思います。私が初めて日本に来たのは,
1978年でカーター大統領のときでした。後に国務省に統合される広報文化交流庁に入って半年ほど後のことです。今の大阪の総領事館は3度目の日本勤務で,これで27年の外交官としての私のキャリアの半分以上を日本と関わることになります。
日米関係が始まってから150年の間で,今ほど日米関係がよいときはないと言われています。ごく一部の問題を除いて,今両国間で未解決の問題はほとんどないと思っています。2001年9月の同時多発テロの事件の後,日本は真っ先にアメリカヘの支持と支援を表明しました。またイラク戦争でも国内に色々な意見があるにも関わらず,国会で議論を重ね法律を改正し,人道支援のために自衛隊を派遣しました。そして昨年12月には,自衛隊派遣の延長を決めました。これら日本の貢献を,アメリカは歓迎しています。
アメリカは,日本にとって中国とともに最大の貿易相手国です。日本もアメリカにとって最も重要な貿易相手国の一つであり,アメリカ国債の最大の保有者です。日米経済は互いに大きく依存し合っており,これを変えることはもはやできないと思います。日本が繁栄するとアメリカも繁栄し,アメリカが繁栄すると日本が繁栄するという関係になっているのです。
2期目の就任演説でブッシュ大統領は「全世界に自由を拡大し,世界各地にある圧政を打倒し民主化を進める」との,強い決意を示しました。2期目のブッシュ政権の安全保障政策には大きな変化はないと考えられています。むしろアメリカの内政,特に年金と税制が重要になるものと思われます。
先月,国務長官がパウエル氏からライス博士にかわりました。ライス氏は同じ女性の国務長官であったオルブライト氏とは外交姿勢は全く違います。ライス氏は東欧,ロシアの専門家で,国際情勢への見方はパウエル氏よりも厳しく,特に北朝鮮やイランに対して,より厳しい政策をとると考えられています。
ライス氏は東アジアの専門家ではありませんので,誰が東アジア,太平洋担当の国務次官補になるかが注目されてます。最近,韓国でアメリカ大使を務めているクリストファー・ヒルという人が次官になると言われています。そして,国務副長官にはゼーリック通商代表がなることが決まっています。ゼーリック氏は,主に国務省の経済関係を見ると考えられています。今までの経緯から,ゼーリック氏が日本に厳しい経済政策をとると心配する人がいるかもしれませんが,通商代表とは立場が違うので,心配は不要だと思います。
2月末をもって,駐日アメリカ大使がベーカー大使からシーファー大使にかわることが発表されています。ライス国務長官,ゼーリック副長官,ヒル外務次官補,シーファー大使などが就任してから,東アジア関連でまず直面するのは次の問題だと考えられます。
まず北朝鮮問題です。核問題が未解決であり,次の6者協議の時期も決まっていません。拉致された日本人の運命もあるわけです。この情勢の中,アメリカの対北朝鮮政策に変化はないということは確かです。北朝鮮問題の解決のためには,日米両国が今までのように,韓国,中国,ロシアからの協力をできるだけ得るような政策を追究しなければならないと考えられています。
中国問題は日米両国だけでなく,世界のどの国にとっても極めて重要です。中国の台湾への厳しい姿勢は変わらないと予想されています。確かに中国の経済は高い成長を続けていますが,インフレや銀行の不良資産など,非常に問題も多いわけです。中国の経済成長が急に止まると,全世界に大きな影響があることも確かですので,中国の今後には注目する必要があります。
米国の財政問題ですが,スノー財務長官の留任が決まりました。ブッシュ大統領はドル高を支持していますが,実際のところ,口でそれを表明しているだけであるという批判もあります。FRB(連邦準備機構)は少しずつ金利を引き上げ,ドル安に歯止めをかけようとしていますので,今後しばらくは1ドルは100円から110円の間を推移すると見るのが妥当だと考えられています。
過去のわずか50年あまりの間に,日米両国はお互いの国民のために,かってないほどの富を作り上げ,アジア太平洋と世界全体に平和と安定をもたらす関係を築きました。現在,日米両国は友人,同盟国として,運命共同体の関係にあると申し上げても過言ではないと思います。最近のインド洋での大津波の被害者の救済でも,両国の資金面その他で協力し,主導的な役割を果たしていることはご承知のとおりであります。
日本の経済規模,GDPはアメリカに次いで世界第2位で,世界のGDPの約14%を占め,第3位のドイツの約倍です。日米のGDPを合計すると,世界のGDPの40%以上になります。これを見ても,世界経済と政治に対して,日米両国がいかに大きな責任を持っているかがおわかりいただけると思います。