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2004年12月10日(金)第4,050回 例会

大阪市の社会福祉の現状について

白 井  大 造 氏

大阪市健康福祉局 理事 白 井  大 造

1950年10月生まれ。 '74年立命館大学法学部卒業, 同年大阪市に採用。 同年5月城東区福祉事務所に配属,'79年都市再開発局再開発部庶務課庶務係,'82年都市整備局再開発事業部経営課,'83年同局庶務課主査(大阪市街地開発(株)出向)。 以降同局の各部を経て,'97年同局住宅部長。'01年建設局市街地整備本部推進部長, '03年現職。

 健康福祉局は,高齢化の進行や児童の分野でますます医療と福祉,保健との連携が求められている社会状況を踏まえ,平成13年度に新しい組織としてスタートしました。仕事の内容はホームレス,生活保護,障害者福祉,高齢者福祉,介護保険,児童のさまざまな施策,それから国民健康保健です。福祉に対する世の中のニーズはますます高まっていますので,一生懸命邁進しなければならないと考えています。

深刻な少子高齢化

 福祉の世界は,世の中の移り変わりに大きな影響を受けますが,今は少子高齢化という非常に深刻な問題を抱えています。昭和40年度の大阪市は15歳未満が 69万1,000人で構成比は21%,15~64歳が232万人で73%,65歳以上が14万人で4.5%ですが,平成

12年の国勢調査では,15歳未満が32万

7,000人で12.6%,15~64歳が182万で70.1%,65歳以上が大幅にふえまして44万4,000人で17.1%になっています。現状はさらに進んで,大阪市は65歳以上の人口はもう18%を突破して,将来はこれが25%程度まで上がるという推測になっています。支える人が減って,ケア,サービスを受ける対象が増え,質の高い福祉のサービスを求められるようになってきています。それに応えるため平成12年に社会福祉事業法が社会福祉法に改正されました。昔は施設に入っていただき,その中でケアをしていくという発想でしたが,今はできるだけ地域で自立した生活をしていただくための仕組みをつくっていこうという流れになっています。税ですべてをやるのではなく,むしろ保険なり新しい財源も求めながら,民間にどんどん参入していただこうという点で変わりました。介護サービス利用者数も大きく伸び,毎年補正予算を組んで対応してますが,いつまでも元気で自立していただくことが制度の本来の趣旨ではなかったか,という反省も出てまして,今後は予防にシフトしていくということがいわれています。

地域福祉制度

 福祉はやはりきめ細かな配慮が必要ですので,全部を行政がやることになると場合によっては非効率となります。そこで,行政がすべてを抱えるのではなく,自立的,自発的,日常的な地域の活動にお願いするのが,社会福祉法のもう一つの眼目の地域福祉制度です。基本的な基盤整備は行政がするが,どの方がどのようなニーズを持っていて,またどのような仕組みにつなぐとうまくケアが提供できるか,そうしたことを地域のネットワークをつくってお願いしようということで,取り組んでいます。各市町村で地域福祉計画をつくり,さらに各区ごとのアクションプランをつくることが必要で,公募いただいた市民に委員になってもらい,現在各区で取り組んでいます。従来は高齢者だけのネットワークが地域にありましたが,今まで施設に入っていただいていた障害者の方も,地域に住んでいただいて,いろんな施設と連携する中で普通の生活をしていただき,サポーターもその地域に住んでいただく,そういう仕組みでやっていきたいと考えています。

子育ても社会で

 児童育成の問題も,核家族化でお母さん方も非常に悩まれています。子育ては家庭が基本ですが,家庭だけに任すのではなく,社会が一定のサポートをやっていく仕組みにし,地域福祉のネットワークにのせていきたいと考えています。保育所の待機人数が大阪市は多いとの指摘をいただいてますが,大阪では公立保育所を上回る200カ所以上の保育所を民間にやっていただいています。新しい公立の保育所をつくるのではなく,待機児の解消にはどんどん民間に経営を任せていこうと取り組んでいます。ただアレルギーをお持ちとか,障害をお持ちの子どもであるとか民間のサービスでは採算が合わないものは,しっかり行政がサポートしていきます。

 ぜひ最後にお話ししたいのは「里親の制度」です。児童養護施設は,職員を配置し,民間の社会法人に見ていただいていますが,子どもにとって一番大事なことは家庭の愛情です。現在里親は85名大阪にいて,週末とか,夏休み,冬休みに施設に入っている子どもを引き受けて,家庭の愛ということをしっかり体験できるように支援いただいています。関心をお持ちでいらっしゃいましたら,大阪市の児童相談所のほうに,1人でも2人でも里親をふやしていただくよう支援をお願いしたいと思います。

 一つうれしいことは,そこで養育された子どもさんが成人されてまた自分も現在里親をしておられるということを聞きまして,本当にこれはすばらしいなと感じました。福祉の世界は,与えられるということだけではなしに,サポートしてくれる社会の皆様のお気持ちに思いをいたして,やがては自分が受けたサポートを自分が社会の一員として返していく,こういうことが実現できるような福祉になれば一番幸いであるというふうに考えております。

 私ども,いろいろと非効率な部分とか,まだまだ改善を要する部分もございますが,この厳しい状況の中でできる限り努力をいたしまして,皆様方の広いニーズにお応えできるように今後とも頑張ってまいりたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。